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寒地の危機

ホラー展開始めるよ♪ いえ~い!?

世に言う名君とは如何にして育ったのだろうか。


英才教育のたまものか。はたや試練に次ぐ試練により、才覚が研ぎ澄まされていったのか。


まだ未熟な私には分からない。ウィリアムは夜の帝王学の講義を受けながら思う。


私もいずれは良き君主になり、カリンが安心して暮らせる国を造りたい。


そう思いいつもの通り修練に励んでいたのだが。


コンコンコンッ。


「お忙しいところ失礼いたします。殿下。」

「良い。如何した。」


「実は陛下からの至急の呼び出しでございまして。」

「この早馬は我が弟にも向かわせているのだな!?」


「おっしゃる通りでございます。」

「分かった直ぐに向かう。」


心に秘めた深いため息をつく。


我が弟はこれまで学園内での接触は一度たりともない。


これまでの人生の中で一度たりとも関わった事がないのだ。それは当然で。


私の失脚を心待ちにしているという噂は聞く。


フフフ。ハハハハハ! 私がそんな失態を犯すとでも!?


たとえ評価を下げたならまた上げれば良いだけだ。私にはその力がある。カリンの側にたてるよう努力し続けているからなあ!


しかしそれはそれ。今回のことも試練の一つだ。


昨日のうちに取り寄せていた資料に目を通す。


ふむ。今年はこんなにも被害が出ているのだな。


だが現状はこの報告書よりも酷い可能性もある。


そのための今回の視察の任務である。私は気合を入れ拳を強く握った。爪が食い込み血がにじむ。


やがて雪景色は近づいてくる。寒波を肌で感じ取り、私は震える。


飛龍の背中を上空の極寒の空気がなでつける。そうだたしかこの辺りには村があったはず。指示を出し、着陸を試みる。


このあたりだと地盤も安定していそうだ。


村長とこの辺りの有識者たちと今後の対策を練らねば。


扉の向こうの小さな魔力が一つまたひとつと消えていく。


昔から生き物の魔力を感じることができるのが私の唯一の特技である。


だがこの惨状も国家にとっての地獄の序章でしかなかったのだ。


本当の苦しみはまだ始まったばかりであった。ここからはウィリアム殿下の地獄の物語である。


{明朝シラカバの森の小屋にてお待ちしております。}


手に握りしめた手紙を開いてみた。


なるほど。事務的な事(?)でカリンに呼び出された手紙。そっと胸ポケットへとしまった。


これは何となくだが嬉しい。つまりはだ。あのカリンが私に個人的なお話しがあるという事だ。


ウキウキしながら雪景色を踏みしめ、先へと急いだ。ザクザクと私と側近たちの足音が周囲に響き渡る。


こんな寒い日には小動物の動きも少ない。


白い銀世界をカリン君に会いに行く。


目的地にはなかなかたどり着かない。周囲の真っ白な雪のカーテンが距離感を打ち消してきている。


村長のあいさつはカリン君の無事な姿を確認するまではとても冷静にはできないだろう。


きっと君はお供も側に置くことなく、一人待っているに違いない。


物音が一つもしない。休憩中なのか!?


コンコンコンッ。扉をノックしてみたが返事がない。


「カリン、そこにいるのか!? 入るぞ!?」


扉を開けると、刺すような殺気で貫かれ、体がこわばってしまった。


「カ、カリン!? いや。お前は誰だ?」


そこにはお互いにナイフを突き立てあい、抑え込みあっている2つの影があった。


私の知る限り、カリンはこの世界にただ一人のはずだ。


だがそこにはうり2つの顔があった。


「で、殿下離れていてください!」

「直ぐに終わらせますので!」


お互いに殺し合いを強行する。


その瞳には憎き自分自身の顔を映して。カリンは顔を酷く歪めていた。


なんとしても目前の相手を葬り去るための決意が漂ってくる。


少なくとも、あと数秒のうちにどちらかが命を落とすのだけは明らかで。


「その手をおろしてくれ。頼む。」


冷静に説得を試みることにした。本物のカリンならきっと聞く耳をもってくれるはずなのだ。


偽物もその言葉に従わなければ正体がばれてしまうので命令を受け入れた。


「少し話をしようか。」


先ずは将来の為政者らしく、場を作り上げていく。


ここで一番避けたいのは・・・。カリンが死んでしまう事だ。


「殿下に過去の思い出話の真偽を確かめてもらって白黒つけましょう!」

「いえ。それだと事前情報だけで事足りてしまいます!」


「フフフ。流石私の偽物だけありますね。」

「こっちのセリフですわ。フフフ。」


「なら代わりに代案でも思いつくかしら?」

「そうね。やはりここは拳で・・・。」


さっと双方身を構え直した。


「わ、分かった。何があっのかだけでも話してくれないだろうか。」


腕力で解決を目指そうとする2人を身を挺して引き留める。


「ここで、殿下をお待ちしておりましたの。」

「鏡の前で身なりを整えなおしていたのですが・・・。」


「突然鏡の中から人の手が出てきて、この方が出てきて首を絞めにかかってきましたの。」

「小癪にもこの方も私と同じ護身用のナイフを持ち歩ていましたので、一撃をいれることが出来ず・・・。」


「本当に忌々しい・・・。」

「あなたこそ!」


「一つ・・・。確認だ。今ここで一番優先するべきなのは!?」


「ええ。仕方がないです。一時休戦と行きましょう。」

「分かりました。今もたくさんの方が命を落としているのです。今は目をつぶるしかなさそうですね。」


全く同じ顔が頷きあった。何が起きているかも精霊のシーレ様は知らずに眠っていた。


















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