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第96話 生存者捜索開始 ー長尾栞編ー

そんな出来事があって数日後のことだった。


私達は全員で生存者を探しにホテルを出た。


今日は遠征をしようと決めた日。拠点のホテルからだいぶ離れたところまでやって来たのだった。


あれから約1年が過ぎようとしているため・・もしかすると生存者は絶望的かもしれない。


しかし、華絵先生が言うには遠藤さんと同じタイプの細胞を持つ人がいる可能性もあるという。


それ以外にもいろんな可能性は残っているとの事だった。


例えば郊外のシェルターなどだ。シェルター内で生き残っている可能性も考えられるが、その場合は私たちの声掛けには気が付かないだろう。


「誰か・・このあたりで生存者はおりますか!救出しにきました!」


「皆さん、安心して外に出てきてください!助けにきました!」


「安全な住み家と食料、そしてエネルギーも確保しております。」


マイクロバスの窓から、あずさ先生と愛奈さんと翼さんが拡声器を使って声をかけていた。


今までと違いゾンビのリスクが低いと判断して、拡声器をもって大きい音であたりを探しているが、人が出てくる気配は感じられなかった。


「やはり・・いないようですね。」


「すぐに身動きが出来ないのかもしれません。」


私が聞くと遠藤さんが答える。


「やはり家に入らないとダメでしょうか?」


奈美恵さんが言うと皆が・・少し黙ってしまった。


「やはり・・そうかもしれないわね。」


華江先生が頷いた。


そう。やはり建物に入るのはみんな怖かった。


遠藤さんから離れずにいたとしても急な変異がないとは限らない。


今までは無かったけど今日はゾンビに襲われるかもしれない。常に恐怖が付きまとっているのだった。


「やはりこの街も広いですからね。入らないと見つけられない可能性もありますよね。」


「そうよね。外で声がけをしたところで怖がって出てこない可能性だってあるわ。」


私たちには警察官や消防隊員の様に動くことは出来ない。


いままでこちら側から救出するために建物の中を探し回る事はしたことはなかった。


それにはリスクと恐怖が伴ったからだ。


しかしながら私たちは、前々から住居内に侵入する事も検討していたのだった。


「前々から言っていた事ですし、俺が先に入って確認をしていきますので!」


そう遠藤さんが言うが、みんなは外で待つのも怖いのだった。


「なるべくあなたと一緒に動いた方が安心できるわ。」


あずさ先生が言う。


「それなら一緒に動きましょう。1軒1軒調べるのは骨が折れますが・・」


「あ、あの手分けするのは怖いです。」


あゆみちゃんも言う。


私もそう。みんな同じ気持ちのようだ。


「わかりました。ではどこから行きましょう?」


「1軒家の方が侵入しやすいと思うわ。」


「では・・いきましょう。」


住宅街にマイクロバスを停めて家の門をくぐる。


13人がぞろぞろと家に入るので狭いが仕方がない。


遠藤さんは玄関に近づいてインターフォンを押す。


ピンポーン


・・・・・


とくに返事はなかった。


「じゃあ入りますよ。」


ガン!


ドアを引くが開かなかった。


「ちょっと庭の方にまわって見ましょう。」


窓の方に行くがカーテンが締まっていて中が分からない。


コンコン!


ノックしてみるが何も動かない。


「誰かいますかー?」


拡声器で中に声をかけてみる。


・・・・・・・・・


やはり音沙汰はなかった。


「ガラスを割ってみますか。」


「もし中にいたら・・。」


「助けるために来たんです。連れていきましょう。」


「わかったわ。」


遠藤さんと華江先生が話して決める。


遠藤さんがブロックを持ち上げてガラスに向けて頬り投げた。


ガシャーン!


ガラスが割れた。


遠藤さんが中に手を入れて鍵を空けた。


「切らないように気を付けて。」


「はい・・」


そして窓を開けて土足のまま中に入っていく。


リビングからキッチンやお風呂やトイレまで見てみるが誰もいなかった。


どうやらここはファミリーで住んでいる家のようだ。家の中に荒れた様子はなかった。


「二階に行って見ますか・・」


「はい。」


皆で家の中を探し、遠藤さんと私と里奈ちゃん、沙織さんとあずさ先生の順番で2階に上がっていく。


新しい家の匂いがする。


二階には子供部屋と寝室があったが・・誰もいなかった。


小学生の部屋のようでランドセルが置いてあった。


「この子たちはどこにいったんでしょうか・・」


「親と一緒に逃げたのかもしれない。」


「そうかもしれませんね・・」


結局この家に人はいなかった。


食料も食べつくされており、おそらく食料をとりに外に出かけたのだと思う。


「一戸建てを探していくのは大変ですよね。」


「でも、マンションは中に入れない可能性が高いと思うわ。せいぜいベランダを越えて1階部分のガラスを割って入るくらいしかできない。」


「やはり外から声をかけた段階で、人がいれば出てくるのではないでしょうか?」


「そうよね。切羽詰まっているだろうから聞きつければ出てくるはずだわ。」


私が言うと、愛奈さんと麻衣さん華江先生が言う。


皆がリビングで次の行動をどうしようか考えていた。


「じゃあこの町内を10軒だけ、10軒調べて何もなければ帰りましょう。」


遠藤さんが言う。


「そうしましょう。生存者を探す行為として検証する為にも必要な事ね。」


華江先生がいう。


そして私たちはそのあと3軒回ってみたが誰もいなかった。


「やはりいませんね。」


どの家にも生存者やゾンビの形跡すらなかった。


食料が空になっており外に食料品を回収しにいって帰ってこれなくなったのかもしれない。


最初にまわり始めて5軒目のガラスを割る。


ガシャーン


窓が割れると軽く異臭がした。


「何か臭いがします!」


「何かがあるのかもしれないわ・・」


「じゃあ俺が先に入ってみますから皆さんついてきてください。」


「はい・・」


5軒目の家で私たちは衝撃を受けることになるのだった。


悲しい事実を。

次話:第97話 3人の母娘

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