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今日、告白します!お兄ちゃんはイケメンだけど、、、

作者: 来留美

楽しくお読みいただけましたら幸いです。

 今日、私は告白します!

 何を?

 そんなの決まってる。


 大好きな幼馴染みに好きって言うの。


「ユラ、今日は兄貴はいないけど家に来るか?」

「行く!」

「でも、兄貴いなくていいのか?」

「いいの!」


 私の名前はユラ。

 この幼馴染みで私の大好きな彼。

 名前はイツキ。


 幼馴染みだから、いつもイツキのお家に遊びに行くの。

 理由は一つ。

 一緒にいたいから。


 

「ユラ、帰るぞ」

「うん」


 放課後、イツキが私のクラスまで迎えに来てくれた。

 今日こそは、告白をするために何度も練習をした。


 本当は、今まで何度も告白をしようとしたの。

 でも勇気が出なかったり、邪魔が入ったりでできなかった。


 でも今日は違うの。

 今日はなんだか良い日な気がするの。

 朝は大好きな猫ちゃんに会えたし、雨女の私が今日は雨なのに傘を使わなくて良かったし、今日の星座占いも第一位だったの。


 そして、イツキのお兄ちゃんもいない。

 邪魔者はいないのよ。


「何考えてんだよ? もう、おやつのお菓子のことを考えてるのかよ?」

「なっ、私は食いしん坊じゃないわよ」

「そうか? お菓子を食べてる時、幸せそうにしてるけど?」

「もう!」


 私は早歩きでイツキの前を歩く。


「ほらっ、危ないだろう?」


 イツキに腕を引っ張られ、後ろ向きのままイツキの胸に後頭部をぶつける。

 硬い胸板に驚く。


「ユラが前を見て歩かないから、自転車にぶつかりそうになってたぞ」

「ありがとう」


 私はイツキの胸板に後頭部を付けたままお礼を言った。


「顔が見えない」


 イツキが私の顎を上へ上げて横から私の顔を覗きこむ。

 格好いい顔に私は顔が赤くなる。


「よし! 大丈夫だな」

「何が大丈夫なの?」

「ん? 泣いてない」

「そんなことで泣かないよ」

「そうか? ユラは泣き虫じゃん」


 イツキが私をからかう。

 私達はいつもこんな感じ。


「ただいま~」

「ユラの家じゃないじゃん」


 私がイツキの家へ入って言うとイツキはクスクス笑って言う。

 いつかは、私のお家になるかもしれないよ。


 告白が成功したら、私はイツキのお嫁さんになるかもしれないよ。


「ユラ、帰って来たか?」


 リビングから、イツキのお兄ちゃんが出てきた。

 今日はいないはずだよね?

 やだぁ。

 また邪魔される。


「兄貴、何でいるんだよ?」

「何でって、用事がなくなったからだよ」


 イツキのお兄ちゃんはイツキには冷たい。

 睨みながら言わなくてもいいのに。


「お兄ちゃん? 今日は私、イツキのお部屋に行くから、、、」

「ダメ! ユラはお兄ちゃんとテレビでも見る? お菓子もいっぱいあるからさ」

「えっ、でも、、、」


 私はお兄ちゃんに腕を引かれてリビングに連れて行かれる。

 でも、今日は違う。


「お兄ちゃん、ダメ! 今日はダメなの」

「何? ユラ? ダメって言うユラも可愛いよ」


 お兄ちゃんは嬉しそうに笑いながら私の頭を撫でる。

 私はお兄ちゃんのお人形さんなんだと思う。


「お兄ちゃん、今日はイツキのお部屋で遊びたいの!」

「それならお兄ちゃんも一緒に行くよ」

「ダメ! お兄ちゃんがいちゃダメなの」


 私の言葉を聞いてニコニコしていたお兄ちゃんはいきなりイツキを睨む。


「お前、俺のユラに何かしたら許さねぇからな」


 なんと、迫力のあるお顔。

 イケメンさんが言うと迫力が凄い。

 イツキもお兄ちゃんもイケメンすぎて困る。


「ユラ、行くぞ」

「うん」


 イツキはお兄ちゃんの迫力に負けず、何も言わず私を呼んだ。

 そこは、何もしないとか言わないの?




 イツキのお部屋に着いて、私はベッドを背にして絨毯の上に座る。

 イツキは無言でお菓子を並べる。


 私の大好きなお菓子ばかり。

 今日は本当に良い日だ。

 ニコニコしながら何を食べようかと選ぶ。


「やっぱり、お菓子が好きだよな?」

「女の子はお菓子が大好きなの」

「そっか。オレンジジュースを持ってくるよ」

「うん」


 私は決められなくて食べるお菓子をずっと見比べていた。

 そんな時、リビングの方から怒鳴り声が聞こえた。


 私は急いでリビングへ向かう。

 そこで、お兄ちゃんとイツキが睨み合っていた。


「どうしたの? お兄ちゃん、唇から血が出てるよ」


 私は心配しながらお兄ちゃんに近付く。


「ユラ、触るな!」


 イツキが低い声で私に言った。

 私は驚いて体が強張った。


「お前、ユラが怖がってるだろう?」


 お兄ちゃんが私の頭を撫でようと手を出してきた。

 その手をイツキは払った。


 そして私を引き寄せて腕の中に閉じ込めた。

 バックハグをされている。


「兄貴、ユラには言うなよ」

「ユラに聞かれれば言うさ」

「はあ? お前、言ったら絶対に許さない」


 二人に何が起こっているのか分からない。


「イツキ?」


 私はイツキの腕の中でイツキの顔を見たくて、見上げた。

 イツキは、目を見開いた後、私をイツキのお部屋へ連れて帰る。


 お兄ちゃんは、何も言わなかった。


「イツキ、何があったの?」

「何でもない」

「どうしたの?」


 私はうつ向いているイツキの顔を見たくて、手を引っ張った。


「いたっ」


 イツキが手を痛がった。

 手の甲を見ると赤くなっていた。

 お兄ちゃんを殴った時にできた傷だと思う。


 私はすぐにバッグから絆創膏を出す。

 可愛い猫ちゃん柄の絆創膏は存在感がある。


「可愛い」


 私はクスクス笑ってしまった。


「何笑ってんだよ」

「だって、こんなゴツゴツした手に可愛い猫ちゃんがいるんだもん」

「ユラが貼ったんだろう? 笑うなよな」


 男の子らしい手にドキドキしちゃった。

 女の子とは全然違うんだね。


「お菓子、何を食べるか決めたのか?」

「うん。これにしたよ」


 私は猫の形のグミにした。

 この猫型のグミ達の中にハート型が入っていれば良いことがあるの。


 もし、ハート型が入っていれば、今すぐイツキに告白しようと決めてるの。

 グミの包装を開ける。

 中身の確認をする。


 見にくいなぁ。

 奥の方が見えないよ。

 私はハートのグミを探すのに必死だった。


「俺さ、ユラが、、、なんだ」

「私が何?」

「ユラが、、、」


 あったハートの形のグミ!


「好きなんだ」


 えっ、今、なんて言ったの?

 私の動きは止まる。

 そして心の中でイツキの言葉を繰り返す。


 私が好き?


「うそ」

「ユラが困るのは分かるけど、俺は知っててほしいんだ」

「うそだよね?」

「ユラが兄貴を好きなのは分かっているけど、アイツ彼女がいるんだよ。あんな奴にユラを取られたくない。渡したくない」


 イツキ?

 何を言ってるの?

 私、、、


「私、お兄ちゃんを好きじゃないよ? 好きじゃないっていうか、お兄ちゃんとしては好きだけど、恋愛としては見てないよ」

「えっ、でも、毎日この家に来るじゃん」

「それは、、、」


 私はハート型のグミを口に入れた。


「イツキと一緒にいたいからだよ」


 私が笑って言うとイツキは顔を真っ赤にしてうつむいた。


「俺、兄貴に言われたこと守れないかもしれない」

「お兄ちゃんが言ったこと?」

「うん、ユラに何かしたら殺されるかもしれない」

「えっ、何それ」

「ユラ、嫌なら嫌って言ってくれ」

「嫌? じゃないよ」


 私は猫ちゃん柄の絆創膏が貼ってあるイツキの手を両手で包んだ。


「この怪我も私のためでしょう? すごく嬉しいよ。この手は私を守ってくれるでしょう? 嫌なんかじゃないよ」


 イツキは私の頬に優しく触れる。

 ゴツゴツの手はとても優しい。

 私達は見つめ合う。


『コンコン』


 いきなり部屋のドアをノックされて二人で驚く。

 すぐにドアが開く。


「さっきはごめん。ユラに怖い思いをさせたよね?」


 お兄ちゃんが頭を下げて言う。

 そして頭を上げて、すぐに私の手を取る。


「ユラ、何もされてないか?」

「お兄ちゃん。私は大丈夫だよ」

「いいや、こんなクソガキに何かされたらすぐに言えよ」

「お兄ちゃん、過保護すぎだよ」

「あっ、そうだった。さっき彼女に怒られたんだよ。二人の邪魔をするなってさ」 


 お兄ちゃんは彼女さんに怒られたみたい。

 でも『可愛い妹を守りたかったから』だって言ってたよ。


 お兄ちゃんはすぐに部屋を出ていった。

 また静かになる。


「お兄ちゃんは私を妹だって思っているんだね?」

「それって、、、」

「それって?」

「いいや、いつかそうなるだろうから」

「え?」

「兄貴も早すぎだよ。まだ恋人でもないのにさ」

「何? どういうこと?」

「さっきの続きしようか?」

「さっきの続き? あっ、うん。それじゃあ、次はこれにしようかな」


 私は食べるお菓子を決める。

 それを見ていたイツキは『まっ、いっか』って言って私の選んだお菓子の包装を開けてくれた。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。

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