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第88話 遠藤君の好きな人は ー長尾栞編ー

「楽しそうですねー!まぜてもらってもいいですか?」


「どうぞどうぞ。」


ドアから入って来た優美さんに未華さんが答える。


「皆さんで楽しんでるのに割り込んですみません。」


麻衣さんは少し申し訳なさそうに言う。


優美さんと麻衣さんが、ぽふんとソファーに座った。


「どうぞ食べてください。」


未華さんがクッキーが入ったボウルを前に差し出した。


「クッキー!おいしそうですね。いただきます。」


「じゃあ私もいただきます。」


二人がクッキーを手に取って口に運ぶ。


「えっ!おいしい!すごい。」


「本当だ!えー!久しぶりに本格的なクッキー食べた!」


「喜んでもらえてうれしいです。」


「未華さんが焼いたんですか?」


「はい。」


「女子力たっかーい!うらやましいですよぉー。」


優美さんが未華さんをゆるふわの小悪魔的な可愛い表情で見つめていた。

いつもきちんとお化粧しているし髪も巻いている。


《違う意味で女子力が高いわ。》


「そんなことないですよ。」


未華さんが照れくさそうに答えた。


こう並んでみるとこの二人って対照的だなって思う。


地味系美人で目力が強いけど、そつのない女子力が高い未華さん。


癒され度満載なかわいい見た目で、小悪魔系雰囲気の優美さん。


男性の好みが分かれそうだ。


「こんなおいしいクッキー!これじゃ近頼君もグラッと来ちゃうんじゃない?」



《えっ?近頼君?優美さんが、遠藤さんの名前を・・下の名前呼びしてる?いつのまに?》



「確かに!遠藤さんもまんざらでもないですよね?」


麻衣さんがそれを肯定するように言う。


「ま、まあ料理は上手な方がうれしいですね。」


遠藤さんがう。


「やっぱりー?じゃあ私は未華さんにいろいろと教えてもらわなきゃ。」


麻衣さんが言う。


麻衣さんは肌がとにかく白い。


まあ白さで言えば翼さんも負けていないボーイッシュな美白美人。


麻衣さんは小顔に小ぶりの鼻と真っ白な歯が可愛い、それでいて蒙古襞が張っていないから目が横に大きくて印象が残る。


《どちらかと言うと麻衣さんはアイドル的な小顔の女子だわ。さらに保育士という事で癒しの要素もあるし・・私がなりたいとしたらこの人になりたいな》


私の好みはさておき・・この二人も似てはいるが男性の好みが分かれそうだった。


「で・・遠藤さんは正直なところ・・誰が気になるんですぅ?」


優美さんがいきなり単刀直入に聞いちゃった。


「え、え?誰って何がですか?」


「決まってるじゃないですか。13人の中に好きな人はいたりするんですか?」


!!!!!


そこにいる全員がちょっと引いている。


「えっと・・いや・・その。みんないい人なんでみんなの事が好きですけどね。」


「それ違う意味での好きでしょ?異性として女性としては?」


「あ・・あの・・」


「あーやっぱりいるんだ!でも・・まあこれ以上は聞かないです。」


《うわあ・・小悪魔。遠藤さんが完全に手玉に取られているみたい。》


「いるとは言ってないんですが・・でもまあ・・。」


「良いんですよ。ただ聞いてみたかっただけだから・・」


優美さんは少し寂しそうな顔をした。


《たぶん優美さんは失敗しているからだ・・》


すこし同情的な気持ちがわいてくる。



あの日の夜に優美さんは遠藤さんの事が好きって言ってたけど、目的が果たせなかった。


たぶん今でも引きずっている。


「私もジュース飲みたいな!」


優美さんが明るく言う。


「私も!」


麻衣さんも言う。


「ありますあります!ここの冷蔵庫で冷やしてましたから!のみましょう!」


未華さんがペットボトルを持ってきてくれた。


「かんぱーい!」


皆でペットボトルで乾杯をするのだった。


「優美・・」


翼さんが優美さんに声をかける。


「なんですか?先輩?」


「あの・・」


「・・良いんですよ!飲みましょう!」


「・・・うん。」


そして女子たちの複雑な気持ちを知ってか知らずが、遠藤さんはおいしそうにオレンジレモンソーダを飲み干していた。


ガチャ


「あー!みんなここに居たんだ?」


「ちょっと探しちゃいましたよ。」


そこに・・愛菜さんと沙織さん、そして後ろから華江先生・あずさ先生・奈美恵さん・瞳さんが・・お酒や食べ物をもってやって来た。


「あの・・この前はお酒で失敗しちゃったので、今日はおとなしく飲もうって事でどうかしら?」


「そうそう、あの時は変なテンションになっちゃってごめんね遠藤君。」


華江先生とあずさ先生が言う。


「いえ!あれはあれでめっちゃ楽しかったですよ。」


「それならいいんだけど、大人としてちょっとまずかったなと反省してるわ。」


瞳さんも気まずそうに言うのだった。


「今日はおとなしく飲みましょう!」


「つまみも持ってきたわ。」


「お!つまみ缶ですね。」


「あとー真空パックのアーモンドとクルミとカシューナッツ。」


「いいですねー!」


「まだあるわよ。真空パックのビーフジャーキー。缶詰の焼き鳥!」


「食べましょう食べましょう!」


さっきまですこし微妙な空気だったけど大人組のおかげで楽しくなってきた。


大人組が狙ったものなのかどうかは分からないけど助かった。


「そしてー!」


「じゃーん!」


「イギリスの最高級ビールでーす。」


「なんですか?それ!飲んだこと無いです!」


「皆で飲みましょう。でも適度にね!」


ビールやつまみの蓋を開けて飲み会の準備をする。


ジョッキを並べて皿におつまみを盛り付けていく。大量に回収したので結構いっぱい持ってきていた。


「里奈ちゃんとあゆみちゃんは?」


「あ、寝るって言ってた。」


「そうなんですね。」


高校生抜きの大人の時間。ただこの前のように羽目を外す事の無いように見張っておこう。


「じゃあ大人組のみんなでカンパーイ!」


カン!

カン!

カン!

カン!


「ぷはぁーおいしい!」


「最高級ビールってだけありますね!」


「本当だ飲み口がいい!」


「これ正解!」


それぞれに感想を言う。


正直私にはまだビールの良さが分からなかったけどやっぱり楽しい。


そして私は不意に考え込んでしまうのだった。


遠藤さんはこの中に好きな人はいるのだろうか?


それとも高校生組?


気になりながらもビールをグイっと飲みほした。

次話:第89話 行き詰まり解消の第一歩

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