再挑戦
教室に入った瞬間から、胸の奥がざわざわしていた。
文化祭の準備なんて、やることはいくらでもあるはずなのに、頭の片隅でずっと考えていたのは別のこと――三輪さんのことだ。
今日こそ……聞いてみよう
そう決めたはずなのに、気づけばまた一日が終わってしまう。
勇気を出そうとするたび、頭の中で失敗したときの光景ばかりが浮かんで、喉がきゅっとつまってしまう。
ヒトコと練習を重ねて、「大丈夫、言える」と思えたはずなのに……いざ三輪さんを目の前にすると、やっぱり足がすくむ。
でも、このまま何も聞けないままなのは嫌だ。三輪さんの“たぶん”も、あのときの元気のなさも、ちゃんと知りた
文化祭の準備は進んでいる。
ガヤガヤした教室の空気のなかで、私は決意を繰り返し、そしてまた揺らいでいた。
――そんなとき、転機は訪れた。
ほとんどのクラスメイトが片づけに出て行き、気づけば教室には三輪さんと私だけ。
机の上に散らばったプリントをまとめている三輪さんの横顔。
声をかけるなら、今しかない。
心臓が暴れるみたいに鳴って、手が震えた。
でも、もう逃げない。
「……あの」
声は小さく、かすれてしまった。けれど、三輪さんが手を止めて、こちらを向く。
一瞬の視線が怖くて、でもそこから目を逸らさずに続けた。
「……やっぱり最近、三輪さんが元気ないように見えるんだけど……」
練習で何度も繰り返した言葉。
つっかえながらも、なんとか最後まで言えた。
沈黙。
三輪さんの眉がわずかに寄って、視線が揺れる。
「……なんで、あんたにそんなこと言われなきゃなんないの」
その声には、苛立ちだけじゃなかった。戸惑いと、少しの弱さがにじんでいた。
返す言葉を探して口を開きかけたとき――。
「二人とも、どうしたの?」
教室の扉が開いて、高木さんが戻ってきた。
空気を察したのか、軽い調子ではなく、慎重に場を探るような声だった。
私と三輪さんの間に流れていた緊張感が、少しだけ揺らいだ。




