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第17話:『緩急(チェンジアップ)』と『芯(ジャストミート)』

「……アカンな」

森から撤退し、訓練場に戻ってきた俺たちに、ミーナの冷たい声が響いた。

重い空気のまま『反省会ミーティング』が始まっていた。

「クソ……手応えが軽すぎた」

ガルムは、以前『ミート』を当てたにも関わらず、敵を仕留めきれなかったアックスの刃先を睨んでいる。

「『5割』でも……読まれちゃいました……」

ルナリアも、初めて実戦で使った『5割』の魔力弾が、リーダー格(格上)には通じなかったことに落ち込んでいる。

「当たり前や」

ミーナが、腕を組んで二人を一蹴した。

「ガバガバ(ルナリア)。あんたは『3割』も『5割』も、詠唱フォームがバレバレなんや。プロはあんたの『モーション』を見とる。だから最後は『見切られ(読まれ)』たんや」

「あ……」

「大振り(ガルム)。あんたは『当てる(ミート)』ことにビビって、力が『芯』に伝わっとらん。アックスの『面』でこすっとるだけや。だから威力が死んどる」

「なっ……!」

俺の『視点アイ』でも、ミーナの分析アナライズは完璧だった。

俺も前回の戦闘ゲームで見ていた。

ルナリアの詠唱フォームが、『3割』と『5割』で微妙に(エラーが出るほど)ブレていること。

ガルムのアックスが、敵を『芯』で捉えきれず、威力が逃げる『エラー』を起こしていたこと。

「(二人の『エラー』は、まだ根治していなかった……!)」

俺は、二人に新しい指示サインを出すことを決めた。

「ルナリア、ガルム。今から二人は『練習試合ガチンコ』だ」

「「え?」」

俺はまず、ルナリアに向き直った。

「ルナリア。俺の指示サインで『3割』と『5割』を投げ分けろ。ただし、ガルムに『バレない(読まれない)』ように、詠唱フォームを全部『同じ』にしろ」

「よ、詠唱を……同じに?」

「そうだ。それがお前の『緩急チェンジアップ』になる」

次に、ガルムに告げた。

「ガルム。お前は『大振り』も『ミート』も禁止だ。『構え(バッティングフォーム)』のまま動くな」

「は? なんだそりゃ」

「ルナリアのボールが『3割(遅い)』か『5割(速い)』か、『見極める(読む)』ことだけに集中しろ。お前の『選球眼リーディング』の練習だ」

地味で、過酷な『読み合い』の特訓が始まった。

「(……『3割』!)」

ルナリアが、詠唱フォームを隠そうと意識して放つ。

「遅え!」

だが、構えているだけのガルムには、魔力リソースの溜め方の違いが丸わかりだった。

「(……『5割』!)」

「速え!」

「うう……!」

「三流! キャッチャーだませ!」

ミーナの容赦ない『ヤジ(ゲキ)』が飛ぶ。

ルナリアは、悔しそうに唇を噛んだ。

(私、パワーだけじゃなかった……コントロールだけでもなかった……。『全力(10割)』を隠して、『制御(3割)』した力で、相手の『意表タイミング』を突く……!)

彼女は、以前「0か100」の癖が再発した自分を思い出す。

(違う……! 『0』も『100』も、私が『使う』んだ!)

彼女の集中力まなざしが変わった。

「(……いくよ、『3割』!)」

ルナリアが、『5割』の時と全く同じ詠唱フォームで、『3割』の魔力弾ボールを放った。

「(……お、速い――いや、遅え!?)」

ガルムが、初めて反応に『遅れた(エラーした)』。

(クソ、あいつ、やりやがった……!)

ガルムの額に汗が浮かぶ。

(俺は、前のパーティじゃ『パワー』だけでよかった……! だが、あのコボルドには『パワー』が当たらなかった……!)

(慎吾(監督)の言う通り、当たらなきゃ意味がねえ……!)

ガルGムは『パワー(勘)』に頼ることをやめ、ルナリアの『詠唱フォーム』のブレではなく、『魔力ボール出所リリース』を『読む(見る)』ことだけに、全神経を集中させた。

(……来る!)

「ガルム、待たせたな!」

俺は、二人の集中力が最高潮に達したのを見て、最後の指示サインを出した。

「今度は『ミート』しろ。ただし、『ジャストミート』でだ!」

「おうよ!」

「いきます!」

ルナリアが、完璧に隠した詠唱フォームで、最速の『5割(速い球)』を放った。

ガルムは『読み(リーディング)』でそれに完璧に反応する。

彼は『大振り(フルスイング)』ではない。15話で掴んだ『ミート』の『フォーム』で、力を凝縮ぎょうしゅくしたアックスを振り抜いた。

カキィィィン!

以前の『カキン』という軽い音とは比較にならない、重く、澄んだ金属音が訓練場に響き渡った。

魔力弾ボールは、ガルムのパワー(力)を完璧に乗せ、ルナリアが放った時より『速く』弾き返され、訓練場の『まと』を粉々に砕いた。

「「…………」」

ガルムもルナリアも、その威力に呆然ぼうぜんとしている。

「(これか……)」

ガルムは、震える自分のアックスの『芯』を見つめて呟いた。

「(これが、俺の『パワー』を乗せた、『ミート』……!)」

「(私、初めて……)」

ルナリアも、ガルムの成長パワーを見て、嬉しそうに頷いた。

「(『狙って』、相手を『だませ』ました!)」

「ふん」

ミーナが、そっぽを向いて鼻を鳴らした。

「……ようやく、『二流』の『フォーム』になっただけや」

二人が、長年の『エラー(課題)』を、互いの力で克服した瞬間だった。

俺は、粉々になった『まと』を見て、全員に告げた。

「よし。――コボルドのリーダー(宿題)を片付けに行くぞ」

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