各国の集い
悪役令嬢が一人なんて、ただの先入観! そういった話です。
case1
広場の大きな鐘の音が鳴り響く。
オレンジ色の街並みを見渡しながら、私は優雅な仕草で窓を乗り出す。
うん。私が悪役令嬢なんて今さら笑えるんですけど。
だって。私の記憶は1年前までの記憶は、港区住みのちょっとイケてる花のJK。
なんで私がこんな乙女ゲームなんかの世界で、こいつの人生をしょって生きて行かねばならないのよ。
ああ。もう。腹が立つ。
だって。私の今の姿は銀髪ストレートに赤い目をした絶世の美女なのだ。
私はこの国に転生してきた時の記憶を1年ほど前に思い出した。
今の名前はシャーロット・ノヴァスコスキー。乙女ゲームの悪役令嬢役だ。
今日から私は各国の情勢の為、国際交流をかねて帝国へ我が国の王子とともに国際留学しに行くことになったのだ。
やっとちぐはぐな記憶を取り繕いながらも必死になれた学校や両親、友人などの人間関係を切り捨て、私は更なる地獄へと送り出されているのだ。
これ以上は私のコミュ力をもってしてもキツイってば! そりゃあ無理をすれば何とかできるかもしれないけれど。
乙女ゲームのご都合設定というか、シャーロットの頭脳は優秀なの。本当にムカつく。
でも、私がまだ悪役令嬢を続けている原因は彼女にある。
私は記憶が曖昧になった時、彼女の日記を読んだのだ。
そこには彼女の苦悩と重圧に耐え続け、なお懸命に生きようともがいている記録がつづられていた。
何なの!? 私と同じ年頃なのに。彼女は自分の人生と戦っていて。
それでいて他者への心遣いを持ち続けられたというの?
そんなの。そんなのって・・・。カッコいいじゃん!?
私があなたの代わりを務まるとは到底思えないけれど。
せめて、あなたの見たかった景色を見させてあげたい。私は思いがけない気持ちに駆られていた。
彼女には幸せになって欲しい。というか、私の今の人生が彼女だ。恐らく前世の記憶が盛り上がってきていて、感情の起伏が見られているのだろう。
その証拠に、前世の私なら、とっくに投げ出していたであろう現実をこんなに冷静な視点で達観出来ている。
「お嬢さま、お行儀が悪いですわ~!」
「ひゃほ~! やっと息苦しい我が家から抜け出せた~!」
うん。なんか無理じゃんね。真面目に考えても良いけど、やっぱあたしにはこんくらいがちょうど良いのかも。
あたしは帝国への道中を遊びつくすことにした。
あの。クソ王子めええええ! 誰が、君には魅力を感じない、だよ!? すました顔しやがって気に食わない!
フフフフ。あたしだって追放された後のことくらい考えているわ。
スイーツ女子であるこのあたしはとあるパン屋に週一で見習いをさせて頂いていた。
そこの店長には、なかなか筋が良いと褒められ、いつでも雇ってあげると言われている。
平民の中でもパン屋はなかなかに良い就職先だ。労働時間こそ長めだが、食べるのに困らないし、何よりやりがいを感じる。
一番のメリットと言えば、煩わしい貴族社会からトンズラ出来ることだけだ。
シャーロットには悪いけれど、私は追放されるまでしか公爵令嬢を頑張れる気がしない。
なによりあの窮屈なコルセットときたら。今も付けているのが嫌でしょうがない。
美味しいものいっぱい食べたいじゃん? 人生はいつでもナウっしょ! 楽しんで生きたいわ~。
ダイエットならやるけども。求められているウエストの細さが論外なのよ。
ああ。早く追放してくれないかな~。あの王子意地は悪いけれど、国外までは追い出す気がしないんだよ。
国内ならあのパン屋で働けば良いし。将来は安泰な気がするわ。
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case2
突然悪役令嬢に転生してしまったらどうだろうか?
気づけば、僕は乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたのです。
いつも、教室のはじっこにいても、同級生に可愛いといじられていたそんな僕ですが・・・。
ある日突然起きた時に、本物の胸のふくらみがありました。
いえ。これは結構大きいのかな。良く分からないけれど。
どうやら僕は女の人になってしまったらしいのです。
そんな。どうせなら攻略対象のイケメンになりたかった。前世も女顔でからかわれて嫌だったのに。
とうとう本物のキレイなお姉さんになってしまった。
神様は残酷です。僕だってカッコ良くなりたかった!
乙女ゲームと言えば、攻略対象の方はイケメンだそうですね。いいなあ。
この場合はTS悪役令嬢とでもいうのでしょうか・・・。
そんな感じでお見合い(?)いったんですけど。なんか・・・。そう。
王子が可愛かったのです。いや。男の人がですよ?
こ、これは男の娘ってやつなのでは? ドレスきさせたら、ときめいちゃうと思うんです。
そんな感じで、彼と結婚するのなら。むしろちょっと嬉しいような?
だってこんなに美人なお嫁さん(お婿さん)ってふつう婚約出来ないですよ?
そんな感じでこんな僕ですが、悪役令嬢始めました。
昔、お姉ちゃんたちの尻に敷かれていたのが生きてきたとは思いたくはないですけど。
ちょっとだけ感謝とかしているかもです。
先日ですね。お父様から隣国へ海外留学行くようにとお話しがありました。
どう思ったかって? もともと海外に行くのを憧れていたので、ふつうに嬉しかった!
明日はこの国の王子と婚約者になる予定(?)の公爵令嬢と、隣の王国の公爵令嬢とお話しする機会があるらしい。
中が男だと・・・。気持ち悪がられたりしないかな?
それだけが怖いなあ。ボクのことはどうだって良いけど。
あの可愛らしい王子も同伴なんだ。彼女を泣かしちゃ男が廃ると思うんだ!
怖いなあ。明日が・・・。悪役令嬢ってどうしたらなれるのかも良く分かんない。




