気持ちの伝え方を考えよう
ワークショップのいつもの部屋に入ると、机の上には今日のテーマ「気持ちの伝え方を考えよう」と書かれたプリントが置かれていた。
朝比奈先生が説明する。
「今日は、自分が感じたことを、相手にどう伝えるかを考えます。特に、誤解が生まれやすい言い方について話し合いましょう」
ほのかが隣でひそひそ声で話しかけてくる。
「ねぇリンリン、この前LINEでさ、私『じゃあまたね』って送ったらさ、リンリンから『うん』って返ってきたじゃん」
「……うん、そうだったね」
「正直、ちょっと怒ってるのかな?って思っちゃった」
私は少し驚いて首を傾げた。
「そんなつもりはなかったけど……短すぎた?」
「そう!文章短いと、なんか冷たく感じちゃうんだよね。でも会って話すと、別にそんなことないって分かるから、たぶん私の思い込みなんだけど」
先生が各ペアに、「最近あった誤解の例」を出し合うよう促した。
ほのかが私を見てニヤリと笑う。
「じゃあその『うん』事件、発表する?」
「……事件って言うほどのことかな」
「いいじゃん!リアルなやつのほうが面白いし、みんなにも役立つよ」
発表の時間、ほのかが説明する。
「私とリンリンはLINEしてて、最後に私が『じゃあまたね』って送ったら、リンリンから『うん』ってだけ来たんです。私は『あれ?なんか怒らせた?』ってちょっと焦ったんですけど、後で聞いたら全然そうじゃなかったんですよ」
先生が頷く。
「短い返事は、相手によっては素っ気なく感じることもありますね。同じ内容でも、『うん、またね』とか『またね、楽しみにしてる』といった一言を足すと、印象が変わります」
私は試しにほのかへ向かって言った。
「じゃあまたね」
「うん、またね」
ほのかが笑顔で頷く。
「お、やっぱ柔らかくなった感じする!」
その後の練習では、ほのかと何度もやり取りを繰り返しながら、「同じ内容でも温度が変わる言葉の付け足し方」を試していった。
最後にほのかがポツリと言った。
「こうやって話してくれると、ますますリンリンのこと知れて嬉しいな」
なんだか少し照れくさくて、私は小さく「ありがとう」と返した。
その短い言葉も、今日はちゃんと笑顔を添えて。




