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婚約者がNTRれたので世界最強を目指します  作者: 沼男
【二章】大陸間ギルド対戦
34/81

グレイ戦②


 パラパラと崩れ落ちる壁材の音が、その衝撃の強さを現していた。

 クレアはなんとか頭を動かし自身の手元を見た。


 かろうじて剣は手放さずにすんだけど、うまく体に力が入らない。

 それにあの武器……素人目に見ても“普通“じゃないって分かる。

 一本目の武器は小手調べ用で、二本目から本番だったという事ですか……冷静に考えて隻腕の剣士が剣を二本も携えている意味を考えるべきでしたね。


 ふらつく脚に力を入れながら何とか体を起こし立ち上がる。



 グレイ・ハイラードは跳ね飛ばされた刀を丁寧に拾い上げ鞘へと納めると、今しがた吹き飛ばした対戦相手のいる方向へと歩き始める。

 ゆっくりと深呼吸をしながら頭の中で情報を整理する。


 彼女が使った技は【薫風凛】ではなく、ただの剣の斬り上げだ。

 おそらくは、技名を敢えて口にし、こちらの動揺を誘うのが目的だったのだろう。

 そして俺はその策にまんまと乗せられてしまった間抜け野郎だったと……本当に、俺はどうしようもない“出来損ない”だ。

 少し強くなったからと、傲慢にも東の【逸脱者】に喧嘩を売りに行き、片腕を失い惨めに敗走。

 そして、更には剣術の腕に差がある事を良い事に、相手に舐めた態度をとり、まんまと隙を突かれると……。 


 一度立ち止まり、宙を見上げる。


『全く……俺は成長しないな』


――――――――――――


『おい、皆見ろよコイツ魔術がろくに使えない“出来損ないのグレイ”だ!』

『うーわ、マジじゃん。初級魔術しか使えない雑魚が何でこの学校にいんの?』

『さぁーな。でも噂じゃ親のコネで許されてるらしーぜ』


 自身の机を囲む様に、三人のエルフの少年達がこれ見よがしに嫌味を吐いてくる。

 

『おい何とか言ったどうだ間抜けが』

『ハハハッ、コイツ魔術が下手くそなだけじゃなくて、言葉も喋れないんじゃね?』

『それマジのゴミじゃんWWW』


 少年達は満足するまで一通りの煽り文句をぶつけてから、自分の在籍する教室に戻って行った。

 目玉だけを静かに動かし、周りの様子を観察する。


 (………………)


 あれだけ騒がしかったのにも関わらず、周りのエルフ達はそれぞれの時間を過ごしていた。

 そう、誰も気にもしていなかったのだ。

 すぐ近くでクラスメイトがなじられ、馬鹿にされていても、それを止めようとする者は誰一人いなかった。

 それはまるで、自分だけが隔絶された空間に居るようだった。

 

(……まぁ、それもそうか。魔術の名門校で俺の様な落ちこぼれに好き好んで構うやつなんて居な――――――)

 

 その時、何者かが自身の背中をパンっと叩いた。

 ゆっくりと振り向くと、そこには短い黒髪の人間の少年がヘラヘラと笑いながらこちらを見ていた。


『……なんだよ(じん)』 

『おいグレイ!この石っころを見てみろよ!滅茶苦茶ウンコみたいな形してるぞ!!!』

『…………』


 少年の手にはグルグルと、とぐろを巻いた茶色い石が力強く握られていた。

 

『……ま、まぁ、確かに見えなくもないな』

『やっぱりそうだよなぁッ!!! 皆も見てくれよッ!!!』


 教室中に女子生徒の悲鳴が響き渡り、少ししてから教師の怒号が響き渡った。


【放課後】


 森林の中に敷かれた石造りで出来た道を一人で黙々と歩いていると、後方から聞きなれた少年の声が聞こえてきた。


『おいグレイ!一緒に遊ぼうぜ!』

『……いや、俺と一緒にいるとお前までハブられるぞ?』

『またそれかよ、別にそれはそれでいいよ! この土地に来たばっかりの時、人間の俺に一番最初に声をかけてくれたのはグレイだったからな!!! 二人ボッチになろうぜ!!!』


 ハハハッと豪快に笑う少年の顔には一切の偽り、陰りが見られなかった。

 恐らくは、打算も何もない本心からの言葉だったのだろう。


『俺と違ってお前は優秀だろ?』

『関係ねーよ! 俺はたまたま剣術が出来たってだけのただのガキだよ』

『近接戦闘における成績上位者が良く言うわ。俺なんかオール底辺だぞ』

『まぁ、俺は蒼風流の後継者だから強くなくちゃ駄目だからな。ってか、ならグレイも剣術やるか?』

『やんねーよ!何で魔術全盛の時代にエルフが剣を振るわなくちゃいけないんだよ』

『でもお前魔術下手くそじゃん』

『ぐっ……』


 ぐうの音も出ない言葉に、ぐうの音が出てしまった。

 

『ほら、この細腕を見てくれ。エルフは人間と違って体が細いんだよ』

『鍛えればいいじゃん』

『剣を使うくらいなら弓を使った方がいいだろ』

『遠距離は基本、魔術による攻撃がメインなんだから弓の居場所はないんじゃね?』

『……それなら近距離も魔術でいいじゃねーか』

『いや、近距離なら純粋な攻撃魔術よりも、魔術で身体強化した剣の方が速い』

『確かに……ってかお前はなんで蒼風流なんて亜流剣術なんてやってんだ? どうせなら主流の轟雷流(ごうらいりゅう)やればいいじゃん』


 刃はゆっくりと宙を見上げる。


『俺の親父がやってたからかな』

『……え、それだけ?』

『そそ。なんかさ、大昔は蒼風流って東大陸だと主流剣術の仲間だったらしいんだよな。でも轟雷流と喧嘩しちまって、それで追放されたらしいんだよ』

『あー派閥争い的なやつか』

『そんな感じだな。それで色々な大陸を移動しつつ、なんやかんやで受け継がれてきたのが今の蒼風流なんだってさ。それを俺の代で絶やすのはなんか嫌じゃん?』

『理由が軽薄だな』


 はっはっはとひとしきり笑うと、黒髪の少年は少し真面目な面持ちでグレイの事を見る。


『まぁ、いつか東大陸最強の剣術に並ぶまで、少しづつでもいいから代ごとに強くしながら何とか繋げていきたいよな』

『ふーん。まぁ頑張れよ』


 そうこうと話しながら歩いていると、辺りが急に暗くなり始めた。


『……え、何?』


 びっくりして刃の方を見ると、どうやら彼も驚いている様子だった。


『か、皆既日食ってやつか?』

『どうだろう……黒い霧っぽいな。とりあえず刃の家に避難しようか』

『そ、そうだな。俺ん家の方が近いしな』


 

 辺りは霧で暗くなったっきり、一向に晴れる様子は見られなかった。

 二人は小走りで刃の家へと向かった。


 刃の家に着くや否や、言葉に言い表せないジメジメとした恐怖感が周囲に漂っていた。

 二人して妙に感じつつも、刃は急いで家の扉に鍵を入れるべく手を伸ばした。

 刃の体が一瞬硬直する。

 そして、ゆっくりとこちらの方を向いて来た。


『……開いてる』

『……閉め忘れたんじゃない? それか外の様子を見る為に一度出て行ったとか』


 家の周りにある木々が怪しく、嘲笑うかのようにガサガサと風に揺れている。


『どうだろ……まぁ、とりあえず中に入ろ――――――』


 扉を少し開け、中に入ろうとする刃の体が再び硬直した。

 

『おい、どうした?』

『……嘘だ』

『ん? 何かあんのか?』


 刃の丁度隣の位置に移動し、中の様子をゆっくりと覗き込む。

 すると、そこには夥しい程の血がまき散らされており、赤々とした血の水溜りが出来ていた。


『……え』


 予想だにしていなかった惨状に言葉を失ってしまった。

 隣で同じように絶句していた刃は震える手で俺の腕を掴む。


『俺は中の様子を見て来る。グレイは助けを呼んできてくれ』

『馬鹿野郎! 今すぐに二人で逃げるんだよ!』

『で、でも父ちゃんと母ちゃんが心配で』

『どちらにせよ子供の俺らが行っても何もできないだろうが』

『……そ、それでも』


 刃は静止を呼びかけるグレイの言葉を振り払い、家の中へと駆け出した。


『お、おいッ!……クソッ!!!』


 後を追うように、グレイもまた家の中に入って行った。


 家の中は外よりも気温が低いのか妙にひんやりとしていた。

 歩くたびに軋む木製の床にビビりつつも、玄関から伸びた血痕の後を追う。


 (……血痕の形状からして、おそらくは玄関で攻撃を受けた後、引きずられるように中に運ばれたんだろう。刃の父親は相当な腕を持った剣士とは聞いてるから、あれは母親の可能性が高いか……クソッ)


 足音を立てずに慎重に廊下の先へと進んでいく。

 しばらく歩くと、血に塗れた襖が一つだけ開いている部屋があるのに気が付いた。


 (血痕はあの襖の先に繋がってるな。……ってかなんだこの生ごみが腐った様な臭いは)


 恐る恐る足を進め、襖の奥へと向かう。

 

 じゅる……じゅるじゅる…………じゅる………………


 薄暗い部屋の中央で、何か液体の様なものを啜る音が聞こえてきた。


『……お、おい。刃? 居るのか?』


 グレイの声に反応するかのように、先ほどまで聞こえていた音がピタリと止んだ。

 そして、薄暗闇の中でソレはゆっくりと立ち上がり、こちらの方を向いた。


『【なんだお前】』


 短い黒髪に自身と同じくらいの背丈のソレは、赤く濁った眼をぎょろりとさせながらグレイを睨む。

 口元からは赤い液体がひたひたと滴り落ちている。


『……刃なのか?』


 信じられない光景に腰を抜かしてしまい、その場で尻もちを着いてしまう。

 その時、床に倒れていた何かと偶然目が合ってしまう。


『……は? 小母さん?』


 (それに……隣に居るのは小父さんか?)


 刃の両親が床にうつ伏せになるように倒れていた。

 そして、その表情からは生気を感じられなかった。


『【あぁ……お前はコイツらの知り合いなのか。残念だがもう皆()()()()ぞ】』

『……冗談だろ? 何言ってんだよ刃―――ッ!!!』


 いつもよりも低く、しゃがれた声で話す友人の言葉の意味が理解できなかった。


『【なんだお前? もしかして悪夢の寄生獣(ナイトメア)を知らないのか?】』

『だからさっきから何を言ってんだよ刃ッ!!! 正気に戻れよッ!!!』

『【はぁ~これだからガキは嫌いなんだよ】』


 そう言うと、刃の姿をしたソレはゆっくりとグレイの周りをグルグルと観察するかのように歩き出す。


『【うーん。このガキと比べるとお前のスペックは低いなぁ~。まぁ、これなら別に乗り換える必要性はないな】』

 

 刃の姿をしたソレは床に落ちていた青白く光る刀を手に取る。

 そして、ゆっくりと腕を持ち上げ、躊躇なくグレイに向かって振り下ろした。


『うわぁぁぁぁぁぁぁッ――――――!!!』


 間一髪のところで身を捻って躱す。


『【あぁ~やっぱりガキの体だと難しいな。まぁ、その分成長性があって大人よりもいいんだけどよ】』 


 ブンブンと無造作に刀を振るいながらグレイの後を追う。

 グレイは死に物狂いでなんとか避け続けていたがついに、部屋の壁際にまで追い詰められてしまった。 


 (ヤバイヤバイヤバいッ!!! このままだと殺される……クソッ、こうなったら前に刃が言ってやつを試すしか……)


『【ぐッ……グフフ……。安心しろよ。殺した後はちゃんと喰ってやるからよォ!!!】』


 歓喜と共に勢いよく刀を縦に振り下ろした。

 しかしその瞬間、グレイは一気に距離を詰め刃の両手を掴む。


『【なッ!!!】』


 ギリギリと骨の軋む音が聞こえ、グレイは自身の腕の筋肉が悲鳴を上げている事に気が付いた。

 そして、それはお相手もまた同様であった。

 一瞬驚いた表情を見せた悪夢の寄生獣(ナイトメア)だが、直ぐ様に自身の方が肉体強度的に有利だと気が付くと、腕に力を入れそのまま押しつぶそうと一歩前に出てきた。


『【オイオイオイッ!!! 腕が悲鳴を上げてるぜガキぃ――――――!!!】』

『頼む……刃……正気に戻ってくれッ!!!』

『【だからよぉ!!! コイツはもう死んでるって言ってんだ――――――】』


 唐突にポタポタと刃の瞳から血の涙が零れ落ちる。

 

『……グレイ』


 か細く、残りの力を絞り出すかのように自身の名前を呼ぶ声が聞こえた。。


『そこに居るのか刃!? まだ、そこに!!!』

『……うっ…………俺を――――――殺してくれ』


 悲しみ、痛み、絶望、無念……その全てをごちゃ混ぜにしたかの様な表情で――――――友は慈悲を乞いていた。

 そして、握っていた刀を放す。

 青白く光る刀はそのままガチャンと音を立て床へと落ちた。


『【このガキぃ!!! まだ意識が残ってたのか……】』

『……なぁ。冥途の土産に一つ教えてくれないか?』

『【あぁ!? なんだてめぇ、その目つきはッ?】』

『お前はどうやってそこで倒れてる人たちを……俺の友達を殺したんだ?』


 悪夢の寄生獣(ナイトメア)はニチャぁと口角を吊り上げながら、愉快に嗤う。


『【クククッ、コイツ等の死に際を思い出したらつい笑えて来ちまったぜッ!!! 俺はよぉ、口から生き物の体に侵入して肉体構造を書き換えて強制的に乗っ取れるんだよなぁ。それでよぉ、最初は犬の姿で近づいて、女を殺し乗っ取って、次にそこの男の体に乗り移ったんだぁぜ~】』


 ケタケタと嗤いながら、床に倒れている刃の父親の方を見る。


『【それでよぉ、このガキも、そこの男と同じように心配した顔で「大丈夫か!?」って言うんだぜぇ~? もう死んでんのによぉ!!! クッ……クククッ――――――!!! 思い出すだけで嗤いが止まんね――――――あれ……】』


 ぎょろりと眼球を動かし、自らの腹部を見る。

 

『【……は? なんで斬られてんだ?】』

 

 ぐちゃッと音を立て、腰から上が床へと落ちる。

 視線の先には、残された下半身と、落ちていた刀を手にしている金髪のエルフの少年の姿が映った。


『……非力な子供の俺でも、初級魔術を組み合わせれば強化されていない肉体を斬る事くらいは出来る』

『【……てめぇ、友人を躊躇いなく斬りやがったなッ!!! 普通は斬れねぇだろ!? 惨めったらしく泣き言を並べながら、俺に殺されてろよ!?――――――グッ……】』


 (クソッ……成長性を考えてガキの体にしちまったせいで、攻撃に反応できなかったのか。クッ……サッサと殺せばよかったじゃねーかッ!!! クソッ!!! 一度捨てた体に戻る事が出来ない以上、このエルフのガキの体を奪うか? いや無理だ、さっき侵入経路を話しちまった……クソクソクソクソクソッ!!!! こうなったら――――――)


『【……この借りは必ず返すぜぇクソガキ】』

  

 刃の口から何やら蛇の様な生き物が勢いよく飛び出てきた。


『オイッ!!! 待ちやがれッ!!!』


 蛇の様な生き物を追いかけるべく刀を捨て襖の方へと向かおうとしたその時、何者かが自身の足首を掴んだ。


『……グレイ』


 下の方を見ると、口から血を垂れ流しながら刃がこちらを見上げていた。


『刃ッ!!!』

『……お前に……頼みたい事がある』

『あぁ、なんでも言ってくれ』


 震える手で刀を掴み、グレイの前に差し出す。


『蒼風流を……頼む』

『それは……。俺は……“出来損ない”のグレイ……だから』

『出来る』


 力強く、そして確かな確信を持って刃は答えた。


『どうして俺に……』

『友達……だから…………。グレイに託したいんだ』

『…………』


 両手で丁寧に刀を受け取る。


『蒼風流の全部は…………俺の部屋……に――――――――――――』

『……おい、待てッ! 逝くなッ!!! また一人ぼっちになっちまうだろうッ!!!』

『……ありが…………と――――――』


 刃はどこか微笑みに似た顔で静かに永遠の眠りについた。


 刃の亡骸を抱きかかえながらなんとか助けを求めるべく玄関へ向かった。

 そして、建物を出たところで、妖精衛兵(ガード)達が到着した。

 外に広がっていた黒い霧は完全になくなっており、何時もの空が広がっていた。


『……助けてください』


 その後、妖精衛兵(ガード)達が建物の中の状態を確認をした後、色々な事を聞かれたり、体の検査を受けたりした。


『こちら妖精衛兵(ガード)悪夢の寄生獣(ナイトメア)の【悪夢の霧】を観測し現場へと向かった所、犠牲者を確認。人間の大人二名、子供一名。軽度の負傷者、エルフの子供一名確認できました。――――――はい了解しました』

 

 妖精衛兵(ガード)の男はグレイの傍に駆け寄る。

 

『……なんでもっと速く来てくれなかったんですか』

『……すまない。【悪夢の霧】の影響で方向感覚が狂わされてしまって直ぐには来れなかった』

『……いえ、すみません。完全に八つ当たりでした』

『彼は君の友人かい?』

『はい』

『……そうか。今はゆっくりと休みなさい。逃げた悪夢の寄生獣(ナイトメア)は我々で必ず見つけ出すから』

『ありがとうございます』

 

 極度の疲労でこと切れそうな意識をなんとか保ちながら、敷地内にある大きな石に腰を掛ける。


『……もうこんな時間か』


 沈みゆく夕日は何処か幻想的で、心なしか悲壮的にも見えた。

 グレイは手に持った血まみれの刀をゆっくりと鞘から引き抜く。

 刀身は青白く光り輝いており、薄暗くなっていく宙を照らした。


(刃……お前の無念は確かに俺が受け継いだ。蒼風流は必ず次に繋ぐ。だから、ひ弱な俺を見守っていてくれ。それと――――――俺の方こそ……こんな俺と出会ってくれて――――――)


『――――――ありがとな』


 少年は今日この瞬間――――――【剣精】と成った。



――――――――――――

 


 見上げた顔を真っすぐとクレアの方へと戻す。

 その瞳には確かな“覚悟”が宿っていた。


 グレイはクレアの前まで来ると、一度立ち止まり頭を下げた。


『先ほどまでの非礼を詫びたい』

『……私は別に謝罪を求めてませんよ』

『これは俺なりのケジメだ』


 踵を返し、再び一定の距離をとる。


『――――――ここからは全力で行かせてもらう』


 持っていた刀を構え、クレアの瞳を真っすぐと見つめる。

 

『申し訳ありませんが――――――背負っているのは貴方だけではありません』



 二人の剣士は、再び相対す。

  


 



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