表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/40

第16話:『俊足(スピード)』と『癖(エラー)』の壁

エルミナから発行されたクエスト――「高速疾走ランナーコボルドの斥候部隊討伐」――のため、俺たちはベースリア近郊の森に来ていた。

昨日、パティとエルミナに(ある意味)称賛された俺たちの『地味な練習』が、いきなり試されることになったわけだ。

「……最悪や」

斥候せっこうに出していたミーナが、舌打ちをしながら戻ってきた。

監督あんたの言う通り、やつら、森の奥に陣取っとる。数はこちらとほぼ同じ(ファイブマン)やが……」

ミーナは、その『千里眼アナライズ』で捉えた光景に、忌々(いまいま)しそうに眉をひそめた。

「全員がリゼッタ(エラー娘)並みの『スピード』持っとる。おまけに『守備ディフェンス』も固い。一体ひとり仕留める(アウトにする)のも厄介やで」

「(パワーではなく、機動力と守備力……。エルミナの言った通りか)」

俺はゴクリと喉を鳴らした。

「……リゼッタ、ガルム、ルナリア。練習キャンプ通りやれるか?」

「は、はい! 『当てる』だけ、ですよね!」(リゼッタ)

「おうよ! あの地味な練習ミートの成果、見せてやるぜ!」(ガルム)

「私も、『3割』の制御コントロール、できます!」(ルナリア)

「……よし。ミーナ、守備リードを頼む。行くぞ!」

森の奥。

陣を組んでいたコボルド部隊が、俺たち(侵入者)に気づき、一斉に動き出した。

その動きは、今までの魔物とは明らかに違った。

前後に、左右に、まるで予測不能な動き(フェイント)でこちらを撹乱かくらんしてくる。

「(速い……! しかも、統率チームプレーが取れている!)」

「リゼッタ、前衛ファースト! ガルム、中衛クリーンナップ! ルナリア、援護ピッチャー!」

俺の指示サインが飛ぶ。

「はあっ!」

ガルムが、練習通り『ミート打法』を意識し、コンパクトにアックスを構える。

だが、高速で動き回るコボルド(ランナー)に、なかなか『芯』を合わせられない。

「ちょこまかと……!」

アックスの『面』で捉えようとするが、コボルドはその瞬間にスッと身をひるがえす。

(ダメだ、当てられない……!)

苛立ちが募る。

その時、ガルムの脳裏に、前のパーティでの成功体験・・・・・が蘇った。

(……ちくしょう、まどろっこしい!)

「――おらあっ!!」

ガルムは、ついに練習ミートを捨て、溜め込んだパワー(力)を乗せた『大振り(フルスイング)』で斧を振るった。

それは、コボルドの動き(モーション)を無視した、ただの『当てずっぽう(バクチ)』だった。

「(あ、こいつ……!)」

俺の『視点アイ』に、『エラー』の警告が激しく点滅した。

コボルドは、ガルムの『大振り』の予備動作モーションを見て、余裕でそれを回避。

「(空振り(エラー)だ!)」

体勢フォームを崩したガルムのふところに、別のコボルドが短剣ダガーを持って飛び込んできた。

「ガルムさん!」

そのピンチを見て、後方で構えていたルナリアが、真っ青になって魔力を溜めた。

(助けないと! 速く! 強く!)

彼女の頭から、練習キャンプで繰り返した『3コントロール』が消し飛んでいた。

(ヤバい! こいつもエラーが出てる!)

俺の『視点アイ』は、ルナリアの魔力が『0』から一気に『100(全力)』へ振り切れるのを捉えた。

あれは、制御コントロールを失った『暴投ガバガバ』だ!

「――アカン!」

その瞬間、ルナリアの横にいたミーナが、彼女の詠唱フォームの腕を掴んで、物理的に止めた。

「なっ……!?」

「あんたの『全力それ』は『ガバガバ(暴投)』や! 仲間ガルムごと吹っ飛ばす気か!」

「で、でも、これ(3割)じゃ間に合わない……! けど、全力(10割)は……!」

ルナリアがパニックに陥る。

(そうだ、こいつの課題エラーは『0か100か』だ!)

俺は、ミーナが作った一瞬の『』に叫んだ。

「ルナリア! 『3割』でも『10割』でもない! 中間の『5割』だ!」

「え……『5割』!?」

「そうだ! 『全力』の半分でいい! コース(あいつの足元)だけ狙え!」

ルナリアは、ハッとした顔で頷いた。

彼女は『10割』に向かっていた魔力リソースを、『5割』まで強引に引き戻す。

(……できる! 練習(あの時)の『3割』よりは強い……でも、『全力(10割)』よりは制御コントロールできる!)

「いけええっ!」

ルナリアの『5割(コントロールされた速い球)』が、ガルムに迫っていたコボルドの『足元』に突き刺さった。

「グッ!?」

コボルドは、咄嗟とっさにそれを避けようとして、初めてその『スピード』が一瞬だけ止まった。

「――ガルム! 今だ! 『ミート』で『当てる(ヒット)』!!」

「(……これか!)」

『大振り』の体勢から無理やり立て直したガルムも、その『一瞬の隙』を見逃さなかった。

彼は、フルスイングをこらえ、練習通りアックスをコンパクトに振り抜き、足が止まったコボルドに『ミート』で叩き込んだ。

ゴスッ!

『芯』ではなかったが、確実な『一撃ヒット』だった。

コボルドは数匹を道連れに、森の奥へと撤退していった。

「はぁ……はぁ……」

ガルムが、膝に手をついて荒い息をつく。

「クソ……手応えが軽すぎた。当てるだけじゃ倒しきれねえ……」

「……アカンな」

ミーナが、敵が逃げた方向を睨みながら、冷たく言った。

「リーダーあいつら、あんた(ルナリア)の『5割(速い球)』の弾速スピードを、最後には『見切っとった(読んどった)』わ」

俺たちは、顔を見合わせた。

なんとか切り抜けたが、二人の『エラー』は再発した。

そして、ルナリアの『5割』ですら、格上(リーダー格)には通じない(読まれる)ことが分かってしまった。

「……訓練場に戻るぞ」

俺は、悔しがるガルムとルナリアに告げた。

「ルナリア、お前には『5割』だけじゃなく、『3割』と『5割』を使い分ける『緩急コンビネーション』の練習が必要だ」

「ガルム。お前は『当てる』だけじゃない。当てる『強さ(打点)』と『ジャストミート』の練習だ」

二人の本当の『エラー(課題)』の克服は、まだ始まったばかりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ