第47話 大きなお風呂に入る ー長尾栞編ー
遠藤さんがワンボックス冷凍庫に電源を入れて冷凍肉や冷食をしまい込んだ。
「ふう!とにかく落ち着きましたね。」
遠藤さんが言うと皆が座り込んでうなだれる。
やはり皆、緊張と恐怖でへとへとになっていたらしい・・私もヘトヘトだった。
「今日助けられた方達は良かったらうちのお風呂を使ってください!」
華江先生が言う。
「ありがとうございます。」
女性の1人が礼を言うと皆が頭を下げる。
「ちょっとまっててね。」
少し席を外して華江先生が戻ってくる。
「よかった!うちはガスが生きてるみたい!お湯が出るわ!」
「本当ですか?じゃあ料理も作れる?」
遠藤さんが食いついた。
「ええ。とにかく皆さん汚れた体を洗ってはいかが?服は大型洗濯機に放り込んでいただいていいわ。」
「助かります!」
女性の1人が言うと、もう1人が言う。
「じゃあ・・私は最後で良いです・・」
「いえいえお先に・・」
女の人たちがお風呂を譲り合いはじめる。
すると華江先生が言う。
「4人で一緒に入っていただけますよ。」
「え!そうなんですか?」
「たぶん。」
華江先生に案内されて4人がぞろぞろとお風呂に向かった。
部屋のむこうから聞こえてくる。
「えーひろーい!」
「洗い場も1つじゃないんだ!」
「高級リゾートに来たみたい!」
「なんか申し訳ないわ。」
聞こえてくる声から推測すると、どうやら風呂場が広いらしい。
「みんな気に入ったみたいでよかったわ。」
華江先生がリビングに戻って来た。
《・・ようやくありつけた温かいお風呂に感動している頃だろうと思う・・私も入りたい。》
しばらくすると華江先生がまた風呂場に行く。
「あのー!皆さんのお洋服お洗濯してしまっていいかしら?」
「お願いして良いんですか?」
「ええ。」
そんな会話が聞こえてきたので、手伝おうと思い急いで私がお風呂場に行く。
「あの先生お手伝いします。」
「あら・・ありがとう。じゃあネットに入れてくれる?」
「はい」
ネットに入れなくてはいけない物を入れていく。下着は下着で分けてネットに入れる。それらを一気に洗濯機に放りこんだ。
《洗濯機が大きい!ただ・・使い方が分からないな。》
「あの・・」
「ああ、洗剤を入れてボタンを押すだけよ。ここあとはAIがやってくれるわ。」
「ええ!そうなんですね!」
スイッチを入れると洗濯機が動き出す。
「華江先生!今日入手したバスタオルと皆さんの服をここに運びませんか?」
「そうね!上がったら自分の服を選ぶといいわね。」
「だと思います。」
服を脱衣所に運び込み戻ってくる。
しばらくしてお風呂に入っていたメンバーが全員戻って来た。
「すみません!ありがとうございました!」
「生き返りました!」
「本当に助かるとは思わなかった。」
「ほんと・・えっぇうぇぇぇ」
皆がぐすぐすとし始める。
「とにかくよかったです!」
遠藤さんが雰囲気を変えた。
「それじゃ自己紹介しましょう!」
遠藤さんがみんなに声をかける。
「そうよね。」
華江先生も同意した。
「俺は遠藤近頼です。サラリーマン1年目です。」
「私は長尾栞、大学2年生です。」
「わたしは高田あゆみです。高校2年生です。」
「私は同級生の女優やってます橋本里奈です。」
里奈ちゃんはみんな知っているみたいでうんうんと頷いていた。
「私は真下瞳です。橋本のマネージャーをしています。」
「私は大角華江です。女医をしています。」
「私は同じ病院で、麻酔医をしている北あずさです。」
「私も同じ病院で看護師をしている牧田奈美恵です。」
先に古株の名前を全て伝えた。
「私は吹田翼と言います。OLをしています。」
色白でボーイッシュな顔のスッキリした美人だった。肌が白くて綺麗・・身長が少し高めで痩せていた。
「私は吹田翼先輩の会社で後輩の髙橋優美です。」
目がくりくりの可愛い後輩という感じの女性だった。モテそうな雰囲気がある。くるふわッという感じで可愛い。年上なんだけど可愛いと思う。
「私はビルの警備会社で事務をしている吉川沙織と言います。」
少し地味なイメージを受けるがメガネが似合う美人だった。メガネを外した時は凄く繊細そうな顔をしていた。体系は凄く力強さを感じる!頼りになりそうなお姉さんだった。
「私はバイク便メッセンジャーをしています!北原愛菜と申します。」
黒のストレートロングヘア―が綺麗なクールビューティーだった。体が引き締まっていて凄くカッコよかった。身体能力も高そうだ。
「本当によかったですよね。みんな良く生きて頑張ったんですね!」
遠藤さんが言うと・・4人はやっと助かった実感がわいて来たらしい。
ぐす・・
うぅっうっうっ
えぇぇうえぅ
うえぇぇぇ
泣いてしまった。
《そりゃそうなってしまうな・・皆必死に生きてきたんだもん。》
私ももらい泣きをしてしまった。
実際は私はゾンビを見ていないのだからそれほど苦労はしていない・・
それでも、二度と会えないかもしれない自分の友達や両親の事を思い出すと泣けてくるのだった。
とにかくみんな・・助かって良かった・・
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