第45話 下着を回収 ー長尾栞編ー
3Fフロアの服屋さんでは里奈ちゃんとあゆみちゃん、私、奈美恵さん、助けた女性のうちの2人が好きなだけ洋服を確保していた。
お店の大きい紙袋に詰められるだけ詰めて一人3袋くらいずつ持っている。
次は華江先生、北あずさ先生、真下さん、助けた二人の女性が好きそうなお店が2階にあるという事でそちらに向かった。2階はブランドショップが立ち並ぶ。
「遠藤さん。また電気をつけますのでお願いします。」
「わかりました。栞ちゃんたちの荷物はいったんここに置きましょう。」
そして女の子たちの袋をフロアの廊下に置く。
皆でお店の電気をつけ始める。するとある事に気が付く。
「二階って確か駅にも出れたんですよね?」
すると駅に向かう自動ドアが見えてくる。
「え?ゾンビ大丈夫ですかね?」
遠藤さんが言うので駅の方を一緒に見にいく事にする。自動ドアの扉の内側から駅の通路を見るが誰もいない・・
「やはり何もいないみたいですね。」
遠藤さんが言う。
「じゃあ続けて服を回収しましょう。」
皆で服を探し始めた。
この階には私の好きな石鹸も売っていたので、そこに行って石鹸を数個ゲットした。
やはり華江先生とあずさ先生、真下さんは大人っぽい服が好きなようだった。
《まあ・・大人だもんな。》
しかし・・女性はファッションや美容が好きなんだと思う。好きなだけ持って行っていいとなると欲が出たようで自分の好みの服を、紙袋にパンパンに詰め込んでいくのだった。
一通り服を入手したみんなは満足そうな顔で集まってくる。
「じゃあ・・そろそろ行きましょうか?」
華江先生が言うので、私がストップする。
「あの服もそうですが下着も入手しませんか?」
「あ、そうだったわね。むしろそちらの方が大事だったかもしれないわ。」
華江先生が納得する。
「じゃあ・・俺はこの階で待ってますから。」
「ダメ!」
「一緒に来てください。」
「遠藤さんがいないと不安です。」
遠藤さんが下着と聞いて恥ずかしがって、行くのを遠慮すると皆がついてくるように言う。
なんだかんだと遠藤さんがいないと皆不安なのだった。
遠藤さんが先に行く。
下着ショップがあるフロアにつく。下着ショップの電気と次々と点けていくと、遠藤さんはどこかばつが悪そうにしていた。
「これも可愛い。」
「これもいい。」
「ブラはこれでちょうどいい」
皆が選び始めるが遠藤さんが困っているようなので私が言う。
「あの下着ならかさばらないので、袋に詰められるだけ詰めて持ち帰ってから選びませんか?」
「それもそうよね。」
華江先生が同意してくれた。
皆もそれもそうだという顔になり、急いで大きな袋にブラやパンティを詰め込み始める。後は肌着だった汗を吸う肌着はいくらあっても困らないはず。
「生理が来た時のガードルもいると思います。」
「ボディスーツももらっていいかしら」
「紐パンとか持って行ってもいいものだろうか?」
「高いレースの下着セットは全て詰め込んじゃいましょう」
・・・本当にゾンビの世界なのだろうか?みんなショッピングを楽しんでいるようにさえ見えてくる。
しかし・・それでいいのだと思う。
ゾンビの世界だから暗く落ち込んでいなければいけないなどという事はない。こんな時だからこそ楽しんでいいと思う。私もあまり考えすぎずに楽しんで下着を詰め込んでいく。
「だいぶ袋がいっぱいになったみたいですね。」
私が言うと真下さんが答える。
「さすがに十分じゃないかしら?」
「でしたら・・最後に遠藤さんの服を見に行きましょう。」
「賛成!」
「そうしましょう!」
皆が賛成する。
「いや・・俺は今家にあるので十分ですよ。」
遠藤さんは遠慮していた。
「遠藤さん!ダメですよ。私たちがこんなに楽しんで遠藤さんが何もないなんてダメです。」
私がいうと皆がそうだそうだという。
全員でメンズファッションフロアへ向かった。
メンズファッションフロアにもおしゃれな服がたくさん合った。
遠藤さんにあいそうなカジュアルな服屋さんに入りみんなで選んであげる。
そして次にちょっとモード系のお店にいきコートを見つけてそれを羽織らせてみる。衣装に着られているようだったが、なかなかカッコよかったのでみんなでそれを持っていくように薦める。
結局のところ、遠藤さんも2袋ほどの大きな袋に大量に服を詰めて百貨店を出ることになったのだった。
百貨店の外に出てもゾンビはどこにもいなかった。
「やはりゾンビはいないようね。でも急いで行きましょう。」
「はい!」
皆が急いでマイクロバスに乗り込む。
マイクロバスの中は食べ物と日用品と服でいっぱいになる。
「けっこういいお洋服あったわね。」
華江先生がいうと皆が満足そうにうなずいた。
「私の着たい服もありました。」
あゆみちゃんが嬉しそうに言う。
「里奈はどうだったの?」
「結構掘り出し物があったよ!いい感じのデザインのがあったし、着回しが出来るように結構回収して来ちゃった。」
「お互いの服を交換してコーデしようよ!」
「いいよ!ありだよね!同じ店で買ってるからコーデしやすいしさ!」
それを聞いていた大人たちも、若い子たちの意見を取り入れ服をシェアすることにしたらしかった。
私も・・着たい服がたくさん着れそうなのでいい案だと思った。
こころなしか遠藤さんの横顔もうれしそうなのがうれしかった。
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