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第64話 遠藤さんの子供は?ー長尾栞編ー

ホテルの地下で助けた二人は、今までずっとゾンビから逃げ回っていたらしい。


とても辛く怖い思いをしてきたに違いなかった。


二人には、お風呂に入ったあとすぐに休んでもらった。



二人が次の日に起きてきたのは、すでに午後2時をまわったころだった。


「すみません・・泥のように眠ってしまいました。」

「私もです・・少し頭痛がします。」


二人とも目の下のクマが凄かった。相当に疲れた様子で・・まだまだ休み足りないはずだ。


「まだ休んでいた方がいいわ。かなり衰弱していたから・・」


「まだ数日は休んでいても良かったんじゃないですか?」


奈美恵さんと私が声をかける。


「いえ、逆に不安で寝ていられないんです。眠りが浅いというか・・」


やはり精神的にかなり追い詰められているらしかった。痩せていてだいぶ顔色も悪い。


「地下のラボに点滴がありますから、お二人とも一度地下で点滴をしましょう。」


看護師の奈美恵さんが二人に促す。


「点滴・・ですか・・?」


「ああ、華江先生は外科医、北あずさ先生は麻酔科医、私は看護師なんですよ。皆さんの体の調子も少しは良くなると思います。」


「凄いですね・・」


二人は奈美恵さんに連れられて研究室に降りていくのだった。



2人が点滴をしてリビングに戻るまで、みんないつも通りに家事を分担していた。



私と翼さんとあゆみちゃんの3人は、掃除をしながら話し合っていた。


「彼女らは本当に疲れてますよね。」


「ええ。私達もビルの一室に隠れていた時は死を覚悟したもの・・」


翼さんがしみじみと言う。


「私も1人で逃げて遠藤さんと栞さんを見つけた時は、安心して腰が抜けそうになりました。」


「あの時、あゆみちゃんは1人で逃げて来たんだものね・・」


そう・・ここに集まっている人たちは私と遠藤さん以外、ゾンビに襲われ追われた人々だった。かなりの恐怖と戦ってここにたどり着いたのだ・・


「とにかくしばらくはゆっくりしてほしいですね。」


「ええ。」



1時間ほどが過ぎて、二人がリビングに上がって来た。


そろそろ休憩の時間なのでみんなもリビングに集まってくる。


「ああ、先生もお疲れ様です。」


「遠藤さんもここへ。」


全員で14人になった。


だいぶ大所帯となったが、リビングは広いのでみんながゆったり座る事が出来た。



沙織さんと里奈ちゃん、真下さんがお茶を入れてくれる。


「あの・・じゃあみんなで自己紹介を・・」


「そうね。」


私達12人は二人に名前と職業や素性を言っていく。



今度は二人の番だった。


「私は白岩麻衣と言います。保育士をしていました・・、何人かで逃げていたのですがどんどん人がいなくなってしまいました。一人で逃亡していたところで彼女と知り合いました。」


白岩麻衣さんと名乗る女性は大人なのに美少女といった雰囲気だった。翼さんのように色白で可憐な女性だった。


「私は・・畑部未華です。ビルなどの施設管理の仕事をしていました。私も集団で逃げ回っていたのですが、いつの間にか一人になってしまったんです。」


畑部未華さんはナチュラル系の美人だ。とても可愛らしい・・大人なのに優美さんとは違った可愛さだった。


「本当に大変だったのね。とにかくここは安全よ。」


「安全・・ですか?」


「ええ、それをこれから説明するわ。」


そして華江先生は遠藤さんの手を引いて二人の前に座らせる。


「男の人を見た時・・驚かなかった?」


「ええ・・驚きました。男の人でゾンビになっていない・・死んでもいないなんて・・」


「やはりそうよね。」


「はい。」


遠藤さんも神妙な顔つきで二人と向き合っている。


「えっと・・私はバイオテクノロジーの研究をしてきたの。」


「はい・・」

「ええ・・」


「それでね・・素晴らしい人を見つけたのよ。それがこの遠藤君。」


「ど・・どうも・・」


遠藤さんは素晴らしい人と紹介されて、ドギマギしている。


「彼の細胞は・・」


「はい・・」

「・・・」


「ゾンビ細胞を焼き殺すの。」


「え?」

「焼きころ・・・」


「信じがたいわよね。私も生物学的な事はよくわからないんだけど、彼は人と変った遺伝子情報を持っているみたいなのよ。」


「そんな細胞が存在するんですか?」


「ええ、信じがたいけど。」


「そんな・・」


それは・・信じられないと思う。どういう意味なのか分からないだろう。華江先生が分からないのだから誰にも分からない事なのだが・・


「あなたたちが逃げ込んだホテルも、以前はおそらくゾンビだらけだったの。」


「確かに周辺を数体はうろついていました。でもあそこは凄く少なかったんです。」


「そう・・それは、彼が焼き払ったから。」


「焼き払った?」


「意味が分からないわよね。でも文字通り彼にはゾンビを焼き払う能力が備わっているのよ。」



二人は・・ポカーンとした顔で遠藤さんを見つめていた。言われている内容もあまり理解していないようだ・・


全員の顔が・・・(わかるわぁー!)


となっている。



「その特別な遺伝子・・細胞は遠藤さんだけが持つものなんですか?」


麻衣さんが聞いてくる。


「ええ、今のところ見つかっているのは彼だけよ。」


華江先生も残念そうに言う。


「他にもいる可能性は?」


未華さんが疑問を言う。


「今のところ行動範囲内には確認できてないの。日本・・あるいは・・世界を探せば。」


「遠藤さんの両親は?」


「それが・・俺がいくら連絡しても・・連絡が取れないんです。遠いところに住んでおりまして、身動きも取れずにおります。いずれ探しに行こうという事になっているんですが・・今はまだ危険で動けていません。」


遠藤さんが答えた。


「それなら・・遠藤さんには、お子さんはいらっしゃるんですか?」


麻衣さんの問いに・・全員が


!?!?!?!?


となった。


「そういえば・・その事は誰も考えなかったわ。」


「華江先生・・・」


「そうね・・試験してみる必要はあるわね・・」


「そうなりますね。」


華江先生とあずさ先生が合意している・・


試験って・・どうするんだろう?


いや・・そんな・・


みんなの頭の中に?がたくさん浮かんだのだった。

次回:第65話 えっ子供を作るの?

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