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第44話 洋服調達 ー長尾栞編ー

バスは繁華街にあるルマネ百貨店に到着した。


おしゃれな服や下着なども売っている百貨店で、私もよく利用したことがある。


「ここ・・ゾンビいますかね?」


私が遠藤さんに聞く。《・・・わかるはずないだろうけど・・・》


「まだゾンビを直接見た事がないからよくわからないけど、いないような気はしてる。」


「私もそんな感じがするけど油断は禁物よ。」


華江先生が念を押すように言う。


「ですよね・・せっかくここまで来ていきなり襲われるとか嫌ですもんね。」


あずさ先生が神妙な顔で言う。


「そもそも人々がこんな状況で贅沢品を取りに来ること自体あり得ない気もします。きっとここにはゾンビは集まらないんじゃないでしょうか?」


「私たちも服を選びたいですし行ってみましょう。もうドロドロの服を着続けるのは厳しい。」


助けたばかりの女性が言う。


「それもそうですね。」


真下さんが賛成した。


「わかりました。とにかく俺が先に行きますのでついてきてください。皆さんの服を確保しましょう。」


遠藤さんが言うと皆が頷く。


ルマネ百貨店はおしゃれな服が売っているビルだった。


百貨店に近づいて行くといきなりショーウィンドウが割れていた。


全員に緊張が走る。


「割れてますけど、大丈夫でしょうか?」


「どうでしょう。でもここから入れそうですし気配もなさそうなので入って見ませんか?」


結局遠藤さんの後ろについて、皆が割れたショーウインドウから中に入っていく。


マネキンが無表情で立っている・・


「マネキンが・・怖いです。」


私が言うと、牧田奈美恵さんも同意する。


「本当にギョっとしちゃう。」


「バラバラに動くのは危険ですよね?」


遠藤さんが言う。


「じゃあ里奈ちゃん達の服を、先に全員で見に行ったらいいんじゃないでしょうか?」


「ああじゃあそうしましょう。あなた達どこに行きたい?」


私が里奈ちゃんに聞くと少し考えて答えた。


「3階のグリーンコンチに行きたい。」

「グリコン私も行きたい!」

「あとブラックバイマウス」

「それも行きたい!!」


里奈ちゃんとあゆみちゃんはいきたい店があるそうだ。実は私が行きたいショップのドレイブレもその階にある。


「よし!じゃあそこに行きましょう。」


百貨店の店内は小さい窓から入る光のみなので薄暗い。


「やっぱり中は薄暗いですね・・」


「でも、かろうじて誘導灯や窓からのかすかな明かりがあるから歩けます。」


「どこかに電源はないのかしら?」


「避難用の誘導灯が付いていたので、お店のバックヤードに入れば電気を付けれると思います。」


遠藤さん、真下さん、華江先生に続いて私が言う。


「じゃあとにかく、二人のお目当てのお洋服屋さんに行きましょう。」


3階まで恐る恐る階段で昇っていく。


さっきまで階段の壁にあった小窓がなくなり、お店側の方はもっと暗くなっていた。


「あの・・携帯のライトがあります。」


助けた女性の携帯のバッテリーがあったらしく、ライトをつけてフロアを進んでいく。


「意外に明るいですね!」


「どうにか電源を探せそうです。」


「あの・・お店はここです。」


里奈ちゃんが言う。


グリーンコンチネンタルという看板があった。確かにおしゃれそうな店だが暗くて中がはっきり見えない。


「じゃあ・・遠藤さん一緒にバックヤードまで来てもらってもいいですか?」


「わかりました。」


携帯のライトを借りた私の後ろを遠藤さんが付いてくる。その後ろからみんながぞろぞろとついてきた。


私が恐怖で震える手で・・バックヤードのドアを開くと中はさらに真っ暗だった。


携帯のライトで照らしてもらうとつきあたりに電源を見つけた。


ガチャ


扉を開くとそこに、黒い電源スイッチが並んでいる。


パチパチパチパチパチパチ


6個あったスイッチを全部入れると、店内の天井にあるスポットが全部ついた。


「ついた!」


「明るくなりました!」


店内でじっと通路を警戒していたあゆみちゃんと助けた女性の1人が言う。


ひとつの店舗の明かりがついた事で周辺の店も見渡せるようになった。


通路の奥の店はまだ薄暗い。


「どうやらゾンビは一体もいないようです。」


遠藤さんが言うと皆がホッとした顔をした。


「この服屋さんで見たい人は見ててください!俺は向かいの店の電源もつけてきます!」


「里奈!一緒に服みよう。」


「うん一緒に選ぼう!」


里奈ちゃんとあゆみちゃんが服を見始めると遠藤さんが振り返って言う。


「気に入ったやつを全部持って行っていいと思うよ。」


「え・・それは良心がひけるというか・・」


あゆみちゃんが言うが遠藤さんが続けて言う。


「業務スーパーや薬局でも大量に物を持ってきたんだし、この際もう気にしなくてもいいと思うよ。」


遠藤さんの言うとおりだ・・いまさら気にすることはなさそうだ・・


なんだかその言葉で12人の女性のテンションが上がった気がした。やはり女性は新しい服をみるとテンションが上がるようだった。


「まずはゆっくり選ぶといいわ。」


真下さんが里奈ちゃんに向かって言う。


そして・・助けた女性たちと奈美恵さんも服を見始めた。


「ここ・・私の趣味じゃないわ。」


「先生私もです。」


どうやらこの店には、大人の華江先生とあずささんには気に入った物はなさそうだった。


「じゃ俺は次の店の電源つけに行きます!」


「私も付いて行きます!」


「じゃあ念のため私もいくわ。」


遠藤さんと私そして華江先生が他の店の電気をつけて回る事になったのだった。

次話 第45話 下着を回収

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