第60話 先生どうやって採取したの? ー長尾栞編ー
ある日、華江先生と一緒に洗濯物をたたんでいた。。
しばらくのあいだ華江先生は研究にばかり没頭していたため、少し研究から離れたくなったようでしばらくラボに籠っていない。
そのため家事をして気晴らしをしていた。
私は華江先生のたたんだ衣類を、それぞれ振り分けて置いて行く。
洗濯ルームには私達二人だけだった。
「栞さんは、この暮らし慣れた?」
「はい。みんなが役割をこなしつつ特に争いも無いので気楽です。」
「そうよね。遠藤君にストレスをかけるの厳禁というルールが上手くいってるみたい。」
「そうですよね。誰が言い出しっぺだったかは忘れましたけど。」
「ルールがあるのと無いのでは違うわ。」
「そう思います。何というか・・規律みたいなものが出来ましたよね。」
「そうね。」
私はふと華江先生に聞いてみたくなった。
「あの・・華江先生はご結婚とかしてたんですか?」
「いいえ・・でも遠い昔に婚約者がいたことはあるわ。」
「すっすみません変な事きいちゃって。」
「いいのよ。結局ね・・私は医学の研究を突き進めるために仕事を選んでしまったの。住んでいたマンションの部屋に帰ったら別れの書置きがあったわ。」
「それから、どうなったんですか?」
「それきり。あっけなくおしまい。本当に素っ気ないものだったわね。もしかしたらあの人は私が出世していくのが嫌だったのかもしれない。」
「・・・男の人なら、やはり華江先生の才能に嫉妬してしまうかもしれません。」
「そんな大したものでもないのにね。結局・・私はさらなる高みを目指してしまった・・」
「すみません。思い出させてしまって・・」
「ふふっ良いのよ、別に引きずっているわけじゃないんだから。」
さすが・・華江先生は大人の貫禄がある。私にはそんな失恋に耐えられるだけのメンタルは無いかもしれない。
「栞さんは?」
「私は・・」
華江先生が話したんだから話さないといけないよね。
うん。
「大学に好きな人がいて同い年だったんですけど・・付き合い始めたばかりでした。」
「そうなのね・・」
「口づけをかわしただけでした。その後はこうなってしまって、もう会えなくなってしまって。」
「・・それは辛かったわね。もしかしたら感染してしまっていたのかしら?」
「それも分からないんです。ただ男ですから・・そうなのかもしれません。」
「こんなウイルスが蔓延するなんてね。」
「はい・・」
二人は黙々とみんなの洗濯物を畳み続けていた。少しの沈黙の後に私は口を開いた。
「あの・・もうひとつ変なことを聞いても良いでしょうか?」
「ええ。いいわよ。」
「あの・・聞きにくいのですが・・」
「うん?いいのよなんでも答えるわ。」
「えっと・・あの・・」
「ふふ、栞さんどうしたの?」
「あ・・やっぱりいいです!」
「そんな。そこまで言われたら気になるわ!言ってみてよ!」
よし!それならば意を決して話してみよう。きっとおかしい事じゃないよね?興味があったっておかしくないよね?
「あの遠藤さんの事なんですけど・・」
「ええ・・彼がどうしたのかしら?」
「この前、疑似ゾンビウイルスと・・えっと・・その・・あれを」
「ああ遠藤君の精子の事かしら?」
「え、あ、はい!それです!」
「あの検証結果は衝撃的だったわよね。元気に生きている細胞でなければ効果が出ないというのが分かったのは大きかったわ!」
「ま・・まあそうですよね!すっ凄いですよね!」
「え?どうやら聞きたかったのはそういう事じゃないみたいだけど・・?栞さんは、なにを聞きたいのかしら?」
どうしよう・・なんていったらいいのかわからないんだけど。
「あれはとてもイキがいいといいますか元気でしたね!みんなあんなに動くものなのですか?」
「まあそうね、年齢と個人差があるかもしれないけど、遠藤君のは健康そのものだったわよ。」
「そうなんですね。」
「ええ・・」
変な沈黙がまた流れてしまった。
聞き方も分からないので、話をそのままにして終わろうとした時だった。
「なんか、栞さんが聞きたいのはそれでもないようだけど・・」
「えっ!あ・・そう、そうなんです。」
「なあに?」
「えっと!採取方法を・・採取方法を聞いても良いですか?」
「採取方法?」
「えっとやっぱりいいです!」
「そういうことか・・わかったわ、まあ私も言いにくいんだけど大丈夫よ。」
「は、はい。」
私はどうやってそれを採取したのか全く想像できなかった。
あの日は遠藤さんが緊張して無理だと言ってリビングに戻って来た。
華江先生はどうしても研究の成果を出さなければならない一心だった。
そして・・
華江先生と遠藤君が2階に上がってから20分〜30分が経過したところ、採取して戻ってきたのだった。
「あの時、遠藤君はね・・とても緊張していたのよ。」
「あ、はいそれは分かります。」
「でもどうしても・・あの時は研究のために必要だったの。」
「そうでしたよね。」
「だから2階に一緒に上がってね、リラックスさせたのね。」
「リラックスですか?」
「んーまあ、リラックス・・という感じじゃないかしら。私なんかで遠藤君がどうできるか分からなかったんだけど・・・」
「はい。」
「遠藤君をベットに寝せてね。」
ゴクリ・・私は唾を飲みこんでしまった。
「私の上着のボタンを上から外していって、」
「えっとすみません!遠藤さんのではなくて先生の服のですか?」
「ええそうよ。遠藤君より先に私が上からボタンを・・・・・」
それから華江先生から聞いた話は・・刺激が強くてよく覚えていなかった。
だけどそうする事でスムーズに採取出来たんだ・・
私は目を白黒させながらも、黙って華江先生の話を聞くのだった。
60話ですー。華江先生の大人のレクチャーが役に立つ時はくるのか?楽しみです。こんなに長くお付き合いいただきありがとうございます!おかげ様でさらにブックマークも増えて、感謝しかありません!高評価もいただきありがとうございます。
次話:第61話 股関節ストレッチ