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第48話 ゾンビが消えるのはなぜ? ー長尾栞編ー

お互いの事を知って、助かった4人は安心したようだった。


やつれてぐったりしていたが急激に眠くなってしまったようだ。


「みんな寝たようです。」


「とにかく睡眠をとらないといけないわ。」


「ええ、かなり疲れていたようです。」


「恐怖を抱いてずっとレストランに籠っていたんだものね・・」


「はい。」


部屋には遠藤さんと華江先生と私の3人だけになった。


「やはり皆、疲れていたのね。」


華江先生が言う。


「そのようです。」


遠藤さんがポツリと答えた。


「やっぱり私と遠藤さんはゾンビを見たことないから、もしかしたら皆さんより精神的に追い詰められていないのかもしれません。」


私が言うと華江先生が答える。


「恐怖で心拍数があがりすぎると極度に疲れてしまう。その分、集中力も上がるのだけど脳疲労を起こしてしまうし。栞さん達はそこまで追い込まれていないかもしれないわね。」


「俺達はこれからどうしたらいいでしょうか?」


「私に少し考えがあるわ。」


「それはどういう?」


私も華江先生の考えを聞いておきたかった。


「2人はゾンビを近距離で見た事はないのよね?」


「はい・・」


「そうなんです・・」


「だとすれば仮説だけど、二人のどちらかに何らかの原因があるとみているわ。」


「俺達どちらかに?」


「私達になにかが?」


私は普通に生きてきて特に何か特別なことがあるとは思えない。


あるとすれば・・遠藤さんじゃないかと思う。


「ええ。推測でしかないし荒唐無稽な話よ。それでもある程度確信しているわ。」


「確かに俺達はゾンビに会った事が無いんですよね。でもみんなは至近距離でゾンビを見て来た。」


「病院の屋上から天体望遠鏡で街を見た時ゾンビは見たわよね?」


「見ました。」


「はい。」


「でもマイクロバスで近寄っていくとどこにもゾンビはいなかった。」


「そうですよね。」


「遠藤君と長尾さんが私達の病院に来た時の事覚えてる?」


私たちが里奈ちゃんと真下さんを助けた帰りの事だ・・


「燃えるようにゾンビが消えたと。そして感染している人もいなくなってしまったと言ってましたね。」


「そうなのよ。さすがに目を疑ったわ!でも間違いなくあなたたちのマイクロバスが近づいたら消えたと思うのよ。推測でしかないのだけど・・」


確かに今まで私たちが行くところにはゾンビがいなかった。ゾンビが消えてしまったと考えるのが自然かもしれない。


《でもそれは・・どうしてなの?》


「俺達は特に何もしてないんですよね。」


「先生はどう考えるんですか?」


私が華江先生に聞いてみる。すると先生は考え込んでしまった。


「・・・・」


しばらく考えて口を開く。


「その謎をこれから一つずつ紐解いていくしかなさそうね。」


「そうですか。」


「しばらくは行動範囲を広げて見たり、私もラボで研究したい事があるわ。」


「ラボは病院にあるんですよね?」


「それなら大丈夫よ。この屋敷の地下にもラボはあるわ、そこで研究する事が出来る。おそらくここはセキュリティも万全だと思うし・・ただゾンビが大量に襲来したらひとたまりもないかも。」


「でも病院にいるよりは目立たず安全かもしれません。」


遠藤さんの言うとおりだと思う。この閑静な住宅街なら目立たずに潜伏する事が出来そうだった。


《でも何から始めたらいいのだろう?》


「先生。では明日から俺たちは何をしたらいいのでしょうか?」


華江先生は顎に手をやって考え始める。


「日中はどこか高台から望遠鏡を使ってゾンビの存在を確認しましょう。」


「俺達が近づけば消えてしまうかもしれません。」


「バラバラに近づいて試してみるのも必要かと思うわ。」


「バラバラにですか・・」


少し危険な感じがする。


遠藤さんや他の人と離れるのは怖かった。しかし私か遠藤さんのどちらかに何かのヒントがあるかもしれないのだ・・バラバラに動いて検証する事は必要だと思う。


「まずは少しの間、みんな休息を取った方がいいと思うの。」


華江先生が全員休んだ方がいいと言う。


《それもそうかもしれない・・私たちもあゆみちゃんと会ってからは、毎日のように動き回ってかなり疲労がたまってるし。》


「明日からここでしばらく共同生活をしましょう。」


華江先生が言うと遠藤さんもうなずく。


「みんなで役割分担して、家事を交代しながらやったらいいと思います。」


「そうよね。得意なことがあれば、それぞれのやりたいことをやってもらうのもいいしね。」


「俺もそう思います。料理なら俺がやりたいです。」


「まあ遠藤君ひとりに偏るのもあれだから、得意な人で分担していいんじゃない?」


「は・・はい。確かに他に料理したい人いるかもしれないです。」


「私は洗濯が得意なので出来れば家事はそれをしたいです。あとはお片付けかな?」


「まあ!栞ちゃんがいてくれたら私は助かるわ。お片付けが得意なら私の助手をしてもらってもいいかしら。」


「私は医療経験など無いですが・・」


「大丈夫よ、私が研究に没頭するといろいろ散らかっちゃうから、それを片付けてほしいだけ。あと検査キットを洗ってもらったりね。」


「俺も華江先生には研究に専念してもらった方がいいと思います。」


「じゃあ私手伝います!」


・・いま起きている3人で勝手に決めるわけにもいかないので、明日みんなが起きたら話す事にする。


「じゃあ・・私たちも寝ましょうか?」


「そうですね。」


「じゃあ・・俺はどこで・・」


「男の人だし一人がいいかしらね?」


「なんか俺だけ部屋を占有するのは申し訳ないですよ・・」


「ぜんぜん気にしなくていいと思うわ、できれば栞さんと隣り合わせの部屋の方がいいんじゃないかしら?二人を離して変な影響が出ても困るし。」


確かにそうだった。ひとりひとりじゃなく二人でゾンビを消す効果が出ているかもしれない・・


「はい」


「わかりました。」


というわけで私は遠藤さんの隣の部屋に眠る事となった。


次話:第49話 ゾンビ出現実験

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