表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/199

第90話 遠藤さんと二人きりの日 ー長尾栞編ー

名字のあいうえお順に遠藤さんと二人きりになるという事が決まった。


それぞれが1日ずつ二人きりで過ごしてみるという簡単な話だった。簡単なルールはあるがそんなに難しい事じゃない。


食料品回収日を中に1日入れて、13人で約2週間の予定だった。


遠藤さんとの二人きりの日。


はじめに大角華江先生から始まり、北あずさ先生、北原愛奈さん、白岩麻衣さん、高田あゆみちゃん、高橋優美さんと1日ずつ6日間をすごした。そして7日目に私の番となった。


他の人たちとはどういう過ごし方をしたのか?


それは、わからなかったけど・・私は私の話をしようと思う。


「遠藤さんも毎日大変ですね・・」


「いや栞ちゃん俺は逆にうれしいんだよ。それぞれの考えが聞けたり、話はあまりしなくてもだた二人で居るだけだったり、あゆみちゃんとなんか1日中ゲームしてたしね。」


「ふふ。遠藤さんらしい。」


「そうかな?」


少し静かになる・・話したいことはいっぱいあるのに出てこない。


「あれから・・私たちが出会ってから11カ月も経つんですね。」


「本当。あっという間に時間は過ぎた気がする。」


「はい。私は遠藤さんの隣の部屋に住んでいたというだけの幸運でここまでこれました。」


「いや・・幸運かな?でも生き延びれたのは確かだろうけど、俺と強制的に子供を作らなくちゃいけない状況になっちゃった。」


「それも受け止めていますよ。」


「そう・・あの・・俺ね、逆に栞ちゃんに聞きたい事あったんだ。」


「なんですか?」


「あのとき栞ちゃんは、彼氏が出来たばかりだったはずだよね?」


「はい。」


「こんなことになって辛いだろうけど、俺と結ばれる事は栞ちゃんの意志なのかい。」


「そうですよ。私は約1年の間ずっとあなたと居ました。前の彼氏の事を何も思わないかと言ったら嘘になるかもしれません。でも・・今は遠藤さんの事が好きです。」


・・・・・・


遠藤さんは考えこんでしまった。この時間・・はちょっと辛かった。


「そうか・・。栞ちゃんは俺から見ても女性から見ても可愛くて、本当に俺なんかにはもったいないくらいの女性なんだよ。強制的にそうさせたんじゃないかと不安なんだ。」


「そんなことはないです。そして・・現実的な話かもしれないんですけど、私だって生き延びたいんです。だから・・私はあなたの子供が欲しい。そしてそのために好きになったんです。だからそんなに不安にならないで・・」


私はどうやら涙をためてしまっているようだった。視界がぼやける。


「ごめん。それならいいんだ。俺は本当にうれしいんだよ!男として栞ちゃんのような清楚で綺麗な人と結ばれる。こんなうれしい事はない。ただ・・初めてが俺なんて・・少し悲しいんだ。」


「それは・・」


「大好きな彼氏と一緒にさせてあげたかった。俺と出会う前の事だけど君には、君の人生があったはずだ。それが・・悔しくてならないんだ。」


「ありがとうございます・・ふふっ・・遠藤さんは優しいですね。」


すると遠藤さんは私の頭を自分の胸に抱きよせた。


ぐすっ・・すん・・すん・・


私は泣いてしまった。涙がとめどなくあふれる。私の人生がこうなってしまった事の悲しみ、そしてこの人の優しさに私は打ち震えて泣いていた。


遠藤さんは頭を撫でてくれている。


「あの・・すみません・・ありがとうございます。」


「あの栞ちゃん。出会った頃のあの時、一緒に読みたいって言っていた本を見つけたよ!」


「あ・・・本当だ・・!」


そして遠藤さんは私に本を渡してくれた。


「大事にします。」


「俺も。」


凄く分かり合えた気がした。遠藤さんに全て預けてみたいと思った。彼にはどう伝わっているんだろう?私の気持ちは伝わっているんだろうか?


もっと彼に触れたくなった。そして彼と口づけをしたくなった。


でも今回の・・2人きりになる事で一つだけルールがあった。


体の関係を持たない事。愛の交わりをしない事。


「俺もさ・・君が隣の部屋に住んでいてくれなかったら、絶対にここまでこれなかったと思うんだ。最初にあの勇気がもらえたのは間違いなく栞ちゃんのおかげだから。」


私は頭を振るので精一杯だった。


「栞ちゃん。今日は一緒にずーっと趣味の話をしたい、君が好きだった趣味をもっと知りたい。読みたかった本、読んでみて感動した本、大好きな人達の事だって知りたい。いいかな?」


「うん。話す。」


私と遠藤さんはその日、夜までずっと好きな本の事、映画の事。そして私が好きだった唯人君との事を話した。なっちゃんの事もいっぱい話した。親友だったなっちゃんが無事でいてほしいと願っている事。出来れば唯人君ともまた会いたいことを話した。


「栞ちゃんの願い。叶えようよ。絶対に探そう・・どうなっているか分からないけど、唯人君の事とそして親友だったなっちゃんの事、絶対にあきらめちゃダメだよ。俺もこの不思議な能力で協力するから絶対あきらめちゃダメだ。」


「ありがとう・・ありがとう・・」


まだまだずっと話していたかった。それだけ遠藤さんには話したいことがいっぱいあった。少し喉が枯れてきたみたい・・でも話したかった。


「そして栞ちゃん。必ず生き延びよう。これは全員にも伝えている事だよ。絶対に生きて必ず未来につなげるんだ!あきらめちゃダメだいいね?」


「はい。」


遠藤さんは凄く強くなった。


私はどうだろう・・


もしかしたらまだ甘いところがいっぱいあるかもしれない。


もしかしたら過去への未練があるかもしれない。


でもこの人となら頑張って未来に歩いて行ける気がしたのだった。

90話です。みんな試行錯誤し始めそして2人きりの日。少しずつ何が変わり始めます。ここまで読んでいただいてありがとうございます!ブックマークもたくさんしていただきうれしいです!いつも高評価をありがとうございます!


次話:第91話 最年長と最年少の気持ち

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ