第93話 好きになった人は誰? ー長尾栞編ー
3月に入りだいぶ暖かくなってきた。
ひと月たっても、まだみんなの不協和音は修正できていない。
女優の里奈ちゃんはあゆみちゃんと離れ、いつも女医さん達と居るようになった。
里奈ちゃんが女医さん達と居るのは、結局マネージャーの瞳さんがそこに居るからだ。
女医さんチームと年齢が近い瞳さんが女医さん達と一緒に居る事が多いので、それにくっついている感じだ。
どちらかというと親と居る感じに近い。
「栞さん!」
ある日そんな里奈ちゃんが声をかけてきた。
「里奈ちゃんおはよう。何してるの?」
「別に何もしてませんでした。」
最近、里奈ちゃんは私と話す事が多くなった。
《この有名な女優さんと話すのもごく普通の事となったな・・》
里奈ちゃんは私と年が近い事と、未経験と言う共通点がある事で心を許していた。
今日は薬や医療器具の補充をするためセントラル総合病院に行く事となっていた。
その準備のため華江先生とあずさ先生がバーでリストアップ作業をしていた。
「あら、栞さん。」
「あずさ先生おはようございます。」
「たまには里奈ちゃんと一緒に居てあげてね。」
「はい。」
あずさ先生はとてもバランスの取れた人だった。
どちらかというと調和を重んじる人で、この人のおかげで私たちの関係性が崩壊しないで維持できている気がする。
「病院に行く前にちょっといいかしら。」
「はい?」
「二人で話が出来たらいいなと思って。」
「あ、話しましょう!」
「じゃあ私の部屋に。」
「はい。」
「華江先生、少し空けます。」
「どうぞ。」
華江先生にことわりを入れて、私は二人であずさ先生の部屋に行く。
あずさ先生は見た目が優しそうな人だった。
サバサバしているタイプで、黒髪ショートカットのやせ型の美人だ。
「座って。」
「はい。」
あずさ先生と私は椅子に向かい合って腰かける。
「単刀直入に聞くけどいい?」
「なんでしょうか?」
「栞ちゃんは、本当に遠藤君が選んだ好きな人ではないのよね?」
「そうです。何人かは私がそうだと思っているようですが・・」
「そうみたいね。もし彼に好きな人がいるとしたら相手には伝えているのかしらね。」
「遠藤さんは・・あの性格ですから面と向かって言えてないと思います。」
「やっぱりそうよねー困ったわね。」
「はい。」
そう。
突破口になる人は・・
《あずさ先生の言うように遠藤さんが好きになった人が鍵だと思う。遠藤さんが誰を好きなのか分かっていないのけど、遠藤さんに好かれている人が行動すればいろいろと解決しそう。》
「犯人捜しってわけじゃないんだけど。」
「はい。」
「栞ちゃんじゃないとすると心当たりはある?」
「まったくわかりません。」
「そうかぁ・・私と華江先生と瞳さんではなかったわ。もちろん彼からしたらだいぶ年上だから違うとは思ったけど。」
「という事は他の誰かということですか?」
「そう。」
ふむ。
では・・祖父の名にかけて!謎を解きましょう。私の祖父はサラリーマンだけど。
「ということは、あと9人の中に・・」
「ええ。そうね・・」
「あと9人と言えば、高田あゆみちゃん、牧田奈美恵さん、吹田翼さん、吉川沙織さん、北原愛奈さん、白岩麻衣さん、高橋優美さん、畑部未華さん、橋本里奈ちゃんね。」
「はい。」
被疑者は・・
高田あゆみ17歳、目がくりくりと大きく綺麗に切り揃えられた茶髪のボブカットの活動的な女子
牧田奈美恵24歳、かわいい系女子で茶髪のセミロングを後ろで結んでいる。おっぱいが最大
吹田翼27歳、肌が白くて身長高いロシア人クオーター。ボーイッシュな顔のスッキリした美人
吉川沙織25歳、ちょっと地味なメガネが似合う繊細系の乙女。体系は細めだが意外に筋肉質
北原愛奈26歳、黒のサラサラストレートロングヘアのクールビューティー。スポーツマン
白岩麻衣22歳、色白でアイドル系の美人ですべてが小ぶりな作りの華奢な癒し系。元保育士
高橋優美22歳、目がくりくりとしていて茶髪をいつも巻いているくしゅふわっとした可愛い女子
畑部未華25歳、ナチュラル系で目ヂカラがあるかわいい系美人。黒髪のぱっつん前髪が特徴的
橋本里奈17歳、いわずとしれた天使すぎる女優。身長は小さめだが目が大きく揃った歯が可愛い
以上の9名だ。
「あずさ先生。」
「なに?」
「私は愛奈さん沙織さん奈美恵さんに疑われています。彼女ら3人は違うのでは? 」
「そう?・・もしかしたらけん制し合って言っていないだけなのかも。」
「うっ!なるほど。それもありますか・・。なら自分だと分かっていて、私を避けているふりをしているパターンもあるという事でしょうか?」
「避けられてるの?」
「まあ面と向かって言われてませんが避けられてます。」
「じゃあそれとなく奈美恵に言っておくわ。」
「すみません。」
「奈美恵と言えば。あの胸も怪しいと思わない?」
《む・・胸が怪しいって何?》
「あの胸で遠藤さんが惚れないわけが無いと?」
「だって普通はそうかなと・・」
おっぱいが大きい彼女は確かに怪しいが、遠藤さんが巨乳好きというのも聞いた事はない。
おっぱいが大きいからといって男が好きと言うのは短絡的かも。
あずさ先生の思考はなんか男っぽい。
「私は、なんとなく麻衣さんか翼さんかなと思ってます。」
「理由は?」
「美白系美女が流行りだから。」
「なんか短絡的ね。」
《あなたに言われたくありません・・》
「そうですよね?私の趣味も入っているかも。」
「趣味って?」
「だってあの二人綺麗じゃないですか?」
「確かに。でも・・」
「なんですか?」
「あなたもめちゃくちゃ可愛いわよ。あと里奈ちゃんもね。」
「そ、そんな・・私なんて全然!」
「まあいいけど。」
あずさ先生のようなサバサバ系美女に入れれるとなんかうれしい。
私はつい赤くなってしまった。
「はあ、遠藤さん好きな人って誰なんでしょうね?」
「それが絞れないのよね。たまたまなんだろうけど私を除いた12人の顔面偏差値が滅茶苦茶高いのよ。スタイルも痩せているかナイスバディだし!」
「えっ!私に言わせたらあずさ先生はスリムだし超綺麗だと思います。」
「あははは。私なんて男よ男!中身はオトコ!綺麗とかないわー。」
《この人・・自分が分かっているような分かっていないような・・》
謎は深まるばかりだ。
結局話し合いでは判明する事は無かった。
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