表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/199

第95話 ゾンビトラウマを克服する二人 ー長尾栞編ー

《ううむ・・違うかも・・》


私は迷っていた。


遠藤さんの思い人。


この前のトレーニングジムでは、遠藤さんが好きなのは麻衣さんだとばかり思ってた。


色白アイドル系の美人で全てが小ぶりな作りの華奢な癒し系女子。目が横に長くて目じりがスッとしているため清楚に見えるし、軽い茶髪のロングヘアがとても似合っている。


年齢も遠藤さんと同じ22才なので仲もいい。


私が男だったらこの人が良いという先入観だったのかもしれない。


《だが・・ほとんど一緒に居る事が無い・・》


むしろ遠藤さんは最近、女優の里奈ちゃんと一緒に居るのだった。


ゾンビの世界になってから、私以外の女性は全員怖い思いをしてからここに集まって来た。


私と遠藤さんだけが近くではゾンビを見た事が無かった。


里奈ちゃんもあゆみちゃんも他のみんなも、それぞれゾンビにかなりのトラウマをもっていた。


怖いから遠藤さんと一緒に居たいというのは13人全員が同じ気持ちだった。


だけど1キロほど外側からゾンビが入ってくる気配がない為、ホテルの中なら四六時中一緒に居る事もない。


それぞれが一人の時間を楽しむときもある。


「だけど・・最近は里奈ちゃんとずっといる・・」


いったい二人は何をしているんだろう?


私はとても気になった。


私と里奈ちゃんは遠藤さんとの初めてを迎えるために、ちょいちょいセクシー系DVDを入手してきては二人で見て勉強していた。


「もしかしたら、それで大人の階段を上った?」


《いや・・それなら里奈ちゃんは話してくれるはずだ。》


私の足は自然と二人が一緒に居る、里奈ちゃんの部屋へと向いた。


コンコン


「はーい。」


里奈ちゃんがドアを開けて出てきた。


「あ!栞さん!どうぞどうぞ!入って!」


里奈ちゃんが私の手を引いて中に入ると遠藤さんがいた。


「栞ちゃんお疲れ様。」


「お、お疲れ様です。」


二人はどうやら・・ゲームをしていたようだった。


「ゲームをしているんですか?」


「ああ。」


「一緒に見ません?」


二人は何のゲームをしていたのだろう?


遠藤さんが操作し始めてすぐにわかった・・・


「きゃあああ!」


私は大声を上げてしまった。


画面には恐ろしいゾンビが出てきてどうやら逃げ回っているようなのだ。


「あはは栞さんゲームですよ!ゲーム!」


「だって!こ、怖い!!」


私はつい里奈ちゃんにしがみついてしまった。


「きた!」


また大きな声を出してしまった。


「あははは。栞さん大丈夫ですって!」


里奈ちゃんはどうやらそれほど怖くないようだった・・


ゾンビにはトラウマがあると思うのだが・・


「大丈夫なの?」


「ああ、里奈ちゃんが怖くて眠れない事があると言っていたので、ゲームで派手にゾンビを倒せばそのイメージも消えるんじゃないかって思ってね。それで最近二人でずっとゾンビを攻略していたんですよ。」


「すっごい爽快なんですよ!銃でバババババって。おかげで少し怖いのなくなりました。」


どうやら・・二人は里奈ちゃんのゾンビのトラウマ克服のため、ゲームで荒療治をしていたようだった。


「でも・・怖くないの?だいじょ・ぎゃぁぁぁぁぁ」


ビクゥ

ビクゥ


遠藤さんと里奈ちゃんがビックリしてしまった。


「いや栞さんの悲鳴でビクッとしてしまいましたよ。」


「俺も。」


「いや・・だって、だって・・きっ来たアアアア撃って撃って!!」


バンバンバン


ゾンビは倒れた。


「あはははは、栞さんすっごい怖がってる。」


「だって!」


二人はずいぶんゾンビゲームに慣れてしまったようだった。


でも逆にゾンビゲームでトラウマを克服しようだなんて凄い事を考える・・


「もうすぐクライマックスなんですよ!」


里奈ちゃんは楽しそうに言った。


「そうそう!ほらほら!!もうすぐラスボスの部屋に到着するよ!」


遠藤さんも楽しそうだった。


ゲームの中では研究所のような扉を開けるところだった。


扉の中には・・何もいなかった。


ただそこら中が燃えていて研究施設の資料などが散乱している・・そこを主人公が歩いて行く・・


バガァァァァン!!!


「ぎゃー!!!」


びくぅ

びくぅ


2人が私の悲鳴でびくついた。


私はもう怖くて怖くて思いっきり叫んでしまった。


床をぶち破って巨大な恐ろしいモンスターが出現したからだった。


手が何本もあってそのゾンビの手の爪が長い・・それが縦横無尽に襲ってくるのだ。


「逃げて逃げて!!」


私は夢中になって叫んでいた。


里奈ちゃんは私の手を握って画面を凝視している。


里奈ちゃんの手にも汗がにじんでいたようだった・・彼女も怖がっている。


「よし!最初はこっちからまわって・・」


遠藤さんが必死にゲームの攻略をしていた。


「あ!遠藤さんあそこに鍵穴が!」


「あったあった!」


壁の箱に近づこうとした時だった。


バグゥン


「ぎゃぁぁぁぁ!!」


私はまた叫んでしまった。


一撃を喰らったら大きくライフが減った。


「遠藤さん!薬を!薬を!最後の!」


「はいはい!!」


薬を消費するとライフが戻り、ようやく鍵のついたボックスにたどり着く。


空けると筒のような何かが出てきた。


「ロケットランチャーぁ!ゲット!」


「撃って―!」


ズガカァァァァァン


モンスターは大穴を空けて飛び散ってしまった。


残った触手のようなものが少しだけ、のたうち回っていたけど燃え尽きてしまう。


「やったー!」


「やったー!」


遠藤さんと里奈ちゃんはハイタッチをして喜んでいた。


「これでこのゲームも攻略だ!」


「やりましたね!!」


ワイワイと二人が喜んでとても楽しそうだった。


兄妹と言ってもいい・・いや恋人と言ってもいいくらいに二人で盛り上がっている。


「あの・・二人はゾンビゲームを何本くらい攻略したの?」


「これで5本目です。ぶっ続けでやったんです。」


「徹夜しちゃったよな!」


二人で何日も夜通しゾンビのゲームを・・


もしかしたら遠藤さんの好きな人って?


あずさ先生も少し怪しんでいたけど・・里奈ちゃん?


彼は年下が好みなのかもしれなかった。


ますます謎は深まっていく。


私は核心を持つことが出来なかった。

次話:第96話 生存者捜索開始

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 白石麻衣? 白岩麻衣? どっちが正解???
[一言] 遠藤君は少し女性に耐性がなく、大人し目な吉川沙織さん のような娘に惹かれれるかもね、若い子は元気が良すぎて 精神的に負担が大きく、イケイケ系の美女より、壁の花 のようなタイプが、精神的に気楽…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ