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静寂の教室

本当にグロ展開が続きます。耐性のある方だけお読み下さい。

いつもと変わらぬ教室。


だが、見かけは一緒だが、問題がないとは限らない。


悪役令嬢が何たるかようやく把握できた私。


その足取りはいつにもまして重かった。


ああ。あれがお前の友達かあ~? クフフフ。出来るだけ痛めつけてやらねえとなあ。


おお。良い絶望感だ。もっと絶望しろ。クフフフフフフフ。


「カリンお嬢さま、今日はなんだか・・・。」

「ごめんなさい。」


背を向け走りだし自分の席へと急ぐ。私はみんなから離れなければ。誰かを傷つけられてしまう。


な、何もしていないでしょうね!?


んんん!? なんだ周りの赤の他人の心配かあ? クフフフフ。


良いだろう。ヒロイン(?)って言うんだっけなあ。


あいつに嫌がらせを今日からはじめるとするかあ。


先ずは親から買ってもらい、痛くお気に入りのドレスを汚さねえとなあwww


おい。カリン。


・・・。


よし。そっちがその気なら、お前を慕っている御者を殺さないとなあ。


おれが甘いと思っているのなら、先に見せしめに殺してやっても良いんだぜ!?


さあ、どうする? 選ばせてやろうか? クフフフフ!


言いつけに従いますので、彼だけは!


ああ。そうかよ!? クフフフフ。愉快だなあ?


良いか? おれの指示に従え。


先ずは材料の入手だなあ。


この時、私は思っていた。衣服を汚すくらいなら、まだ安心できる方だと。


良いかあ? おれはなあ。おれの悪事を全てお前に被せる予定だからなあ。


お前はそこにいるだけで良いんだぜ!? もちろんお前の身体を操ってやらせても良いんだがなあ。


おれさまはそれだと不満なんだよなあ。何も悪事を働いていないのに、苦しむお前の姿も見たいしなあ!


おっと。何をする気だ? お前は自分の教室に行くんじゃねえよ。


そうだなあ。先ずはマリアとやらを呼び出さないとなあ。


な、何をする気ですか・・・。


おっと。それ以上の余計な発言は許可しない。そうだなあ。御者のあいつやメイドのあいつらがどうなっても良いっていうならなあ!


クフフフフフフ。


この男の言いなりになりたくない。だからといって、大切な人たちを傷つけたくない。


それより、こいつの言いなりにならねば事態はもっと悪化するはずだ。


何度も蘇る。あの時、シーレさまが言っていた言葉を・・・。おれはお前が死んでも泣かねえよ。


つまりは私はこいつに捕まった時点で死ぬ運命は変えられないのかもしれない。


それでも、抗い続ける。無力なのは重々承知だ。


だが、こいつは舐めすぎだ・・・。死ぬ気で成し遂げようとする人間の愚かさを・・・。


人は死地に追い込まれた時に、まれに自分のからを破る場合がある。それは覚醒ともいうが・・・。


現実はそんなに大して変わりはしない。ただ、執念が彩られていくだけだ。


いつか、そう。いつか、こいつを刺し違えてでも殺してやる。シーレさまの敵、そしてこれから失うであろう、みんなが私を信頼する心を踏みにじる、悪行の数々。


例えこの世界の何処へ逃げようとも、息の音をとめてやる。この私の苦痛や痛みをこいつに刻み付けて。


そして私は穏やかな笑顔を振る舞う。


「了解しましたわ。ダークマター様。私はあなた喜んで従います。」


クフフ。やっと悪女らしい顔をしてきたなあ。お前、心が壊れたか。そろそろだとは思っていたぜ。


毎晩、毎時間、お前の家族や大切な人々の死に顔を脳内に流し続けたかいがあったなあ。


我ながら良い仕事っぷりってもんだ。クフフフフフフ!


脳内でこいつが嘲け笑う。


「あの。マリアさま。今日の放課後お時間よろしいかしら。」

「ええ。ところで、カリンさま、あの後のお話は・・・。」


「ええ。あなたがお聞きしている通りですわ。では18時、裏庭の細道でお待ちしておりますわ。」

「あ、あの・・・」


「これで失礼しますわ」


何か他にも言いたい事がありそうだったが、これ以上こいつを側マリア嬢の隣にいさせては危険すぎる。


私は急いでマリア嬢の下から走り去った。


その後の授業は何をやっていたか定かではない。


せめてもの救いは私は教育熱心な両親がらの英才教育を受けていたので、学業はまだ余裕はあることだろうか。


時計が刻まれていく。


「それでは今日の授業はここまで。」


扉を開けて外へ飛び出す。校舎の影を通り抜け、目的地へと急いだ。


今から何が起こるのだろう。誰も傷つけたくない。誰も死なせたくない。


目に血管が浮かび上がり、充血し、心臓が喉から綻びそうになる。


気持ち悪い。腹立たしい。今すぐに殺してやりたい。


私には無理だ・・・。もはや何もかも投げ出し逃げ出したい。


現状を変えようと解決策を脳の底から絞り出そうとする。


ない。ないのだ。そして、行き着く。私の未来は絶望だ・・・。だが。


シーレさまが私に何かヒントを残してくれたかもしれない。


しかし・・・。その可能性は・・・。


やはり自力で・・・。


「そのう。用事とお伺いいたしましたが・・・。以下がしましたか?」


後ろを振り返ると、何も知らないあどけない笑みを浮かべたマリア嬢がいた。


今から心を鬼にする。あなたは今からひどい目にあう。でもそれは私が側にいなくてもこの悪魔が起こすだろう。なら、私があなたの盾になる。


悪魔・・・。フフフ。あなたは愚かだわ。だって。乙女ゲームは悪役令嬢が先に死んだなら、物語が終わってしまうもの。


あなたの悪行は私の日常をまるで悲劇を楽しむための行動のように思えるのよ。


なら、私が退場したら困るのは誰かしら? フフフ。私はシルクフット公爵家令嬢、カリンよ。悪魔風情が頭が高い。


今に見下ろしているその場所から引きずり降ろして見せるわ!


「キャハハハハハハ!」六道目が怪しく輝く。


甲高い私の笑い声が響き渡った。


「あ、あのう。カリンさま?」

「あら。失礼。ちょっとゆっくりお話し出来ないかと思いまして。」


上を見やる。なるほどこれね。


私は迷わずマリン嬢の上に覆いかぶさる。ズドドドと凄い音をたて、何かが大量に降って来た。


ベチャッベチャッ。


たくさんの肉片が髪やドレスに纏わりつく。


否。これはただの肉片ではない。ネズミのはらわただ。


とんでもない悪臭が放たれる。


「え、そんな!? カリンさま!」

「けがはないかしら?」


チッ。余計な事を・・・。悪魔が悔しがる。


あなたの好きにはさせないわ。


「た、助けて頂き・・・。ありがとうございます。」


可愛いらしい笑顔で、私の汚れた手を握ってきた。


彼女は愛らしい。きっと世界中の誰からも好かれる運命だろう。そう、あの殿下にとっても。


私はこの先みんなの幸せの輪の中に入れないだろう。


この程度で済んで良かったと微笑み返した。






























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