ヒトコ先生の会話講座
ほのかとは連絡先を交換してから、ほぼ毎日LINEでやりとりをしていた。
最初は「向坂さん」と呼んでいたが、何度も「ほのかでいいよ!」と押され、ついに折れて「ほのかちゃん」と呼ぶことに。
すると彼女は笑いながら「妥協点!」と言ってきた。……何の妥協なのかは、よくわからないけれど。
ーーー
ほのか:「今日さ!アイス食べに行ったんだけど、めちゃうまいピスタチオ味だったの!!」
りん:「そうなんだ」
ほのか:「ピスタチオ大好きなんだ!緑色の食べ物っておいしい率高くない!?ブロッコリーとか」
りん:「……その2つが並ぶの、珍しいね」
ほのか:「えっ、じゃあリンリンは何味のアイスが好き?」
りん:「バニラ」
ほのか:「シンプル~~!でもそういうとこ好き!」
ーーー
画面越しにやりとりしているのに、ほのかの笑い声が聞こえてくる気がして、ちょっとだけ口元がゆるんだ。
毎日LINEを続けていて、ひとつ気づいたことがある。
今までLINEは必要最低限の連絡にしか使ってこなかったけれど、こうして友達とのやりとりになると、自分の言葉の少なさがやけに目立つ。
おそらく、普段の会話でも同じなのだろう。必要最低限しか返す意味を感じていなかったが、こうやって見直すと、改善の余地があるのかもしれない。
そんなとき、ほのかが冗談まじりに言った。
「なんかリンリンってLINE苦手?返事短い!あ、そういうところもクールでいいんだけど!でも見返すと私ばっかり話してて、ちょっと恥ずかしいかも」
そこで私は、ヒトコに相談することにした。
「こういう文章がきました。どう返すのがいいのでしょう?私がそのまま書くと『そうなんだ』としか返せなくて」
ほのかからきた「美味しいクレープ屋さん見つけた」というメッセージを見せる。
机の上の筐体から、ヒトコの少し硬い声が返ってくる。
「相手は、自分の経験を共有し、あなたにも共感や興味を示してほしいと考えている可能性が高いです。おすすめの返答パターンは、①感想+②質問 です」
「感想と質問……?」
『例えば、「おいしそうだね!それ、どんな味?」と返すことで、会話が継続します』
「……なるほど」
私はスマホを手に取り、ヒトコの提案を少し崩して打ち込む。
『おいしそう!クレープどんな味だった?』
送信して数秒も経たないうちに、ほのかから長文の返信が返ってきた。
勢いのある感想、クレープ屋さんの場所、食べたときの顔文字まで添えて。
「会話が広がりましたね。成功です」とヒトコ。
私は思わず、小さく笑った。
その後、さっきの返事をヒトコに手伝ってもらった事をヒトコの説明をと共にほのかに伝えた。
ほのかは「すごーい!最先端じゃん!」と興味津々。
それから、ヒトコの力も借りつつ会話していくと少しずつ返事の文章が長くなり、会話が続く時間も増えていった。
気がつけば、それが少しずつ楽しくなっている自分がいた。




