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第74話 お注射で治しましょう ー長尾栞編ー

よかった・・本当によかった。


あれだけ段取りして総仕上げでこけたら終わりだった。


最後のあの瞬間、全ては私達にかかっていた。


その甲斐あってスーパー堅物の遠藤さんが軟化した。


総力戦だった。


やりきった・・


そのせいもあって、次の日は皆が疲れていながらも晴れ晴れとした顔をしていた。


素晴らしいクリスマスを迎える事が出来たが・・


「頭が痛いわ。」


「私も・・」


一部の人は具合が悪そうだ。


華江先生とあずさ先生が二日酔いになってしまっていた。実は私と翼さんと未華さんも二日酔いになっている。お酒で勢いをつけたからだった。


「私は大丈夫ですよ。」


「私も平気です。」


優美さんと麻衣さんが普通に元気だった。


「えっと・・二日酔いの人あといる?」


華江先生が聞くと沙織さんも手を上げた。


「ということは・・6人?」


すると遠藤さんが遅れて手を上げるのだった。


「じゃあ7人ね。奈美恵さん・・点滴お願い。」


「わかりました。」


7人はふらふらと奈美恵さんについて行く。


「華江先生。二日酔いって点滴で治るんですか?」


「テキメンよ。」


「私もいつもしてもらってる。」


あずさ先生も常習らしい・・


7人と奈美恵さんがホテルの一室につく。


その部屋には病院から持ってきた医療品や医療器具などが保管されていた。


そして奈美恵さんが言う。


「それじゃあそれぞれベットやソファに横になってください。」


私と翼さん未華さんと沙織さんがベッドに寝かせてもらった。


あずさ先生がソファーに横になり、遠藤さんは椅子を並べてその上に横になった。


「じゃあ皆さん腕まくりしてくださいね。」


奈美恵さんが言うので腕まくりして点滴注射を待つ。


華江先生は椅子に座って起きたまま点滴を打つらしい。


皆に点滴をセットして奈美恵さんが言う。


「それじゃあ30分ほどしたら来ますから、じっとしていてくださいね。」


「はーい。」

「わかったわ。」

「なみちゃんありがと。」


私と華江先生あずさ先生が返事をする。後の4人は相当具合が悪いらしくて黙っていた。


私も横になって気持ちの悪さを落ち着かせていた。


華江先生だけは起きてパソコンを触っているようだが、さすが・・華江先生はすごい。


尊敬する。



みんな黙りこくってじっとしていた。


10分ほどたつと・・体が楽になって来た。


《頭痛もなくなってきた・・すごいわ。》


翼さんと未華さん沙織さんあずさ先生は眠ってしまっているようだった。


「遠藤さんは大丈夫ですか?」


「だいぶ良くなってきた。点滴って二日酔いに効くんだね。」


「ええ。私はいつもお世話になっていたわ。」


「華江先生はよくお酒を?」


「滅多に行かないんだけど、一人で飲みに行くとなったらとことんね・・そして次の日に後悔するのよ。」


「ははは・・・・」


「だって・・お酒って。美味しいんだもの。」


「なんか俺もわかる気がします。」


「遠藤君も深酒しちゃうの?」


「はい。落ち込んでしまった時とかに部屋でガッツリ飲んだりして。」


「いろいろあるわよね。」


「はい。」


二人はだんだんと元気になってきているようで普通に話をしていた。


30分が経過して奈美恵さんが点滴を外しに来る。


「はい。外しますよ、皆さん具合はどうですか?」


「だいぶいいです。」

「私も楽になりました。」


「やっぱり効くわね。」


「まったく・・先生達はいつもですよ!」


後の4人は点滴を外されても、そのまま眠っているようだった。


「しばらくそっとしておきましょう。」


「そうですね。」


外は荒廃したゾンビの世界だというのに、私達はなぜか日常的な生活が繰り広げている。


皆その悲惨な現実を考える事を止めた。気持ちが滅入ってしまうからだ。


それよりも昨日話したあの内容・・遠藤さんの子供の話。


順番などこれからの話し合いがどうなるのか凄く気になっていた。


とにかく今寝ている4人が復活して、全員が合流したら話し合いが始まると思う。


私は点滴部屋を出た。


高校生二人のところに行くと、里奈ちゃんとあゆみちゃんが早速プレゼントしてもらったゲームをやっていた。


「ああ。この武器は結構使えるんだ。」


「私はHPがそろそろなくなるから休ませるわ。」


「わかった。私のはまだ大丈夫そうだけど一人じゃつらいわ。私もいったん休もうっと。」


真剣にゲームの話をしていた。


「あ、栞さん!このゲーム面白いですよ!」


「今はHP溜めるために休憩中です。」


「おもしろそう!」


「今度栞さんもやりましょうよ!」


「ぜひまぜてもらうわ。」


二人と話した後で他の人の所に行って見る。


皆が遠藤さんからもらったプレゼントを眺めてはニコニコしていた。


本当に私もうれしかった。


彼はこんなにも私たちのことを把握していたなんて・・逆にもっと遠藤さんの事を知ろうと思った。


「栞ちゃん。なんか腹減らない?」


遠藤さんが聞いてくる。


「減ったー!元気になったら急に。」


「パンケーキ食べる?」


「食べます。」


「パンケーキ食べる人?」


遠藤さんが聞くとそこにいた全員が手を上げた。


みんなで2階下の飲食店フロアに降りる。


おしゃれなbarの一室に入ると遠藤さんがキッチンに行って、ホットケーキ粉をボールに溶き始めた。


ジュワァァァァ


ホットケーキが焼けるいい匂いがしてきた。


ゲーム休憩中の高校生二人も部屋に入ってくる。


「いい匂い。」


里奈ちゃんが言うとあゆみちゃんも反応する。


「お腹減ったー。」


「昨日あんなに食べたのにね。」


「昨日は昨日、今日は今日よ。」


「だよねー。」


高校生は元気だった。


「飲み物を持ってくるわ。」


「じゃあ私も手伝いますー。」


麻衣さんと優美さん愛菜さんがバックヤードに貯めてあるジュースを取りに行った。


部屋には瞳さんと私、奈美恵さんの3人が残った。


「栞ちゃん。」


「はい。」


「奈美恵さんも。」


「なんでしょう?」


クールビューティーなお姉さまの瞳さんが私たちに話しかけてくる。


「あの順番って・・どうなるのかしら?」


「はい・・」


「どうなるんでしょう・・」


一番最初の議題に上がるであろう問題の事だった。


誰が遠藤さんの初めてになるのか・・

次話:第75話 第1期受精者 ー長尾栞編ー

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― 新着の感想 ―
[一言] 順番は矢張り歳逝ってる年長者からでは?卵子古いと ダウン症が怖いので、まだ大丈夫そうな年長者が サッサと仕込まないと良い遺伝子が勿体無いぞ華江先生! 高校生は最後で!その内合流かも知れない小…
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