第66話 何度もヌードを ー長尾栞編ー
まあ・・とんでもないことになった。
遠藤さんは華江先生から衝撃の子作り発表により、精神的にダメージを受けてしまったようだ。
私が遠藤さんだったなら間違いなくダメージを受けるだろう。
「これはよくない・・」
私はふと思う。
もともと遠藤さんにはストレスをかけない方針だったんじゃないのか?
今、彼はかなりストレスを受けているはずだった。
この計画・・女子たちは全て遠藤さんの返答待ちとなっている。
遠藤さんはあれから1人で考え込むようになった。
というより彼は女子全員を意識し始めた。なんかよそよそしい、私にもどこかよそよそしかった。
「遠藤さん!今度本を回収に行った時は、破滅の小刀を全巻持ってきましょうよ。」
私は読んでみたかった漫画のタイトルを言う。
「あ・・ああ。いいね・・そうだね・・いいよね・・ほんとだ。」
遠藤さんやっぱりおかしい!話しかけても上の空だ。
というか明らかに私の目を見ていない、目を見ても一瞬で目が泳ぐ。
泳いで、行きつく先は私のおっぱいや腰回り。
そして慌てて目をそらす。
うん、そうなると思う。
そりゃあ想像もするだろうし、それを責める事はできない。
私たちが話し合って遠藤さんに衝撃的な事を言ったんだから、責任は私たち13人の女子のほうにある。
このままではいけない。
遠藤さんは私たちの希望・・ストレスは溜めさせてはいけない。
そこで私はある計画を立てたのである!
「遠藤さん、ゆっくりお風呂入ったらいいんじゃないですか?」
「はあ・・」
「絶対その方がいいですよ。私お湯溜めてきます!」
「ああ、すみません。」
そして私はお風呂場に行く。
お風呂場は特に誰も使っていなかった。それもそのはずみんなで入る時間を決めている。
お湯の蛇口をひねって、湯船にお湯を溜め始める。
「よし!」
そして、この前百貨店で回収して来たアロマテラピーの入浴剤を用意する。
「これを入れてっと」
箱を開けると10種類の瓶にいろんな香りが詰めてあり、1本で3回分と書いてあった。
華江先生のお風呂は大きいのでラベンダーとハーブの優しい香りの瓶1本をまるまる湯船にいれた。
リラックス効果が見込めるらしかった。肌もすべすべになるらしい。
パチャパチャ
お湯をかき混ぜる。
《そう!アロマテラピーお風呂で遠藤さんリラックス計画だ!》
「さて!」
家の中で遠藤さんを探す。
1階にはどこにもいなかったので2階の部屋に行ってみる事にした。
コンコン
「はい。」
いた!
「あの遠藤さん!お風呂の準備ができましたよ。」
「あ・・はい。ありがとうございます。」
ガチャ
遠藤さんが出てきた。どうも煮え切らない顔をしている・・
「お風呂にはリラックスできるアロマテラピーオイルが入ってるのでいいと思います!」
「ありがとう栞ちゃん、気を使ってくれて。」
「いえいえ。」
私は遠藤さんの服を用意してお風呂場に連れていく。
「準備はしてあります!リラックスできると思いますよ!」
「ほんと?それは楽しみです!」
《やった!遠藤さんが素で喜んでいる時の表情だ!》
「この前百貨店でめっちゃ高そうな入浴剤回収したじゃないですかあ。あれです!」
「ああ!あれ!あれ入れてくれたんだ!楽しみになって来た!」
脱衣所の前で遠藤さんに着替えの服を渡す。
「じゃあごゆっくり。」
「ありがとう!」
バタン!遠藤さんが中に入る。
きゃっ!!
えっ!!
「うわわわわわ」
遠藤さんが超慌てて出てきた。
「あれ?どうしました!遠藤さん?」
「あ、あの・・里奈ちゃんとあゆみちゃんが・・」
遠藤さんがあわわわわとなっている。
「えっ!そんな馬鹿な・・。」
《あ、そういえば遠藤さんをお風呂に入れる事を誰にも言ってなかった。》
コンコン
私はお風呂場をノックする。
「栞ですー。二人は今からお風呂だった?」
「あ、すみません。」
「ちょっと入るねー。」
私が中に入ると・・あゆみちゃんと里奈ちゃんは、すでに裸にタオルを巻いていた。
「遠藤さんが来てびっくりしちゃって・・」
「私も!時間を守らないで入ってごめんなさい。」
「私達の裸を見てびっくりしたみたいです。」
「申し訳ない事をしました。」
二人が申し訳なさそうにしている。
「全然いいんだけど遠藤さんにリラックスしてもらおうと思って、アロマの入浴剤をいれたお風呂を用意したものだから・・」
「うわ!そうだったんですか!」
「あ、でも入っていいんじゃないかしら。二人が上がってからでも遠藤さん入れるし。」
「なんか・・悪いコトしちゃったね。あゆみ。」
「ホントだ・・遠藤さん私たちの裸を見た事を気にしてるかな?」
「たぶん大丈夫だよ。ふたりともタオル巻いてるし問題ないでしょ?」
「それがさっきはタオル巻いてなかったから、ばっちり二人裸だったし・・」
確かにまずいかも・・遠藤さんただでさえいろいろと悩んでるのに、よりによって女子高生二人のヌードを目撃させてしまった。
なんという失態。
「あ、いいのいいの!きっと大丈夫だと思う!」
「えーでも遠藤さん繊細ですよ。」
「大丈夫。私が話してくるから!じゃあ二人が上がったら教えて。」
「わかりましたー。」
「ほんとすみません。」
二人は素直に謝りつつ、とりあえずお風呂には入るようだった。
私は脱衣所を出る。
「遠藤さん!ごめんなさーい!私みんなに言ってなかったから!」
「い、いや。そんな・・大丈夫だよ。だって俺も・・決められた時間じゃないし!」
「とにかく二人が上がるの待ってよう!」
「そ・・そうだね。」
遠藤さんについて2階の部屋に行く。
遠藤さんが待っているあいだ手持無沙汰だと思うので私も部屋に入り、二人で今までの事や大好きな本の事などを話す。
だんだんと遠藤さんの気持ちもほぐれてきたようだった。
コンコン
「あのーお風呂あがりましたー。」
あゆみちゃんだった。
「ああ、教えてくれてありがとう。じゃあ遠藤さん!二人が上がったみたいだから!」
「じゃあ、せっかくなんで入らせてもらおうかな!」
「ぜひぜひ!絶対に気持ちいいですよ!」
二人でお風呂場に行って遠藤さんに着替えを渡す。
「ではごゆっくりー!」
「栞ちゃん!気を使ってくれてありがとうね。」
「いえいえどういたしまして。」
ガチャ
「あらぁ?」
「どうしたんですか?」
バタン!
「あ、ああの、あれ・・あっと、えっと、おおお女の人が・・」
「ええええええ!!」
コンコン
「はい・・」
「あのー栞です。入ってもいいですか?」
「どうぞ。」
中に入ると、優美さんと麻衣さんが裸にタオルを巻いていた。
「あれ?いままだ時間じゃないと思ったんですが・・」
「ごめんなさーい。」
「すみません・・」
優美さんと麻衣さんの・・セミヌードがそこにある。
「なんか、女子高生の二人がここから出るのを見たら、二人で入ろうかって話になって・・」
「すみません・・」
「いえ・・私が最初にドアをノックしなかったのがいけなかったんです・・」
そうだ私がミスったのだ。一応暫定的にお風呂の時間を決めてはいるが厳密な物ではない。
「でもお二人は、いまタオル巻いてましたよね?」
「いいえ裸でした。」
「わたしも・・」
やってもーた。
私はバスルームを出る。
「遠藤さぁぁぁぁぁん!!ごめんなさぁぁぁぁぁい!」
「いいよいいよ!!俺もノックするべきだった。」
「まさかぁぁぁ。人がいると思わなかったんでぇぇぇ」
「はははっ」
「?」
「栞ちゃん。気を使ってくれてありがとう。」
遠藤さんはニッコリと微笑んでなんか嬉しそうだった。
作戦は失敗したが・・これはこれで良しとしよう。
次話:第67話 コージェネレーションシステムを動かせる人