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疑惑の瞳

更新遅くなりました。m(__)m 仕事が忙しくなり、水もしくは木に更新になりそうです。

世界には不思議な瞳を持った人がいる。


この帝国でいうと、カリンさまだ。あの特徴的なグルグル目・・・。あれは特殊メイクだという。


そしてこの隣にいて私の顔をさも面白そうにニコニコと見つめて来ているのが私の婚約者ジョバンニである。


出会った頃は普通だった。


でも最近では・・・。一人称はボクになってしまった。


以前は私には目もくれなかったのに、今では私の方を見てたまに拝んだりしている。


何故だろう。その特殊な紫の星目に何を映しているのだ?


ま、まあ良い。


隣の席の彼女はいつもおかしなことを考えているに違いない。


だがそんな彼女に私はとても興味がある。


窓際に降り注ぐ昼時の温かな春風が彼女の美しい髪を震わす。


ジョバンニ今晩も君の部屋に遊びに行こう。


といっても君は私のことを男と見ていない気がする。


そこは複雑なとこではあるが・・・。



*****


そんな甘いひと時を過ごしていた。


だが、私の学生時代の楽しめる期間はあまりに短い。


一日一日を大事に・・・。


私は・・・。


今晩も闇に乗じて魔物を狩り生き血をすする。


いつかは、彼女に打ち明けたいそう思ってはいるのだが・・・。


人には生きるために必要な事がある。


例え理解者が得られなくても。不可思議な能力の代償は負わねばならないのだ。


私の一族はその昔・・・。月の裏側から来た御方を王室へ迎え入れた。


その先祖の血を直系で引き継ぐ私もまた・・・。化け物の一人だ。


世間ではひ弱そうな軟弱ものと言われている。


だが実際は血塗られた化け物なのだ。


そのことはまだ誰にも気づかれていない。


だが、人々は薄々本能で感じているようだ。何かがおかしいということに。


それなのに君は今日も笑って私を出迎えてくれる。


私について何も知らないからか。何故か懐いてくれている。まるで小さな幼子のように。


あの日は危なかった。つい帝国の庭園で変化術を使ってしまったのだ。幸い目撃されることはなく事なきを得た。ちなみに私は化身の術式”蝶時雨”(雨のように姿は溶け私の姿は蝶へと変わる。)と使えるのだ。


そうした特殊能力を身体の中に封じ込めるために魔物の血が必要なのだ。


それもとびっきり新鮮な鮮血を・・・。


今晩も君の部屋へお邪魔させてもらおう。


蝶へと姿を変え学校の女子寮へと夜空を駆ける。


「こんばんは。ジョバンニ。」

「来てくれたんですね! お待ちしてましたよ~!」


彼女は今日も笑顔で歓迎してくれる。


特に用事があるわけでもなく。


「美味しいおかしがあるんですよ! ボクのとびっきりおすすめのやつが!」


言葉使いはあれだが・・・。この可愛らしさの前には些事に過ぎないだろう。


「そうですか。では私がお茶を煎れましょう。」

「殿下はお客様ですから! おもてなしはボクに任せて下さい!」


ちょっと怒られ睨まれるもののすぐにいつもの君の屈託のない笑顔に戻る。


そんな平和な日常が続くと信じていた。


な、なのに。私に淑女のドレスをおすすめしてくるんだが・・・。


私は・・・。私の婚約者は変態だったのかもしれない。


「男の私が女装など・・・。君は頭が・・・。」

「おしゃれに男女関係ありませんよ! ボクの望みは男女が着れるペアルックを作ること!」


「なるほど。」

「それにパピリオさまの魅力を生かしたいのです!」


「2人だけの秘密にしますからね。お願いしますよ! 一生のお願いです!」


こんなアホなことに何で一生のお願いをされているのだ私は・・・。


あなたとは結婚したくありません。一生のお願いです。分かれて下さい。とでも言われたら、婚約者探してがさらにめんどうだ。


私の婚約者になってくれるのはこの変わったご令嬢、ジョバンニくらいだろう。


気づけば私は彼女のされるがままになり、ドレスアップをされていた。


鏡に映る自分の姿はまるで別人のように輝いていた。


でも私だ。これで満足だろうか。いやもうする気はないからな。


一生のお願いを消化させたのはでかいのだ。


お、おい。なんだそのキラキラした目は!? ジョバンニ?


仕方がない。たまになら付き合ってやろう。


私の妹の恥じらいの天使さを模倣してみる。


「は、恥ずかしいよ。こっち見ないでください。」


スッと手で顔を隠し悪ノリをしてみる。


ジョバンニが泣き出した。


何でだ!? 泣く要素がどこにあった!?


私は慌ててジョバンニの頭をなでなでした。これで私と同じ年だと? 何かの間違いなくらい可愛い。


「ジョバンニ。君の一生のお願いとやらをやってみたのに。何故だ!?」

「パピリオさま。優しくしないで下さい。ボクが悪かったです。もう罪悪感が・・・。めっちゃ尊かったです。ありがとう。じゃなくて、ごめんなさーい!」


どうやら感極まって泣いているらしい。


そこまで言うのなら、たまに、いや時々この特殊な趣味にお付き合いしても良いのかもしれない。


婚約者のこんなにも可愛い仕草が見れるのだ。


安い買い物である。


思わず吹き出してしまった。


「ジョバンニ、君は変わっているよ。」

「殿下が優しすぎるから、ちょっとわがまま言ってしまうだけですよ。」


「ただ私も男だ。むやみやたらに部屋へ上がらせるのは・・・。」


ちょっと意地悪したくなり、ウインクをする。


「むしろ、望むところです!」


フンスとばかりに胸を張った返事を頂いた。


「それでは。」

「ええ。」


カーテンに身を隠し夜空へ舞い上がった。


向こう側に穏やかに手を振る彼女の影があった。














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