ほのかと休日
休日の午後。
駅前の小さなカフェで、私はほのかと向かい合っていた。
窓際の席から差し込むやわらかな日差しが、テーブルの上のグラスをきらきらと光らせている。
「久しぶり!」
にこにこしながら手を振ってくれるほのかの笑顔に、胸の奥が少し軽くなる。
学校のこと、最近の出来事……特に三輪さんのことを、私はぽつぽつと語り出した。
最初は声が小さかった。
でも、ほのかは私の目をじっと見て、うんうんと大きく頷きながら聞いてくれる。
その真剣な姿に後押しされるように、言葉が少しずつ溢れていった。
「……それで、この前も“いじめてるのか知りたくて”って言ったら、三輪さんがすごい顔で……」
そこまで話すと、ほのかの表情がきゅっと引き締まった。
「……なにそれ。最低じゃん」
怒っている。
私の代わりに、声を荒げてくれている。
胸の奥で小さな火が灯ったように感じた。
「でもね……なんか最近の三輪さん、前とちょっと違う気がするの」
「違う?」
「前みたいに嫌味を言ってこなくて、ぼーっとしてることが多くて……でも、なにを考えてるのか、やっぱり怖くて聞けない」
言いながら、私は両手を膝の上で握りしめた。
ほのかはストローをくるくる回しながら、しばらく黙って考えていた。
そして、少し肩をすくめて笑う。
「うーん……私なら、空気読まずに何回も聞いちゃうかなー」
「……え?」
「だって気になるし!わかんないままモヤモヤしてるの、私苦手なんだよね。だから“ねぇ、ほんとどうなの?”って何回も聞く」
その言い方があまりに自然で、私は思わず目を丸くした。
「それでね、結構それで仲良くなることもあるんだよ。ちゃんと話してくれるようになったりさ」
「……でも、離れちゃう場合もあるんでしょ?」
「まぁね!」ほのかは笑ってみせる。
「でも、離れちゃうならそれまでの関係なんだと思う。逆に、残ってくれる人は本当に大事な人だよ」
その言葉は軽やかだったけれど、胸の奥に深く響いた。
私はいつも、相手を怖がってばかりだ。
嫌われるのが怖くて、声をかけることさえできない。
でも、ほのかは違う。
怖くても、自分の気持ちをごまかさず、ちゃんとぶつけている。
その強さが羨ましくて、眩しい。
「……私も、聞いてみようかな」
小さな声でつぶやくと、ほのかはぱっと笑顔を見せた。
「うん!いいじゃん!リンリンならできるよ!」
グラスの中で氷が小さく音を立てた。
私はストローをそっと動かしながら、自分の胸にもう一度言い聞かせる。
――三輪さんに、ちゃんと聞いてみよう。




