第05話:合宿 ー長尾栞編ー
テニスサークルのみんなが乗った高速バスは那須の駅についた。
迎えに来た2台のワゴンで向かった先はキャンプ場のログハウスだった。
「綺麗!」
「空気がうまい!」
「本当ですねー!」
「バス旅疲れたよー!」
「さ、みんな入ろ入ろ!」
みんなでログハウスの中に入ると、それぞれ4つの部屋があり男子と女子でわかれる。この合宿には12人が参加した。
部屋割りは次の通り。
Aルーム 3年 健先輩 陽治先輩
Bルーム 2年 迫水雷太先輩 大道啓介先輩 1年 上原唯人君
Cルーム 3年 北川華絵先輩 橋本麻衣先輩 2年みなみ先輩 公佳先輩
Dルーム 1年 長尾栞(私) 夏希 佐波梨美さん
2泊3日の予定だった。
近くにテニスコートがあって、そこで練習することになっていた。コンドミニアムになっていて、管理人さんからワゴン車を借りて買い出しに行く事となる。来るときに地元のスーパーがあったので、そこまで行けば食料が買えるようだった。
「しおりん!楽しいよぉー!」
「だねー!梨美さんもよろしくね!」
「うん、一緒の部屋でうれしい!」
「1年生3人で仲良くしようね!」
「「おおー」」
私と梨美ちゃんが拳を突き上げて返事をする。梨美ちゃんは地味な私や元気っ子のなっちゃんともまた違うタイプだった。ほわんとした雰囲気で、少し明るめブラウンの髪の、タレ目がかわいい女の子だ。間違いなくモテそうなのに彼氏はいないそうだ。
コンコン!
「はーい。」
ドアがノックされたので、なっちゃんが返事をする。すると陽治先輩と 迫水雷太先輩が来た。
「買い出しいくよー。」
「はい。」
私たちは自分達の荷物を置いて部屋をでた。外に出てワゴンが停めてある駐車場にいくと、華絵先輩と公佳先輩が車に乗って待っていた。
「行きは俺が運転するよ。」
陽治先輩が運転をかってでる。
「じゃあ帰りは俺がします。」
雷太先輩が答える。
「さあ乗った乗った!」
「「「はーい。」」」
女子が後部座席に乗りワゴン車は森の中の道路を下っていく。森は緑が生い茂り生命力を感じる。木漏れ日が優しくワゴン車に模様を作っていた。
外をながめてるだけで元気になりそうだ。
たどり着いた地元のスーパーには、地元農家さんの野菜がずらりと店頭に並んでいた。
お肉コーナーに行くと豚肉100グラム80円セールをやっていた。毎週火曜日はセールの日らしく安売りをしていたようだ。玉葱、キャベツ、人参、じゃがいも、飲み物、ビール、焼肉用カルビ、鶏肉、しいたけ、焼肉のたれ、カレールー、お米、お菓子を人数分買い込んだ。
全部で約14000円を12人で割り勘なので、一人頭1166円となった。これで初日の夜と次の日一日のみんなのご飯を買う事が出来た。
「いっぱい買うの楽しい!」
「ほんとほんと!」
「ははは!そうかそうか楽しいか!そりゃよかった!」
豪放磊落な雷太先輩が屈託なく笑いながら言う。
「今日の夜がカレーで、明日の朝はおにぎりだ!昼が野菜炒め定食で、夜がバーベキューなんだぞ!楽しみだろう!早く食いてえ!」
雷太先輩は・・見た目通りに食いしん坊らしい。
「お前は食うことばっかりだな。」
苦笑しながら、陽治先輩がわらう。
「雷太君らしくていいわ。」
華絵先輩も微笑みながら雷太先輩を見ている。
「作るときは陽治先輩と一緒がいいなあ・・」
公佳先輩がポツリとつぶやいていた。公佳先輩はきっと陽治先輩が好きなんだ・・
買ったものをワゴンに積み込んでいると、スーパーの人が近づいてきて話しかけてきた。
「お兄ちゃんたち!都会から来たんだろ!よかったらこれも持ってって!」
地元スーパーのおばちゃんが袋一杯に、桃を詰めて持ってきてくれた。もう片方の手には、まるまるとしたスイカの袋がぶら下がっている。
「え!いいんですか!?」
「いいよ!せっかく来たんだ!いい思い出にしてってよ!」
「あ・・ありがとうございます。」
華絵先輩がたくさんの果物を受け取った。
「お、おも!」
男の先輩たちが持ってあげる。
すると店先にあるファーストフードのお店から声がかかった。
「おー、お姉ちゃんたち!これ食べていきな!」
「いえ・・十分にいただきましたから・・・」
「いいっていいって!いっぱい買ってもらったんだからサービスサービス。」
と私たち7人分のソフトクリームをくれた。その場でみんなで食べながら話す。
「田舎の人は優しいね。」
華絵先輩がほっこりした感じで言う。
「買い出し部隊だけが得しちゃったな・・」
陽治先輩が申し訳なさそうに言っている。
「でもおいしぃ!」
公佳先輩もご満悦のようだった。
「なっちゃん、得したよね!」
「ほんとほんと!買いだし来てよかった!」
「私たちだけ悪いですね。」
私となっちゃん、梨美ちゃんが言う。
「よし!俺、食い終わったから運転するわ!!」
「「「「早!」」」」
雷太先輩が早くもソフトクリームを食べ終わったらしい・・私たちはまだ半分も食べていないのに。
「さあ、みんな待ってる!乗って乗って。」
みんなでソフトクリームを食べながら、ログハウスに戻っていくのだった。
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