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第56話 未経験で疎い人達 ー長尾栞編ー

そして遠藤さんメンテナンス会議から数日がたったある日の事だった。


「あの・・遠藤さん!」


「なに?」


私は遠藤さんとふたりになったので話をしてみることにした。


「疲れたりしてない?」


「うん疲れていないと言ったら嘘になるかな。でもみんなも同じ条件だし。」


「あの・・マンションからいままで本当にありがとう。」


「いや、助け合うのは当然だよ。」


「私が遠藤さんの家の隣に住んでいなかったら、多分いまもこうして生きてはいなかったと思う。」


「こっちの方こそ救われたよ。どうしたの?ずいぶんかしこまって?」


なるほど、この人からやって欲しい事を引き出すのは至難の業かもしれない。


間違いなく私は助けられるばかりだったのに。


「私は何も・・」


「いや、精神的にかなり救われたよ。」


「それならいいんだけど・・」


「マジです。あのまま一人なら気がおかしくなってたと思う。」


確かに1人の時は私も死にそうだったし。


とにかく!本題を話さないと!


「遠藤さん肩はこらない?」


「ああ少しね。」


やっぱりそうだ!私たち女性陣に気をつかって緊張してるんだ。


「肩こりはほぐした方がいいよ。」


遠藤さんは肩に手を当ててぐりぐりと回した。


コキコキ音がする。


「確かにそうだ。」


「よかったら揉むよ。」


「いやいやいや、栞ちゃんも疲れてるんだし。」


「私はそんなでもないし。」


「じゃあ今度、電気屋に行った時に電動マッサージャーでも回収しようかな。」


「そう・・」


「栞ちゃんは何か欲しいのある?」


なんだか会話がぎこちないな。


「あと年下なんだから気を使わなくていいのに。」


「使ってないけどね。」


「女性の中に1人だけだと肩身が狭いんじゃないかと思う。」


「もう慣れたよ。」


「ストレスになりそうだけど、私が逆の立場なら疲れちゃうな。」


「大丈夫大丈夫。」


「なら良いんだけど。」


「なんか久しぶりに2人きりで話したね。」


「そうだね。」


「栞ちゃんとは1番話しやすい気がする。」


「そう?」


なんか・・2人きりだった頃はもう少し打ち解けていた気がするんだけど・・少しぎこちない。


間違いなくみんなに気を使っている証拠だった。


遠藤さんと最初から一緒にいたという理由で、悩みを聞くトップバッターに選ばれたけどなかなか上手くいかなかった。


「なんか飲む?」


「ああ、じゃあみんなでお茶にしよう。」


もしかしたら私と2人が気まずいのかな?


「遠藤さんは何がいい?」


「俺が用意するよ。」


やっぱりまた率先してみんなの為に動こうとする。


「そういうの好きでやってるんだよね?」


「気晴らしになるから。」


やはり確実にストレスになっている。二人で居た最初の頃とは明らかに違う。


「じゃあ俺はキッチンに行くんで先にリビングに戻ってて。」


「手伝いますよ!」


「いいからいいから。」


そして遠藤さんは私の肩を押すようにリビングに誘導した。



仕方なく一人でリビングに戻ると皆が一斉にこちらを向いた。


私が聞きだした結果を聞きたいのだろう。


「あのー。」


私が何を話そうか迷っていると。


「あまり良い感じじゃ無さそうね?」


あずさ先生が言う。


「はい。凄く気を使ってると言う事と、ストレスが溜まってそうだと言う事はわかりました。」


「まあ、それは聞かなくてもわかるわね・・」


「はい・・」


それがわかってるからどうしようか?と言っていたのだし。


「彼も、わがままのひとつも言えば良いのに。」


真下さんも困った様子で言う。


「私の演技でなんとか引き出せないかな?」


里奈ちゃんが言うと皆も期待した目で見つめる。


「そうよね。女優里奈ちゃんの天才といわれた演技なら、遠藤さんも心をもっと開くかも」


奈美恵さんが納得したように言う。



「あの・・もしかしたらなんだけど・・」


翼さんがボーイッシュな美人顔の眉をひそめて皆に顔をよせてくる。


「えっと彼・・彼女居たことないんじゃないかな?」


ぽつりと言った。


すると・・・あずさ先生、真下さん、奈美恵さん、優美さん、愛菜さん、沙織さんの6人が顔を見合わせる。


「あの翼さん・・いまそこ?」


あずさ先生が言う。


「え?」


「せんぱーい!天然ですかぁ?」


「うそ?じゃあみんな知ってるんですか?」


「彼の反応を見ていたら分かりますって!翼さん!」


愛菜さんが強く肯定する。


「えっと、翼さん分からなかった?」


奈美恵さんもえっ?って顔で言う。


「なんか・・もしかして・・先輩も?」


優美さんがまじまじと翼さんの顔をみる。


すると翼さんの白い美白顔が真っ赤になっていく。


「優美さん。武士の情けよそれ以上は。」


「ああ・・。」


あずさ先生と優美さんが顔を見合わせる。



しかし私にも何で皆が気が付いたのか分からなかった。


里奈ちゃんも同じような顔でぽかんとしている。


どうやらここにいる女子メンバーでは、遠藤さんに彼女がいたことない事を気が付かなかったのは翼さんと里奈ちゃんと私だけらしい。


ここは何も言わず黙っておこうと思うのだった。


《なんでみんなそんなことわかるんだろう・・》


きっと異性と付き合った事の無い私では気が付けない何かがあるのだろう。

次話:第57話 男は寝込みを襲え?

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― 新着の感想 ―
[一言] 或る意味、皆は華江先生と合流出来幸運だったよ? 古来環境の激変は虫垂炎の引き金だったから 進学・就職時期に虫垂炎は増えると 知合いの医師に聞いたよ? 昔帝国海軍では長期の航海前に 虫垂の摘出…
[気になる点] 今の文だと 大人には敬語で子供にだけ敬語だとやりづらいか 大人には敬語で子供だけ敬語じゃないのはやりづらい ならわかるんですけど???
[気になる点] 先生には敬語で私やあゆみちゃん、里奈ちゃんや高橋優美さんにだけ敬語だとやりづらいか
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