第11話:扇の要(キャッチャー)と、監督(おれ)のエラー
「……ミーナ、ですか。彼女なら、おそらくギルド併設の酒場にいます」
エルミナは、淡々とデータを読み上げる。
「職業は『守護戦士』。固有スキルは『千里眼』。ですが……」
エルミナが示したデータ(スコアブック)は、赤点だらけだった。
【チームA】在籍3日で解散。(理由:ミーナによる他メンバーへの過度な指摘)
【チームB】在籍1週間で解散。(理由:同上)
【チームC】在籍(以下略)
「(アカン。こいつ、疫病神か何かか?)」
「彼女は、味方の『エラー』を許容できません。監督のチームも……解解散しますよ?」
「……試す価値はある」
酒場(ダッグアウト裏)。
件の少女、ミーナは、一人でカウンターに座っていた。
小柄だが、人を食ったような笑みを浮かべている。
彼女は、酒場の喧騒を眺めながら、独り言のように呟いていた。
「あらあら、そこの店員はん、お酒の注ぎ方がガバガバやないの。あれでは泡が死んでしまうわ。三流やね」
「(うわっ……。ガチのやつだ……)」
俺の『視点』を使わずとも、彼女の「エラー」が(別の意味で)見えた。
「あの……監督、あの人ですよね?」
リゼッタが、少し怯えている。
「ああ。行くぞ」
俺は、ミーナの隣の席に座った。
「……あんたがミーナか。俺は山田慎吾。チームの監督だ。あんたをスカウトに来た」
ミーナは、俺とリゼッタを(値踏みするように)ジロリと見た。
彼女の『千里眼』が発動したのが、雰囲気で分かった。
「……おや」
ミーナが、意地悪くふふっと笑う。
「こっちは噂の『エラー娘』はんと、その『二流の監督』はんやないの」
「ひっ!?」
「二人そろってエラーの詰め合わせみたいで、見てるほうが恥ずかしゅうて、かなんわぁ。おー、アカン」
「……」
リゼッタが、俯いて震えだす。
(……こいつ!)
俺は、ミーナに向き直った。
「待て、ミーナ。……お前の『エラー』は、そこだ」
「……おや?」
「お前の指摘は正しい。完璧だ」
「……!」
「だが、」と俺は続けた。
「それを『ヤジ(デバフ)』にするのが、お前の致命的なエラーだ。俺のチームでは、エラーを『修正する』ために使え」
俺は、ミーナの『千里眼』を真っ直ぐに見据えた。
「それができないなら、お前こそ『三流』だ」
「……っ!!」
酒場が静まり返る。
ミーナは、初めて「エラー」を指摘されたかのように、目を丸くして固まっていた。
(……うわっ、あの名捕手そっくりだ……)
俺は、ピジョンズにいた伝説のキャッチャーを思い出していた。
(あの人も、味方の調子が悪かったら、平気でマウンドまで行って説教してたぞ……! 扱いづらいけど、だからこそ『本物』だ!)
「……面白い」
ミーナが、数秒後、ようやく口を開いた。
「……あんた(監督)、自分が『二流』だって自覚があるんやね。それは素直に評価したるわ」
「ああ、自覚してるさ。だから、あんたの『視点』が必要だ」
俺は、単刀直入に言った。
「俺のチームの『扇の要』になれ」
「……」
ミーナは、しばらく俺を睨みつけていたが、やがて(不機嫌そうに)顔をそむけた。
「……うちのエラーを修正せる言うんやったら、証明してみせよし、二流監督」
「(……顔が赤いぞ、この子)」
(トラウマでもあるのか……? “チョロい”な……)
「ああ、望むところだ。まずは『仮契約(テスト入団)』だ。次のクエスト(練習試合)に帯同してもらうぞ!」
こうして、俺のチームに、最強で最悪の「女房役」が、仮加入した。
「投手」「4番」、そして「捕手」。
役者(エラーだらけの選手)は、揃った。




