第68話 ホテルに暮らす ー長尾栞編ー
そしてそのままグランドコンチネンタルホテルに向かった。
ホテルに到着してすぐに地下タービンにつながる吸入口に向かった。
未華さんがみんなに指示を出しながらガスを注入して吸入口を閉めた。
緊張の一瞬だった。
皆の目線が一点に集中している。
「ふぅ・・・」
「じゃあ遠藤さん・・いきましょうか。」
「そうしましょう。」
パチンッ!
グゥゥゥゥゥン
ゴォォォォン
「つ・・・」
ついたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
私たちはグランドコンチネンタルホテルの地下にある、コージェネレーションシステムにガスを補給しタービンを回して発電を開始したのだった。
「よし!」
みんなで電源ルームに来て配電盤のスイッチを入れる。
パッ
パッ
パッ
パッ
「これでこのホテルで生活する事ができますね!」
「電気やガスの心配もしばらくはいらないです!」
「1階と2階、上層階にある飲食店の冷蔵庫や冷凍庫が使えますよ!」
「いま入ってる食品は腐ってるだろうから、きれいに掃除しないといけないでしょう。」
「地道にやって行けば大丈夫よ。それよりも部屋が使えるのは大きいわね。」
「最上階のペントハウススイートに行ってみたい!」
最上階の部屋はすごいらしい・・
里奈ちゃんのような女優さんでも泊まった事が無いと言っている。
「まず入り口自動ドアの電源は切って鍵をかけましょう。」
「そうですね・・一階二階の外から入れるドアは全てかためてしまいましょう。」
はい!!!!!
みんなで館内をチェックしていく。
水も出るようだし暖房も入る。
「エレベーターはどうかしら?」
「危険なので、ボタンだけ押してみましょう。」
上の階行のボタンを押すと矢印が光ってエレベーターを呼んだようだ。
しばらくするとエレベーターが降りてきて開く。
ウィィィン
「開いた!」
「一応人は乗らないで回数ボタンを押してみましょう。」
「そうですね!」
エレベーターが締まらないように扉を押さえる。
遠藤さんがエレベーターに乗り込んで、ポチポチと適当に階層ボタンを押して出てきた。
エレベーターのドアが閉まって昇っていく。
エレベーターの階層ランプを見ていると、遠藤さんが押したであろう階層で止まっていく。
「普通に動いているようですね。」
「ガスがあるうちは問題なく電気は使えそうだわ。」
みんなで上の階まで階段で上がらなくてもよくなったことにホッとする。
「じゃあこれから、この6基のエレベーターを使って生活物資をどんどん上に運びましょう!」
みんなで大型バスから台車をおろしていく。
この台車は運送会社さんから回収して来たのだった。台車に物資を乗せてみんながどんどんホテルに入っていく。
私も1台の台車に食べ物や飲み物を積み込んで台車を押す。
台車ごとエレベーターに乗り込んで上階の飲食店フロアのボタンを押した。
ウイーン
エレベーターのドアが閉まってどんどん上に昇っていく。
「ああ・・楽です。」
一緒に乗り込んだ奈美恵さんに思わずつぶやく。
「ホント、階段で上まで行くなんて事になったら地獄だったわ。」
「電気って本当にありがたいですね。」
「まったくね。」
私と奈美恵さんはしみじみ言うのだった。
そしてエレベーターは目的の階についた。
そこは飲食店フロア―になっていて先に行っている遠藤さんやあずさ先生、沙織さんが荷下ろしをしていた。
「このお店に搬入するんですね?」
「ドアも開いてたし、中は広くておしゃれだしいいかなと。」
あずさ先生が言う。
するとそこはおしゃれなbarだった。
「ここはbarですか?」
「ええおしゃれよね。以前一度来たことがあったから・・」
「良い雰囲気です。」
すると奥から遠藤さんが出てきた。
「食料品もそれほどなかったらしくて腐ったものは少ないです。ちょっと臭いもしますのでいったん冷蔵庫と冷凍庫を掃除しますね。」
「では、その間にみんなでどんどん運びます。」
するとエレベーターの方から瞳さんと里奈ちゃんとあゆみちゃんがこちらに台車をひいて歩いてくる。
私は彼女らとすれ違いまたエレベーターに向かうのだった。
エレベーターホールにつくと、チン!とエレベーターが開く。
「どっち?」
出てきたのは翼さんと麻衣さんだった。この二人はなにか性格が合うようでいつも一緒に居る色白コンビだ。
「あああっちです。」
私が指さすと二人で台車をひいてそちらに歩いて行った。
「食品はもうみんながもう一回運べば終わりますね。」
一緒に来ていた沙織さんに話す。
「ええ台車をひいて乗せてきましょう。」
二人でエレベーターに台車を乗せて1階のボタンを押した。
高速エレベーターはスーッと下へと降りていくのだった。
気圧が変わって耳に少し圧迫感が加わる。
1階についてエレベーターが開くと愛菜さんと未華さんがいた。
「まだちょっとあるわ。」
「わかりました。食品を運び終わったら次は衣料品と娯楽品ですね。」
「そうね。」
二人はエレベーターに乗って上階に上がっていった。
私たちは45階以上の飲食店と部屋を居住区にしようと決めた。
45階の階段入り口にバリケードなどを作って安全に暮らす予定だった。
高所ならばいきなり襲われなくて済むと考えてのだった。
今までは華江先生の豪邸だったが14人が暮らすには少し手狭で息がつまった。
皆は新天地を求めてこの高級ホテルを選んだのだ。
ジムもあるし遠藤さんの効果の範囲にいればビル内は自由に動けた。
高層棟に棲めば安心して眠れるはず。
上層階はスイートルームなので広さも申し分ない。
「夜景が綺麗でしょうね・・」
「たのしみね。」
「念願の一人一部屋ですね。」
「ほんとねー」
私と沙織さんは物資を積みながらそんなことを話していた。
次話:第69話 都会が綺麗になる世界 ー長尾栞編ー