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揺れる気持ち

「ねぇ!マジありえないんだけど!?なんであんなこと言うの!?ほんっと最悪!!」


声が反響して、心臓が大きく揺れる。

怒りの言葉は止まらなくて、まるで壊れた蛇口みたいに次々と流れ出てくる。


「ほんっとに最悪!あー……もう、片桐先生に嫌われたかもしれないじゃん!」


怒鳴った直後、自分でハッとしたように口を押さえた。

けれど、その一瞬の表情を私は見逃さなかった。

不安そうで、泣きそうで、今までの三輪さんとは違う顔。


「……もしかして」

心の奥で考えていたことが、言葉になって口からこぼれた。

「三輪さんって……片桐先生のこと、好きなの?」


空気が止まった。

高木さんが「えっ」と目を丸くし、三輪さんは大きく見開いた目で私を睨みつけた。


「はぁ!?なにそれ!?」

顔が一気に真っ赤になり、声が裏返っている。

「そ、そんなんじゃないし!ふざけんな!そういうこと言うな!!」


怒鳴り声は強いけれど、いつものように自信に満ちてはいなかった。

動揺が混じって、声が震えている。


高木さんは何も言わず、気まずそうに視線を泳がせる。

私はただ、じっと三輪さんを見つめるしかなかった。


昨日ヒトコが言っていたことが頭に浮かぶ。

――その状態と合致するのは、恋愛感情かと思われます。


「恋愛感情」なんて、まだ私には遠い世界の言葉だ。

でも、三輪さんが片桐先生と話すときの嬉しそうな顔と、今の不安そうな顔が、少しずつつながっていく。


「もし嫌われたらどうしよう」

「でも好きだから近づきたい」

その気持ちがごちゃごちゃになって、怒りに変わっているのかもしれない。


ヒトコの声が心の奥で響く。

「確かに、感情が混ざると人は矛盾した行動をとることがあります」


私は混乱していた。

「好き」と「いじめ」が同じ人の中に同時にあるなんて、頭では理解できない。

けれど――今の三輪さんは、ただ怖いだけの人ではないように思えた。


風が校舎の隙間を通り抜ける。

三輪さんは顔を背け、耳まで赤く染めたまま、しばらく何も言わなかった。

その横顔は、怒りよりも、なにかを隠すような切なさでいっぱいに見えた。

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