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緑色の気持ち

ワークショップが終わって、会場を出たところだった。

出口の少し先で、ほのかが誰かと話しているのが見えた。

同じ年くらいの女の子。声は届かないけれど、笑い声だけははっきり聞こえる。

ほのかの表情は、いつも私に向けてくれるあの屈託のない笑顔だった。


胸の奥が、きゅっと縮む。

何が嫌というわけじゃないのに、その場から足が動かなくなる。

私は視線を逸らし、少し距離をとってから歩き出した。


夜、スマホが震えた。

画面にはほのかからのLINE。


ーーー


ほのか「今日ね、去年のワークショップで一緒だった子にばったり会ったんだ!

めっちゃ懐かしくて、つい長話しちゃった笑」


ーーー


既読だけつけて、返事は打たなかった。

どう返事すればいいのか頭の中のもやもやがどうにも整理できず、送信ボタンを押す指が、どうしても動かなかった。


夕食後いつも通り、ヒトコを起動する。

「……こういう時、なんて言えばいいかわかりません。ほのかが楽しそうにしてたの見て、なんか、もやっとして……」


ヒトコはいつもの落ち着いた声で言った。

「それは『嫉妬』という感情かもしれません」


「嫉妬……?」

口に出してみると、妙に重たい響きが胸に残った。


「自分が大事に思っている人が、他の誰かと楽しそうにしている時に、置いていかれたような気持ちになる。それは自然な感情です。悪いものではありません」


悪いものじゃない。

そう言われても、どう扱っていいのかはわからない。

感情に名前が付けられたというのに、心のもやもやは晴れないままだった。


ーーー


机の引き出しから、柚がくれた感情カードを取り出す。

緑色のふちどりに「嫉妬」と大きく書かれたカード。

その下には、柚が書いたメモのような文字が並んでいる。


「自分も大事にされたいっていうサイン」


その言葉を見つめながら、何度も今日の事を思い返す。

この気持ちを、どう整理すればいいんだろう。

答えはまだ出ないまま、私はカードを手に持ったまま、ベッドの上に横たわった。


「また一個感情を見つけられたのに……」


一人小さく呟いた。

今まで新しい感情を見つけると嬉しかったはずなのに、喜びの感情はなくこの感情との向き合い方に悩みながら目を閉じた。


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