第65話 えっ子供を作るの?ー長尾栞編ー
二人を助け2週間がたった。
皆がリビングに集まっている。
皆が同じ方向を向いていて、そこには華江先生が立っていた。
助けられたの二人もだいぶ回復してそこにいた。
髪はみんなで切って綺麗にそろえて、きちんと食べて回復したのか目の下のクマも無くなりふっくらしてきたようだ。
白岩麻衣さんは色白でほんのりとした笑顔が綺麗な美人で、髪は暗すぎない薄茶色で横から分けていた。
畑部未華さんは和風美人という感じで、前髪を作り少しウエーブのかかった黒髪が肩にかかっている。
ふたりともまじまじと華江先生を見ている。
「さて・・皆さんいいですか?」
華江先生がみんなの前で話し始める。
「今まで私は疑似ゾンビウイルスと遠藤さんの精子による検証で、20回中20回のゾンビウイルス消滅を確認してきました。」
遠藤さんが顔を真っ赤にして下を向いている。
女性陣は命がかかっているので真剣に聞いていた。
「疑似ウイルスを数度変異させて実験もしましたが、間違いなく消滅しました。」
もしかしたら遠藤さんの精子が変異ゾンビウイルスには効かない可能性もあるかもしれないという仮説から、いろんな疑似ゾンビウイルスを作って検証したらしい。
どれも有効だったとの事だ。
「遠藤君の遺伝子に特別な因子を確認しています。親御さんも確認してみないと分かりませんが遺伝する可能性も否めません。」
・・実は今・・今回助けた二人からの質問について議論しているのだった。
麻衣さんと未華さんからでた疑問。
それは遠藤さんの子供はゾンビに対抗できるのか?という疑問だ。
「もちろん突然変異の可能性もありますが、遠藤さんはウイルスに感染した形跡もない。遺伝するかどうかを検証するには現状一つしか手段が無いのです。」
「先生それは?」
「はい、遠藤さんの子供の細胞を検証するという事です。」
あずさ先生の問いに華江先生が言いきった。
「えっと!!先生!俺の子供の検証ですか?」
遠藤さんがいきなりな事でビックリする。
「そう。子供の細胞も同じ因子を持つのかという事よ。」
「でも・・俺に子供なんていませんよ。子供はどうするんですか?」
「・・・・・・・・・」
華江先生は沈黙した。
そう・・彼にはもちろん子供がいない。
もちろん22歳の新社会人の遠藤さんはまだ結婚していないからだ。もし子供を作るとしたらこれからだった。
彼はどうやら女性と・・経験もないらしいのだ。
「俺の子供よりも、俺の親父かおふくろを探してみるというのは?」
「遠藤君。あのね地方もほとんど壊滅したのよ。遠距離まで確認しに行く事はとても危険だわ。しかも今の状況ではみんなが揃ってあなたについて行かなければならない。探し続けている間の食料や車などが不安要因としてあるのよ・・」
「たしかにそうですけど、どうすれば?」
「とにかくね・・あなたの子を検証する事が、皆の命を守る事になるのよ・・」
「えっ?だから・・どうやって。」
「作るしかないわね。」
「作る?」
「ええ、子供を作るしかないわ。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
皆が沈黙している。
「えっ!ちょっとまってください!みんななんで沈黙しているんです?俺は凄い事を言われているんですよ!」
私にもわかっている。
遠藤さんにとって無茶を言っていることくらい・・でも検証するにはこれしかないという華江先生の意見はもっともだった。
そして・・実のところそれは遠藤さん抜きですでに話し合い済み。
この議論は遠藤さんに対しての話し合いだったのだ。
「遠藤君。あなたの決心次第なのよ。」
「俺の決心・・」
遠藤さんだってこんなこと急に言われても答えようがないはず。だんだん可哀想になって来た・・
「遠藤君にはきっちり考えてもらってからでいいと思う。」
「考える・・」
遠藤さんはどうやら真っ白になってしまったようだった。
「作り方は?どうやって?」
「遠藤君あなたも子供じゃなんだから分かるはずよね。」
「人工受精とかじゃなくて?」
「残念ながらその施設もないし、私には知識も技術もないわ。」
華江先生が言う。
ここにその権威はいないということだった。
ならば方法はそれしかないはず。
「あれですか?」
「そうあれ。」
「あれ・・ですか。」
遠藤さんはまた固まってしまった。
しばらく黙り込んで・・彼が口を開く。
「あのぅ。でも先生!相手が!相手がいなければ出来ないですよ!」
遠藤さんが肝心なことを忘れていますよ!と言わんばかりに言う。
「え?あなたの目の前にいるじゃない。13人も。」
「えっ?」
「一人では検証できないわ。なるべく多くの検体がいるの。」
「なるべく多くの・・・」
遠藤さんは目を白黒とさせていた。
「すぐに返事をしてとは言わない。皆もそれくらいわかってるのよ。」
「はあ・・あり、あり、ありがとうございます。」
遠藤さんかなり動揺しまくってテンパっていた。
「しばらく考えてちょうだい。そしてこれは人間の未来の問題だという事を忘れないで。」
「人間のみらい・・」
「そう。」
「あの遠藤さん!私たちは全然大丈夫ですから!とにかく遠藤さんの気持ちの整理が必要ですし、遠藤さんの好き嫌いで選んでもらっていいと思います。」
私が遠藤さんの気持ちを落ち着かせるように言う。
「栞ちゃん・・」
「私もそう思う。」
「里奈ちゃん・・」
「私も優美も遠藤さんを尊重します。」
「翼さん・・」
「私なんて年上だから・・ちょっとダメかもしれないわね。」
「い、いえ!華江先生!そんなことは無いです!」
「それを言ったら、私も・・」
「あずさ先生も!そんなこと言わないでください。」
「華江先生やあずさ先生がそういったら・・私や奈美恵さんも・・」
沙織さんが言うと遠藤さんが慌てて言う。
「沙織さんも奈美恵さんもそんなことないですよ!」
「逆に、年下すぎて私なんか嫌じゃないですか?」
あゆみちゃんが悲しそうに言う。
「そんなことないって!」
「私なんか筋肉質だし・・ちょっとね・・」
「いや!愛菜さんは十分素敵ですから!」
「私たちは新参者ですし・・」
「ほんと二人ともそんなこと無いです・・」
遠藤さんは・・必死に皆をなだめるのだった。
あれ?
遠藤さんにストレスをかけないルールは?
どこいった?
私はちょっと首をひねるのだった。
次話:第66話 何度もヌードを




