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恋の試練

更新遅れました。すみませんm(__)m

「さあ帰ろう。みんなの元へ。」


殿下にそっと手を引かれ私は歩き出した。


なるほどなるほど。素っ気ないようにエスコートしてくれているが、殿下は思いのほか照れ屋さんらしい。


後ろ髪を見つめると私からの視線を感じたからか耳まで真っ赤である。


確かにパーティーとかではなく、今回は必要に迫られてとかではなく私の手を引いているのだからでしょうか。


少し可愛いではないですか。ウィリアム様。口元が思わずにまにましてしまった。


いけないわ。はしたないわよ。私。いつもの能面顔へ戻るのにそう時間はかからなかった。



*****



帝都まで後わずかといった帰り道。私はマリア様に教えて頂いた縁結びの神をまつる教会へと寄り道をしていた。


そこは思っていたよりも質素なつくりで、いかにも恋愛話大好きなシスターが2人お出迎えをしてくれた。


「ようこそお待ちしておりました。カリン様。」


にこやかな雰囲気に思わず和んだ。その慈しむような優しい笑顔がより一層私の顔をほてらせてしまう。


「どなたとのご縁をお祈りいたしましょうか。もしかしてそちらのお方でいらっしゃいますか。」


「・・・。」


「カリン。私には気を使わないでくれ。もちろん私を選んでくれるととても嬉しい。だからといって・・・。」


殿下の口へ人差し指でそっと触れ、言葉を途切れさせる。


「殿下。私どうやらあなたさまの事が最近とても気になっています。」

「ほ、本当か!? カリン? 聞き間違いではないだろうか。いや。カリンはそんな残酷な冗談は言わない。ということはつまり。」


「左様でございます。恋愛的な意味です。その殿下がこのようなめんどくさい女が嫌じゃなければですが・・・。」


「そんな事思うわけないだろう! 私は約束通り学園が卒業するまで待つつもりだったのに。君からそう言ってもらえるとは!」


大げさにガッツポーズをしてみせた。よっぽど嬉しいのだ。


「殿下。この教会は縁結びの試練を与えてくれるそうです。良かったら・・・。」


「望むところだ! 楽しもうじゃないか。ハッハッハ!」


こんな感じでめんどくさい2人だからこそお似合いなのかもしれないです。


私は足元の小石を軽く蹴飛ばした。トントントンッ。思ったよりも遠くに飛び、草むらに突き刺さった。



*****


シスターに案内され、教会から1㎞ほど離れたところの泉に着いた。今歩いたのが千歩。何か会った時には責任をもって殿下を担いで帰らねば!


決意と共に瞳に炎が燃え上がった。何で不思議な顔してるのかしら。殿下!?


「それではこれから試練を受けて頂きますね。止めるなら今が最後のチャンスです。」


シスターの厳しい視線が突き刺さる。


「私たちは挑戦します!」

「その通りである!」


止めときゃいいなのなあ。そうシスターは一人思った。どうしてって。試練を突破したからって得られるものは栄誉だけなのだ。


それだけでは飯も食えたもんじゃない。まあ、所詮は王室育ちの甘ちゃんどもよね!? そう思っちゃたのは内緒だ。


2人をおいて黙って立ち去った。


湖畔の水音がパシャンと跳ねる。月明かりに魚影が照らし出された。


伝承通りなら・・・。悪役令嬢がかすかに微笑んだ。


「殿下ここの湖にはですね。昔恋人に裏切られ入水した女の亡霊が出て来るそうです。そして男性を誘惑し、死に至らしめるとか・・・。そこに恋人がいたら本当の絆を試されるそうなんです。」


月明かりがカリンのギラギラした目を際立たせる。


ゴクリ。そうなのか。私はどうやら命を懸けなばならないらしい。


とたんに心音が上がって行くのを感じた。


よし。心してかからねば。ここにはカリンがいて。私がいる。


怖いものなどないのだ・・・!? 鼓膜が震え、視界がぐらついてきた。


何かが側にいる。どこだ!? 近づいてくる気配さえ感じられなかった。


側を見るとカリンがいなくなっている。


彼女がこのような不覚をとるとは考えにくい。となるとこれは幻覚だ。


私はここにいる! いつでもかかって来るが良い! 身構え辺りを警戒してまわる。


湖の対岸から淡い光が近づいてくる。あれは何だ!?


水面をまるで神々のような神々しい光に包まれたのその存在は、私を威圧してきた。


これは敵意!? いや違う・・・。


その顔はまるで天使のように微笑む・・・。カリンだった。


姿を次々と変え私を誘惑してくる。あまりの際どい恰好(私好み)や産まれたままの無垢な姿まで。


頭の中に問いかけて来る。あなたは私を選びますか。


お願いです。私は一人で凄く寂しい。だから・・・、構って下さい。


あなたの望みは何でも、叶えて差し上げてもよろしくてよ。カリンが私の愛しい人が今まで見せたことのないような妖艶な笑みで・・・。


私を水の底へと誘いこむ。


君はこんなにも美しい・・・。ふと差し出される光の手を握りしめる衝動がよぎる。


カリンはこんな事をしない。分かっている。彼女がするのは。あれ。私は何を迷う?


こんなにも美しい・・・。それが邪悪なはずがないではないのか? 


何かが私の行動を妨げている。


もし、私が今自身の欲望のまま行動してしまったなら。誰かが悲しむ。


誰か・・・。私の良く知るカリンの控えめな微笑みが私を支配した。


そうだ。私がいつでも好きなのは・・・。自身の欲望を映したこの幻ではない。


それはきっと私が想像できない温かさで私を包み込んでくれるだろう。


カリン君はいつも私の考えが及ばないのだから。


私は輝く幻のカリンに別れを告げた。


いつか。本物の君に・・・。会える事を信じている。それまではおあずけだな。


突如足が地面についている感覚が戻り始めた。


隣をみるとカリンがさも余裕そうな顔で私を待ってくれていた。


「君も見たのか? 私だったら嬉しいのだが。」

「そ、そんな事言わせないで・・・。殿下は意地悪です・・・。」


顔を一気に真っ赤にしたカリンが大胆に私の胸に顔をうずめてきた。


予想外の接触に私の理性ははじけ飛びそうになった。危ない。なんとか一国の王子のプライドをもって正気を保った。


これだからカリンは・・・。油断も隙もあったもんじゃあない。


優しくそっと彼女の背を包み込んだ。


満天の星空が2人を淡いひと時へといざなっていた。



























甘酸っぱい雰囲気に仕上がってたらいいなあ。

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