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第76話 高橋優美さんが行く ー長尾栞編ー

年が明けた


「ハッピーニューイヤー!」


展望台に集まってみんなで乾杯をする。


「ふう・・ハッピー・・か・・」


「ですよ。」


「きっといい事あります!」


「ほんと皆で何とかしていこうね。」


「そうですよ。頑張りましょう。」


みんながいろんな思いを抱いて新年を迎えた。


《しかし・・今のこの世界で、こんなに穏やかなお正月を迎えた人はいるのだろうか?すべては遠藤さんのおかげ・・》


こんな時だからこそ、私たちは正月三が日は自由にすごそうと決めた。


ただし6人だけをのぞいて・・


そして・・・


子作り計画だけは元日から遂行する事になっていた。


《いわゆる〇はじめと言うらしい・・そんな言葉しらなかったわ・・》


この中で遠藤さんと、私を含めた5人の女性だけがソワソワしているように見える。


それは・・・


昨日の大みそかに第一期妊娠候補の人たちが集まって話し合いがもたれたのだった。


私とあゆみちゃん里奈ちゃん瞳さん優美さんの5人だ。


その内容は誰が最初か。


里奈ちゃんは女優の仕事をしてはいるが高校生で未経験ということもあり、先発から外されて5人の中で最後にという事になった。


私とあゆみちゃん瞳さん優美さんの4人で先発を決めた。


《あゆみちゃんは高校生ながらも経験済みなので大丈夫と言っていたけど・・そうなんだ・・わたし何をどうすればいいのか分からないわ。》


「じゃあくじ引きで決めますか?」


あゆみちゃんが提案した。


《ドキッとする・・くじかぁ・・》


「それが良さそうね。」


瞳さんが言う。


「じゃあ私がくじを作ります。」


「お願い。」


私がくじを作る事になった。


紙に1,2,3,4の番号をふったくじを箱の中に入れて皆の前のテーブルに置く。


「じゃあ一斉に引きましょう。」


瞳さんが言う。皆が箱に手を突っ込んでくじを握った。


「せーの!」


私は4番だった。


1優美さん


2瞳さん


3あゆみちゃん


4私


5里奈ちゃん


の順番となる。


「よし、これで決まりね。」


優美さんがみんなに言うと皆が頷いた。


優美さんはどの順番になっても良かったようでケロッとしている。


それが昨日の夜の出来事。



そして今日、お正月を迎えてとうとう作戦が開始されることになったのだった。


遠藤さんは椅子に座ってみんなと話をしている。


「今年は皆さんいろいろやる事がありますね。」


《そ・・そうだ!や・・やることがある!》


私は内心動揺していた。


「遠藤君だって大変よ。」


「はい。先生・・」


「まああまり緊張せずにリラックスしていくといいんじゃない?」


彼は華江先生から励まされている。


「遠藤君はまじめだからねぇ」


あずさ先生も少しからかうような口調で遠藤さんの肩に手を回して言う。


遠藤さんは赤くなっていた。


「リラックスリラックス。」


あずさ先生がするりと肩から腕をはずすと、奈美恵さんが後ろから遠藤さんの肩を揉み始める。


医療チームが最初の優美さんのために、遠藤さんを優しくフォローしているのだった。


「ほら足を出してください。」


翼さんが椅子を用意して遠藤さんの足を置かせて軽く足ツボをマッサージしていた。


翼さんも後輩がこれから頑張る事を知っているので、少しでも役に立てるように協力している。


遠藤さんがリングサイドのボクサーのようだ。


その後はみんなとオーブンでお餅を焼いて食べた。


海苔まきとあんこ餅を用意して2種類を味わう。


やはりお正月はお餅がいい。


みんなでのお餅タイムが終わってそれぞれの部屋に戻っていく。


私は優美さんと一緒の部屋に居た。


優美さんは化粧直しをしながら私と話をしている。


「優美さん大丈夫ですか?」


「ん?大丈夫よ。心配いらないわ。」


「好きな人とじゃないのに・・」


「えっ?私、遠藤さん好きよ。」


「そうなんですね!よかった・・でも私も遠藤さんは嫌いじゃないです。」


「天然なとこあるけど、勇気があって男らしいわよね。」


「はい。」


「普通の男だったらもう逃げてるんじゃないかな?」


「確かに・・遠藤さんは逃げませんよね。立ち向かっていきます。」


「そうなのよ。地味な人だけど必ず先頭に立つ。引きこもりだったなんて言うけど、普通の世界だったらリーダー向きの性格よね。」


「そうなんですね。」


「まあ彼はまだ新入社員だったらしいから、まだそんな能力を発揮する場なんてなかったと思う。私も短大を出て社会人3年目だし彼とあんまり変わらないんだけど、ああいう上司だったらいいなって言うのはあるわ。」


「優美さんは彼と同い年でしたね。」


「うん。」


優美さんはくりくり目の可愛い顔でににっこりと微笑む。この状況でも髪は綺麗に染めていて、明るめの栗色ヘヤーがかわいい癒し系女子だった。


「優美さん。これから・・遠藤さんの所に行くんですよね。」


「うん。でも彼は私が最初でいいのかなあ?って気持ちもあるけどね。」


「・・どうなんでしょうね。彼は何も言わないから・・」


「前に彼のメンテナンス作戦をした事あるでしょう?彼マッサージするだけでは、何の反応もしなかったように思うのよ。」


「いやー。優美さんみたいな可愛い人からいい寄られる事なんて、きっと彼の今までの人生でなかったから緊張していたんだと思いますよ。」


「まあそれならいいんだけど・・彼女いない歴22年って言ってたもんね・・」


「そうですよ。そんな彼の一番最初の相手が優美さんのような可愛い人なんて、世の男達からみたら羨ましい以外の何物でもありませんよ。」


「ふふ。栞ちゃんは優しいなあー。私のモチベも上げようとしてくれて・・」


「年下なのに差し出がましい真似をしてすみません。」


「えっ!謝らなくていいよ。栞ちゃんみたいに可愛い子に可愛いって言われて嬉しくないわけ無いじゃない。」


「そんな!とんでもないです。私は優美さんの様な魅力的な女性になりたいですもん。」


「ありがとう。」


優美さんがニコっと笑った。


《人懐っこい笑みがかわいいなあ・・》


「じゃあ・・そろそろ行って来るわ。」


「あの・・頑張ってください。」


「あはは、頑張ってくる!言うのもおかしいけどね。行ってきまーす!!」


化粧もバッチリ決まったようで、優美さんは元気よく部屋を出て行った。

次話:第77話 心の準備

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