これからのわたしにできること
ワークショップの教室に入ると、机の上には今日のテーマが書かれた大きな紙と、色とりどりのマーカーが整えられていた。
「第6回ワークショップ:これからのわたしにできること」
タイトルを見ただけで、胸の奥に小さなざわざわが広がる。これまでの回を振り返る時間……少し緊張もするけれど、どこか楽しみでもあった。
朝比奈先生が笑顔で話す。
「今日は、このワークショップ全体のふりかえりをします。自分が成長したこと、変わったこと、これからやってみたいこと、大切にしたいこと……いろいろ自由に書いてみましょう」
机に座り、マーカーを手に取る。
私は少し迷った。何を書けばいいのか、うまく言葉にできるのか自信がなかった。
でも、隣に座るほのかがにっこり笑って、「リンリンは、まず思ったことを書けばいいんだよ」と言ってくれた。
先生が続ける。
「今日は、チームメイトに手紙を書いたり、感謝を伝える時間もあります。言葉にするのが苦手でも大丈夫。思いを伝えること自体が大事です」
最初に、紙に自分の変化や成長を書き出す。
私は、ふとこれまで集めてきた感情カードのことを思い出す。
怒ったり、悲しかったり、嫉妬したり――どれも小さな出来事の中で、自分の胸の奥にあった感情。
私は紙に小さく文字を並べていく。
「LINEのやり取りで、少し会話が続けられるようになった」
「感情カードを集めるのが楽しかった」
書いていると、胸の奥に、胸の奥がふわっと温かくなる感覚があった。
まだ名前のわからない、だけど確かにそこにある感情――それがなんだか不思議で、少しだけくすぐったかった。
ほのかやクラスメイトの様子も目に入る。
みんな、自分の変化や成長を書きながら、時々笑い合ったり、照れたように下を向いたりしている。
その姿を見て、私も思わず口元が緩む。
自分だけじゃなく、みんなも同じように不安や照れを抱えながら、一歩ずつ進んできたんだな、と感じた。
次に、チームメイトに手紙を書く時間になった。
ほのかには、ありがとうの気持ちを伝えたくて、小さな文字で丁寧に書く。
「いつも一緒にいてくれてありがとう。LINEの話とか、笑いながら教えてくれて嬉しかった」
書き終わったあと、手紙を見つめて胸がじんわり温かくなる。
言葉にすると頬が熱くなったけれど、手紙の紙を通して自分の思いが相手に届くと思うと、温かい気持ちがこみあげてきた。
先生が部屋を見回しながら言う。
「小さな一歩でも、未来に向かって踏み出したことは立派です。自分を褒めてあげてくださいね」
私は深呼吸をして、心の中でそっとつぶやく。
「……私、少しずつできてきたんだ」
文字にできたわけでも、誰かに声にして褒めてもらったわけでもないのに、胸の奥の温かさと頬が熱くなる感覚が、自然と自分を肯定してくれた。
最後に、今日の振り返りを紙にまとめる。
「これからやってみたいこと」「大切にしたいこと」を箇条書きにして、最後に小さく笑顔の絵を添える。
小さな文字と絵でも、今の私の気持ちを形にすることができた。
胸の中のふわっとした温かさは、言葉にできないけれど確かな感情だった。
窓を開け、外を覗くと風が頬にあたる。
胸の奥の温かさを少し抱えながら、私は小さくつぶやく。
「……私、少し変わったのかもしれない」
まだ名前のわからない感情だけれど、その存在を確かめた日だった。




