表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

呑めども尽きぬ

作者: 秀彦

居酒屋でいっぱいやりたくなって書きました、後悔はしていない。

ひょんなことから俺こと、岡崎 涼はここアスガルドなんて呼ばれてる異世界に住むことになった。


別にトラックに轢かれたとか神様の手違いでとかそんなのはなかったがどうやら今日来た客が神様だったらしい。


「ほぅ! お主、これはなんという料理なんじゃ!」

「んー? あぁ、そりゃ肉じゃがだな。今日はいいイモが入ったんでな。気に入ってくれたかい?」


見た目からして外国人だとわかる白髪混じりの爺さんだったんだが、どうやらその人が神様だったらしい。ちなみに俺は今年で35歳になる、話し方は親父譲りだ。


「美味いのぉ…お主。わしの世界に来んか? 同郷もかなりおるぞ?」

「今流行りの異世界ってやつか? なら行ってみてーな。料理しかできねーけどな」


なんて面白半分に答えていた、爺さんが「あいわかった、ならば招かねば」とかなんとか言って、そのままあれよあれよとこの異世界に来ちまったって事だ。


まぁ…俺は所変われど料理ができればいいし親父もそんな感じの人だったからな、後悔とかはない。それに形見の三徳包丁は持ってこれたし。


「どうじゃ? 中々なもんじゃろ?」

「あぁ、本当に異世界なんだな」


板前姿で、手には商売道具の包丁ケース。周りを見渡せばビルとか車とかそんなものはなくて馬車が走ってるし、建物はレンガか木材が主流。それに…ファンタジーな種族がわんさかだ。


「さて…、この世界には魔法なんてものもあるし魔物や魔獣がわんさかある。お主が思い描いておるファンタジーな世界そのまんまじゃ。そこで……お主にはいくつかの能力を与える。何が良い?」

「そんなもん料理ができる能力に決まってら。この歳で冒険だなんだいうほどガキじゃねー。ただ、毒があるかとか料理に使えるかとかあとは地球の食材、調味料が使えなくなるのは痛いな…なんとかなるか?」

「ふむ……料理特化ならいけるかのぅ…。じゃがいいのか? 鑑定のスキルがあれば毒の有無や食用かどうかなど事足りる。じゃが地球産の食材、調味料類となると制約が掛かるぞ? 創造魔法【食】として新しく作らねばならん、割りを食うぞ?」

「構わねーよ、できるなら頼む」

「あいわかった、使い方はすぐにわかるから安心せい」

「すまんな、助かる」


するとすぐに鑑定と創造魔法【食】の使い方がわかった。鑑定は調べることができる、まぁよくある感じだな。だが、創造魔法【食】がちと厄介か?



創造魔法【食】

魔力を消費して地球産の食べ物、飲み物、調味料類を創り出す。ただし、生きた状態では創造不可。



「要するに地球産のもんつかうなら魔力ってやつを払えって事か。こっちで増やしたりは出来ねぇんだな」

「そうじゃな、まぁ転移者や転生者は比較的魔力量が多いからな。そこまで不便にはならんはずじゃ」

「そうか、そりゃ助かる。まぁ、仕込みの量が終わったらおしまいがうちの基本だからな。その場しのぎの料理なんてもんはいけねー」


丹精込めて仕込んだ料理を客に出す、それが親父が口うるさく言っていた言葉だからな。全く…昭和の職人ってのは効率とか理屈じゃねーんだよな。


「そういうもんか? じゃあ次はお主の店じゃな。裏路地にあるこじんまりとしたしたところなら融通できるがどうじゃ?

「店まで貰えんのか?至れり尽くせりで悪いな」

「なに、構わんよ。それではわしはそろそろ行かねばならん」

「おぅ、世話になったな。神さんよ」


神様はそのままどっかに消えていなくなってしまった。さて…これからどうするかな、ついでとばかりに神様から貰った袋には金貨銀貨が入っていた。ざっと見て3,40万ぐらいってところか?


因みに、この世界の金は硬貨のみで単位はゴールド。


鉄貨が1ゴールド

銅貨が10ゴールド

大銅貨が100ゴールド

銀貨が1,000ゴールド

大銀貨が10,000ゴールド

金貨が100,000ゴールド


って感じだ。金貨の上にもいくつかのあるらしいがまぁ、生きてく上で必要な貨幣さえ覚えてればいいだろ。それに一番大事なのはこの世界の相場ってやつだ。安すぎても高すぎてもいけねぇ、俺の場合魔法で食材はどうとでもなるからな。


「っと、いつまでも考えても仕方ねーか。仕事すっか」


俺は手に持ったケースを握りしめるとまずは商人ギルドって呼ばれる組合に足を運んだ。






「いらっしゃいませ、本日のご用件は?」

「わりーな嬢ちゃん、料理人になりてーってか料理で食って生きてぇから来たんだが…登録?しなきゃいけねぇんだろ?」

「嬢ちゃ!? あっ…いえ、新規登録でございますね。ではこちらの用紙にご記入を。代筆は如何なさいます?」

「いらねーよ、こんなもんでいいのか?」


名前、年齢、希望職を書いて提出。それにしてもさっきからこの嬢ちゃん、俺のことチラチラ見てどうしたんだ?


「あの…こちらの年齢なんですが……」

「間違っちゃねーよ」

「でも35って…」

「腕には自信あっからよ、大丈夫だろ」


この時、涼は知らなかった。神様の気遣いで肉体年齢が若返っている事に。なにも知らない人が涼を見たら18歳ぐらいと答えるだろう、実際は20歳まで若返っている。頑張れ、受付嬢!


「……畏まりました、ではこちらで受理させて頂きます。登録料と致しました大銀貨1枚になります」

「はいよ、確か身分証にもなんだろ?」

「はい。紛失時は再発行料がかかりますのでお気をつけください」


そうして俺は何事もなく? 身分証及び、認可証を受け取りそのまま店を出したいと告げる。


「では所場代と致しまして一ヶ月分頂きますが店舗の場所はどちらに?場所や広さによって金額が変わりますよ?」

「そうなのか、爺さんから貰ったところだからあんまり詳しくねぇんだよな、確か裏路地っていってたし今から向かうから下見してくれねぇか?」

「……裏路地で店舗を構えるのはあまりお勧めできませんよ? 立地も人通りも悪いですし」


確かに店構えるなら大通りとかの方がいいんだろうな、でも俺の店はあんまり人数とか相手出来ねぇしするつもりもない。隠れた美味い所ってやつでやってきたしなんとか生活できるだろ。まぁ…どうなるかはわかんねーがいっちょやってみるか。


「はいよ、あとわりーんだがこの辺りで金物屋と木工屋はあるか?皿とか欲しいんだが」

「それでしたら当ギルドで貸し出しがあります、一月銀貨1枚ですが如何なさいます?」

「なら頼む、あとは金物屋だな」


銀貨1枚を払ってその場で食器を借りた、これで必要なのはと調理場の下見か。時間とっていいもんかね?


俺のわがままに付き合って下見に来てくれたギルド嬢のジニー嬢を連れて神様の爺さんに教えてもらった裏路地にあるっていう店に向かう。


大通りから外れてることもあって人足は少ねぇが周りに飲食店といった類もなく、飲み屋や個人経営するには十分な広さの家だった。二階建てで一階は店、2階は居住区って感じか。


「ここだな、なんだ爺さんの奴。色々持ってきてくれてんのかよ。1からスタートって言ってたくせにサービス良いな」


中に入ればここに来る前に俺が開いてた店の設備がそれなりに揃っていた。部屋の広さは違うがテーブルや椅子、あとは調理器具と冷蔵庫云々だな、ありがてぇ。


「随分と良い設備ですね。最新の魔道コンロに冷蔵庫ですか。これならすぐにでも開店できそうですね。この位置なら所場代としては銀貨5枚程度でしょうか?」

「そんなもんか、あとは食材云々のつてがあればいいんだが、オススメはあるか?なるだけ色んなもん扱ってる所がいいんだが」


まぁ、いくら自分で用意できるって言っても限度があるしこの世界のもん使わないと申し訳ねぇからな。それにこの世界の人の口に合うかわかんねぇし。


「それでしたらサトー商会がお勧めですね、様々な食材、調味料を扱ってありますので」


多分転移者か転生者がやってる所だな、日本人がやってる所なら食にうるさいだろうし安心できそうだ。







ってな感じで俺の異世界生活がスタートしたわけだ。そこからはサトー商会の会長さんのサトー・ジョージこと佐藤譲治さんに世話になったりして細々と生活してるのが現状だ。たまに日本人連れてきてくれたりして地元トーク?みたいなのしながらわいわいと飯食わしてるって訳だ。まぁ…初めて来る奴は大体泣きしながら飯食ってるけど。


「大将、やってるかい?」

「ぼちぼちな。今日はどうする?譲治さん」


時刻は夜ってところで俺の店は開店する、たまーに昼間もやってるが大体は夜だな。なにせ1人でやってるし居酒屋みてぇなもんだからな。うちは。


「大将のオススメでいいよ。とりあえず生と冷やしトマトね」

「あいよ」


すっかり常連になってくれてる会長の譲治さんに酒と枝豆を出して適当に調理していく。最初の頃は生ビールとお通しの枝豆を涙流しながら食ってたなそういえば。


「それにしてもいいのかい?大手の会長さんがこんな所で酒飲んでて」

「いやいや、仕事終わりはコレって決めてるから」


枝豆を摘んでキンキンに冷えたビールを流し込み唸る譲治さん、見た目も40代のおっさんだし完全にサラリーマンだなこりゃあ。


「そういうもんか、じゃあお仕事頑張ってる社畜にはサービスだな。譲治さんはこれイケル口かい?」


そう言って取り出したのは串に刺さった鶏肉とネギ達。


「た、大将!いいのか!?めっちゃ食うよ!酔い潰れるまで飲むよ!!」

「いや、潰れんなって。この間連れてきてくれた冒険者の子達がデカい鳥くれてな。コカ何ちゃらって鳥で美味いらしいから暇つぶしで作ってみた。異世界版焼き鳥ってやつだ。塩とタレ、どちらにしやす?」

「タレ!あとビールおかわりで!」


はいよ、と返事すれば炭火で直焼していく。このためにわざわざ金物屋にバーベキューコンロみたいなのを頼んだ。炭は備長炭だぜ。


火にかけて肉が白くなればタレにつけて焼き直す。その時、広くない店内に焼き鳥のいい匂いが充満する。かーっ!タマンねぇなおい!


「たいしょーさん!やってるー?」

「やってるよ、空いてる席にどうぞ」


焼き鳥を焼き始めれば常連と言ってもいいお客さんが入ってくる。それにしても相変わらずすげー格好だな、冒険者っつうのは。


「佐藤さんこんばんは、隣いいですかー?」

「えぇ、構いませんよ。それと安藤さんですか?コカトリス仕留めてきたの」

「うん!たいしょーさんなんでも作れるから焼き鳥も平気かなって!私焼き鳥好きだし!あと生一つ」


はいよー、と先にお通しの枝豆と生ビールをぽんと目の前の安藤さんにご提供。コカ何ちゃらは安藤さんから貰った。すげーデカかったけどやっぱいい鳥なんだろうな。ありがてぇぜ。


そうやって駄弁りながら串をひっくり返して中まで火を通して……いい塩梅で長皿に盛り付けていく。ネギマ、つくね、ハツ、モモ、砂肝、皮、ボンジリの焼き鳥盛り合わせだ。


「譲治さん、お待ち。焼き鳥の盛り合わせです」

「くーっ!大将が来てくれて本当に良かった!コレがあるから日本でも仕事が頑張れたんだ!」

「たいしょーさん!私も盛り合わせ!塩で!」

「はいよ、塩ね」


串をコンロに並べて焼いていき、しばらく火を通した後に軽く塩を振って馴染ませて完成っと。塩の塩梅を見つけるまで結構苦労したぜ。


「お嬢ちゃん、塩焼き鳥の盛り合わせお待ち。お嬢ちゃんのおかげで楽しめたわ。またなんか面白いの取れたらよろしくな」

「んぐんぐ!ん!」


焼き鳥を頬張ってビールで流し込む作業を忙しなくしながら冒険者の嬢ちゃんはグッ!と親指を立てる。


「あっと、譲治さんにお嬢ちゃん。今日の品書き変わってるならな?上から選んでくれよな」


とカウンター上にある品書き板を指差す。そこにはコカ何ちゃらを使ったメニューやレギュラーメニューが並んでいる。


「いやー!こうやってみると昔日本でお世話になってた居酒屋を思い出しますよ!大将!鶏からとハイボール濃いめで!」

「私も鶏からとハイボール!たいしょーさんが来てくれて本当に良かったよー」

「そりゃあ嬉しいね、まぁ料理と酒ぐらいしか出せねぇけどな。あとなんか食いたいもんとかあればリクエスト受け付けてやすよ?本職には及ばないけど色々手出してるからな」


なんて雑談しながら醤油ベースで仕込んである鶏肉を切り分けてあっためてある油に入れる。その瞬間



ジュウウウゥゥ!!



と油の弾ける音が店内に響き渡り油と鶏肉のいい匂いが広がる。


「揚げ物だ!この音が聴きたいんだよねー!」

「えぇ、えぇ!これで明日も頑張れるや大将」


なんて騒いでる2人に笑っていれば店のドアが開いてぞろぞろガチャガチャと物騒なもんぶら下げた御仁が入ってくる。


「タイショー、今日も来たぜ!」

「店主さん、お邪魔しますよ」

「らっしゃい、空いてる席にどうぞ」


俺が世話になってるこの国の騎士様二人組のご来店だ。とは言っても厨房から動けねぇし挨拶も片手間なのはご勘弁だけどな。


「今日はどうしやす?上のメニューからどうぞ。お通しの枝豆も」

「焼き鳥ってのはサトー殿達が食ってるやつか?あとはわからんな、ビールに合うものを頼む!」

「私もそれでお願いします、色々教えてください」

「はいよ、少々お待ちを」


注文を受ければ先にビールを置いて、と。ビールに合うっつったら焼き鳥なんだがそれじゃあ面白くねぇからなぁ。アレにするか。


「っと、鶏からお待ち。譲治さんにハイボール濃いめね」


外はカラッと中はジューシーの鶏からとハイボールを出して冷蔵庫から下味つけた鶏もも肉とネギたっぷりのタレを出して、鶏もも肉を竜田揚げ風にしていく。


「店主さんそれは?サトー殿達とは違うようですが」

「んぁ?あぁ、鶏肉を使ったちょい違う料理だぞ。譲治さんやお嬢ちゃん達のはどっちかといえばハイボールっていうのが合うからなぁ。人それぞれだけど。こっちはさっぱりしててガツンとくるからビールで爽快にしてくれや」


そう言って上がった鶏肉をサクサクと切り分けてネギダレにつけて、染み込ませて終わり!


「お待ちどうさん。コカ何ちゃらの油淋鶏でい」


騎士さん2人の前にそれぞれ置いて手元をささっと片付ける。俺も試しで買ってみたがコカ何ちゃらの肉が美味くてビールがたまらんかった。マジで悪魔的だぜ。


「タイショーさん中華もいけんの!?」

「ある程度はな? でも油淋鶏は鶏からのアレンジみてぇなもんだぞ?」


なんて話していれば初めての料理を食べる決心がついたのかヤンチャ口調の騎士さんが一切れ口に運んだ……と思ったらすかさずビールで流し込んでもう一口…。


「ダリアン、行儀の悪い。それで味は?」

「美味い!ビールに合う!タイショー、ビールおかわり!」

「はいよ、そっちの騎士さんもどうぞ?」


とおかわりのビールを置いて、まだ手をつけてない穏やか口調の騎士さんに油淋鶏を勧める。ここは居酒屋みてぇなもんだから早食い早飲みぐらい構わねぇさ。


「えぇ…では…」


そう言って一切れ口に運んで味を確かめればそのまま上品にビールで流し込んでいた。というか半分ぐらい残ってたビール飲み干してんじゃん。


「ラートム、お前も行儀悪いぞ?一気飲みなんて」

「いえ、半分飲んでいたので一気飲みではないです。店主さん、ビールのおかわりを」

「はい、お待ち」


なんてやいのやいの言いながら2人は油淋鶏でビールをごくごくと飲んでいた。譲治さんやお嬢ちゃんも鶏からでハイボールを飲んでいる。


「たいしょーさん!佐藤さんがレモン掛けてるんだけど!」

「安藤さん、鶏からにはレモンが正義なんですよ」


こっちもこっちで鶏からレモン戦争をおっ始めてるし完全に居酒屋だなこりゃあ。まぁこの雰囲気が親父から引き継いだ店の空気だ。美味い酒とつまみ、メシを食って騒いで楽しんで。


違う世界に来てもこれだけは変えられねぇよな。


大将たいしょーさんはどっち!」

「「ビールおかわり!」」

「うるせぇ!俺は醤油マヨ派だ!おかわりはいよ!」



適当に好きな料理を並べていくスタイル。作り方は適当です!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ