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婚約者がNTRれたので世界最強を目指します  作者: 沼男
【二章】大陸間ギルド対戦
64/81

決勝開幕直前


 翌朝。

 朝日の温もりと、腹の辺りにある妙に熱い何かを体で感じながら目を覚ます。

 まだ寝たいと、抵抗する体を無理やりに動かして上半身を起こす。

 すると、かけていた布がスルリと落ちた。


『ふぅ、昨日の今日だけあって少し疲れてんのかな。試合開始まで少し運動でも――――――』


 アランは硬直する。

 視線のやや下あたりに、黒く艶々とした髪の毛のような髪の毛が見えてしまった。

 髪の毛ではない!と現実逃避をしながら恐る恐るさらに視線を下へと移す。

 すると――――――薄橙色の素肌がガッツリと露出していた。


『ベノミサスッ!?何やってんだそこでッ!?』

『……ん。おはようアラン』


 ベノミサスは目を擦りながらゆっくりと起き上がっ

た。


『……夜、寒かったから』

『ドラコと一緒だったろ!?』

『寝相が悪くて危ないからあんまりドラコの布団には入りたくない』

『いやいやいや、ならコレットでもいいじゃん』


 ムスッとした顔をしながらベノミサスはアランの体に密着する。


『最近……忙しくてあんまり構ってくれない』

『あぁ〜なるほどな』


 アランはベノミサスの頭に手を置き優しく撫でる。


『――――――いやいや!とは言っても服は着ようぜ!』

『ない方がアランも暖かいかと思って……』

『気持ちは嬉しいけど、こんなところを他のやつに見られ出ましたら――――――』


 その時、部屋のドアがガチャリと音を立てながら開いた。


『アラン!いつまで寝てるの?早く起きなさ――――――アラン?』


 コレットは顔をニッコリとさせ、腕捲りをしながら近づいてくる。

 その背後には阿修羅の様な何かが見えた気がした。


『コレット、人は話し合える生き物だ。一旦は話をだな』

『ベノミサスちゃん。アランに何かされた?』

『……されてないよ。ただ――――――くっついて一緒に寝てただけだよ』

『ベノミサスさんッ!?』


 コレットの体から蒸気のようなモノが出始めた。

 刹那、目にも止まらぬ速さの平手打ちが襲いかかる。


『ギルティィィィィーーーーーッ!!!』

『この展開前にもあったよなァーーーーーッ!!!』


――――――――――――


 アイスヘイル・コロッセウムの前は人で一杯だった。

 辺りを見渡すと、バルーンアートや氷の大型彫刻などがあり、街に新鮮な彩をもたらしていた。

 さらに、魔女を連想させる大きな帽子を被った子供や、杖をついた老人といった前回までは居なかった客層がチラホラと見える。


『凄い数の人ですね』

『前回も凄かったけど今回はそれ以上だな。やっぱ国のトップが直々に闘うってなると国民も盛り上がるんだろうな』


 先に会場へと移動していたアランとクレアは大会の規模に圧倒された。

 すると、人だかりの中から見覚えのある金髪エルフの男が歩いてきた。


『あ、グレイさん!』


 クレアは直ぐに気がつき手を挙げる。


『おはよう』

『体の方はもう大丈夫なんですか?』

『あぁ、問題ない。無駄な心配をかけてしまってすまなかった』

『いえいえ!』


 アランは訝しげな目でグレイを見る。


『なぁ、なんでアンタ俺たちの姿を視認できたんだ?一応は初視認阻害の魔術を発動してたんだけど』

『音だな。姿が見えなくとも、彼女の歩く際に出る足音は知っていたからそれでな』

『耳が良いんだな』


 クレアの足元を見る。

 黒茶色のロングブーツは歩くたびにカツカツと音を出していた。


『ってか他人の歩く音を記憶するとか……ちょっと変態感あるな』

『やめるんだ!』


 視線が左右に行ったり来たりと明らかに動揺しているのが分かった。


『ってかエラードとかってまだ居るのか?』

『いや、帰った。一応我々はそれぞれの大陸にとっての貴重な戦力だからな』

『あーなるほどね』


 そう言うとグレイは体の向きをコロッセウムへと向けた。


『では私はこれで失礼する。急遽大会の形式が変わって大変だろうが頑張ってくれ』

『おけ。アンタらに勝った以上は勝つよ』

『相手はあの【氷結】の逸脱者でもか?』

『当然よ』


 グレイはアランの瞳を見る。

 

(……一切の虚栄はない。流石はあの堅物エラードを動かした男だな)


『客席で応援しているぞ。――――――ではな』

『おう』

『病室でした約束通り、今度グレイさんの【蒼風流】を教えてくださいね!』


 クレアの問いに対しグレイはどこか嬉しそうに微笑み小さく頷いた。

 そして、そのまま群衆の中へと消えて行った。


『ってかクレアさん、技とか教えてもらえるくらいには仲良くなってたんだな』

『そうですね。今私が持っている力は所詮は貰いモノです。血の滲むような努力を経て初めて力というのは身につくものだと思っているんですよね』

『……騎士の鏡すぎんだろ』

『ちょ、恥ずかしいのでやめてください!』


 そうこうとしていると、コロッセウムに取り付けられた時計の鐘が鳴った。

 時刻は午前10時。

 決勝開始まで残り2時間を切っていた。


『じゃ、行くか』

『はい!気を引き締めて行きましょう!』


 いつにも増して気合の入ったクレアと、平常運転のアランはアイスヘイル・コロッセウムの中へと入って行った。

 

――――――――――――


 窓から射す太陽の光が部屋の中を明るく照らす。

 クローゼットを開きベッドの上に複数の衣装を並べながら、左右に行ったり来たりと移動する一人の女性がいた。

 青みがかった銀髪を持つその女性は険しい表情で顎に手を当てている。

 すると、何者かが部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。


『どうぞ』


 そう一言返すと、ドアを開きながら桃色の毛を持った猫獣人の女性が入ってきた。

 

『フィーヤ様、衣装の方をお決まりになりましたか?』

『う〜ん、正直まだ決めかねてるね。ニルフィー的にはどれが良いと思う?』


 ニルフィーと呼ばれた猫獣人の女性は視線をベッドの上に並べられた衣装へと移す。


(黒ベースの伝統的な魔女ローブと、氷を思わせる白と水色のロングドレス、動き易さ重視の白のショートドレスなど……)


『確かにこれは悩ましいですね』

『個人的には丈の短い動き易さ重視でいきたいんだけど、下着が見えちゃうのがちょっとなぁって感じでさ』

『そうですね。あと黒の魔女ローブは対戦相手のアラン様とイメージが被ってしまうかもしれませんね』

『あー確かに』


 フィーヤは駄目そうなモノからクローゼットにしまっていった。

 そして、一枚の衣装を手に取り掲げる。


『――――――よし、黒の魔女ローブでいこう』

『人の話聞いてました?』

『やっぱり、古の魔法使い【氷の魔女】の伝説にあやかった方が皆も盛り上がるでしょ?』

『それはそうですけど……』


 フィーヤはヒラリと一回転する。 

 色の濃い黒のローブに白銀の髪が浮いて見え、髪の美しさがより一層ハッキリと感じられた。


『……あんまり似合ってないですね』

『どうしてよッ!!!ほら、カッコいいじゃん!!!』

『うーん、やはりフィーヤ様には大人びた色の薄いドレスの方が似合いますね』

『ま、まぁ……せっかくの大会だし?ちょっとは遊んでもいいんじゃない?』

『フィーヤ様が良いのでしたら、私としてもこれ以上言う事はないですね。とりあえず、衣装がお決まりになったのでしたら、登場演出についての最後の調整に移りましょう』

『了~解』


 あまり乗り気でない、ふにゃふにゃとした顔をしながらフィーヤはニルフィーの後を追うように歩く。


『ねぇニルフィー。アランはどれくらい耐えられるかな?』

『油断をしていると足元を掬われますよ』

『え~つれないなぁ~』

『こちらが遠距離職の魔法使いなのに対し、お相手は近距離型のファイターのようですし相性は悪いかと。それに、昨日使われた【黒い矢】という切り札も持っているようですし、距離があれば安心できるほど簡単な相手ではないですよ』

『あ~あれね。あの【黒い矢】ってさ、何の魔術なんだろうね。闇属性であんなヤバそうな魔術があるって聞いたことないしさ』


 どこか嬉しそうにフィーヤは笑う。


『嬉しそうですね』

『まぁね。“未知”に対して“快楽”を見いだせるからこそ――――――私は魔法使いなんだよ』

『フィーヤ様が楽しんでいるのでしたら良かったです。ただ――――――お屋敷中を氷だらけにするのは止めてもらえますか?』


 フィーヤは目線を上げ周囲を見る。

 廊下、壁際に置かれた彫刻、窓ガラス、視界に映る全てが氷に覆われていた。


『――――――ナンテコッタ』

『それを言いたいのは使用人たちですよ……』

『……』


 手元に一本の氷の杖を作り出す。

 クルクルと手元で回しながら、フィーヤはニルフィーの顔を見る。


『――――――今日の時給は五倍にするって言っといて』

『うちは月給制です』



恐ろしく話が進まないのは――――――古戦場のせいです(責任転嫁)

ただ、次話辺りからは一気に進むと思う。 

多分。

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