第46話 失敗しない女医の家 ー長尾栞編ー
服と下着を大量に入手した私たちは、マイクロバスに軽油を詰めるためガソリンスタンドにいた。
ガソリンスタンドにゾンビが来るんじゃないかとみんなが警戒していたが、何も来なかった。
そして次に向かうのが家電量販店だった。
肉や生ものを保存するためにワンボックス冷凍庫を入手する予定だった。
「つきました。」
遠藤さんが運転するマイクロバスは家電量販店の駐車場に到着する。
皆が警戒しながら車を降り、電気量販店の自動ドアの前に立つと普通に開いた。
ここも電気が生きているらしかった。
服屋さんと同じように皆で固まって電気店に入っていくがやはり中には何もいなかった。電気は普通についているようだが、展示用のテレビは電源が入っているのに何の番組も映っていなかった。。
店内は多少散乱してしまっている様子だが、大型の家電は特に問題なさそうだ。
「華江先生の家の冷蔵庫は大きいですか。」
「そうね・・そこそこの大きさがあると思うわ。」
「オーブンレンジとかはどうですか?」
「オーブンもオーブンレンジもあるわ。食器洗浄機と乾燥機もあるから便利かもしれない・・私はほとんど家で料理してないから使ってないけど・・」
「洗濯機はどうです?」
「割と大きいし乾燥機にもなるタイプよ。」
「ホットプレートはありますか?」
「ああ、それはないわね。」
「わかりました。」
「じゃあワンボックス冷凍庫とホットプレートとスマホの在庫を大量にもっていきましょう。スマホはもしかしたら連絡が取れる唯一のアイテムかもしれません。壊れた時のために皆さんのと同じ機種かメーカーの物がいいと思います。」
全員で物を集めていく。
「あ、ドライヤーも3個くらいあってもいいかもしれませんよね。」
私が言うと、遠藤さんが一番高いドライヤーを3箱カートに積みあげる。
「ではマイクロバスに詰め込んでいきましょう!」
遠藤さんが言うと、自動ドアに密接するように停めたマイクロバスの後部ドアからどんどん中に詰め込む。
「それじゃあ遠藤さん。これみんなで運びますか?」
私が冷凍庫を指さして言う。
「はい。それではみなさんお願いします。」
全員でワンボックスの冷凍庫を運び出し、マイクロバスに乗せようとするがなかなか手こずってしまった。
角度をつけて斜めに入れたらどうにか入った。
「じゃあ全員のりましょう!」
皆でマイクロバスに乗り込み、最初に行った業務スーパーに再び戻って牛肉や冷凍野菜などを大量に回収した。
「それじゃあ・・華江先生の家まで。道案内をお願いできますか?」
「ええ遠藤君の隣に座るわ。」
華江先生が遠藤さんに道順を指示しながら家に向かう。
来た時と同じように誰もいない町を進んでいく。
華江先生の住んでいる町はとても閑静な住宅街だった。
「このバスだと正面の門は通れるかもしれないけど、地下ガレージには入らないかも。」
華江先生が言う。
「えっ敷地内にマイクロバスが入るんですか?」
遠藤さんが聞く。
「華江先生は業界では超有名な先生だから家も大きいのよ。」
あずさ先生が言う。
「そうですね。おそらく医療業界で知らない人はいないんじゃないでしょうか?」
看護師の奈美恵さんも言う。
「すみません。俺何も知らなくて・・」
遠藤さんが言うと華江先生が首を振る。
「いいえ遠藤君、医療関係者でなければ知る事は無いと思うわ。それほど有名だと思ってないし。」
「はは・・すみません。」
「そこの角を曲がってすぐ。」
マイクロバスは最後の角を曲がって行く。
「そこよ。」
華江先生が言う。
「え!大きい・・これ家なんですか?」
「ええ自宅よ。」
遠藤さんが驚いているが華江先生は冷静に答えていた。そこには高い塀に囲まれた3階建ての大きな邸宅があった。というか一つのマンションかと見間違えるほどたった。
門のところにマイクロバスが止まると、華江先生がポケットから鍵を取り出して門に向ける。
すると
ピピッ
スーッっと門が上がっていく。門の上の方を見ると何台もの防犯カメラが設置してあった。
「こんなの・・テレビでしか見たことないわ・・」
あゆみちゃんがポツリという。
「私もそう・・凄い・・」
私もあゆみちゃんと同意見じだった。
《この都心部にこんなに大きな家が建てられるなんて・・華江先生って一体どういう人なんだろう。》
マイクロバスは空いた門をくぐり中に入っていくのだった。
門を閉めてマイクロバスを降りる。
「それじゃあ玄関を開けるから」
華江先生がカードキーと鍵を使って家の玄関をあけると、一つの部屋か?と言うくらいの大きさのフロアになっていた。
《ここが全部玄関なんだ。》
玄関の先にガラスの自動ドアがある。
《家にこんな大きい自動ドアがあるんだ・・》
私は感動しっぱなしだった。
「中に入って。」
皆が華江先生について玄関に入ると、台になっているパネルの上に手を乗せる。
ピピ
どうやら指紋認証になっているようだった。
スーッと自動ドアが開いた。
「自動ドアにロックをかけるから。」
華江先生は自動ドアが開きっぱなしになるようにロックをかける。
「回収して来た物資をどんどん運び入れましょう。すぐにまずは全てリビングに入れて後でゆっくり仕訳ければいいんじゃないかしら?」
「わかりました。」
リビングに行ってみるともっとびっくりした・・リビング?
広すぎる。これ・・何畳あるんだ?
皆が凄いお屋敷に息をのんでいる中で遠藤さんが言う。
「とにかく皆さんお疲れだと思いますので物資だけ先に中に入れましょう。特に冷凍庫に電源を入れて肉をしまわないと溶けてしまいます。」
「わかりました。」
「もうすこし頑張りましょう!」
そんなことを言っていると最後に助けた4人が言い出す。
「華江先生・・・こんな汚れた格好で入ってしまってすみません。」
「どろどろなんです・・」
「汚してしまったらどうしましょう。」
「靴下を脱いだらいいのか履いたままでいいのか・・」
「何言ってるの!そんなにボロボロになってるのに気にしなくてもいいのよ。べつに汚れたってどうって事ないわ。早くみんなで終わらせちゃいましょう。」
華江先生が4人に気にするなという。
皆が申し訳なさそうに荷物を運び始めるのだった。
全員で運び込んだあとでマイクロバスのキーを閉めて玄関をロックし、自動ロックのガラスドアも閉めてロックする。
皆がやっと一息付けたのだった
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