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第42話 新たな4人 ー長尾栞編ー

全員でマイクロバスに乗り込んで、ゾンビがいた方向にバスを走らせる。


すると・・異変が起こった・・


それは・・


「さきほどこの辺りにいたゾンビがいませんね。」


遠藤さんが言う。


「本当だわ。ビルの陰にでも隠れたのかしら?」


私が言うと皆が口々にいう。


「あいつらは車の音に寄って来るはずです。」


あゆみちゃんが言った。


「本当にそのとおり。病院内でもやつらは少しの物音に反応して群がってきたわ。」


あずさ先生も音に反応すると推測している。


「おそらくだけど・・バスが近づいた事で、病院で起きたゾンビ消失と同じことがおきてるのかもしれないわね。」


華江先生がある程度の事から結論めいた事を言うのだった。


「ただその原因が二人にあるのかはまだわからないですよね?」


あずさ先生が言うと華江先生が頷く。



さきほど天体望遠鏡で覗いたゾンビがいたはずの道のりには、まったくゾンビがいなかった。


女性たちが隠れているのが見えたビルの正面にあっけなく到達する。


「降りましょう!」


遠藤さんが言うと全員が緊張の面持ちで降りる。さっきはゾンビの群れがいた場所だし無理もなかった。


「危険だわ。慎重にかたまっていきましょう。」


華江先生が言った。


「そうですよね・・さっきは確実にこのあたりにゾンビがいたはず。急に出てきたら逃げられないわ。」


真下さんが冷静にいう。


恐る恐るビルの入り口に行くと、自動ドアが開きっぱなしになっていた。


「みなさんいいですか?入りますよ。」


《本当にゾンビはいなくなったのだろうか?本当はどこかに隠れていて襲われるんじゃない?恐怖で足がすくむんだけど・・》


そんな心配をよそにビルに入っても何もいなかった。


「とにかく上がらなくちゃ!階段を探しましょう!」


エレベーターホールの裏手に階段があったが問題が発生した・・。


そこは電気が切れていて暗かったのだ。


「しまった!懐中電灯を忘れた!」


「そうね・・私のライターならあるけど・・」


マネージャーの真下さんが言う。


「貸してください。」


真下さんが遠藤さんにライターを渡した。


しゅぽ


薄い灯りではあるがなんとか歩けそうだった。


「4階でしたよね。」


「はい」


私が遠藤さんに答える。


ライターの灯りを頼りに階段を上っていく。


全員の息づかいが聞こえる。


相当に恐怖を感じているらしかった。階段の踊り場につくたび角をまがるたびにビクビクしながらすすんでいく。


「熱っち!」


つけっぱなしで来たのでライターが熱をもったらしい・・遠藤さんがライターを落とすとあたりは暗闇になった。


「さ・・さがさないと!」


「ど・・どこ?」


「おちついて!みんな!」


「動かないように。」


ものすごい緊張感だった・・こんなところで襲われたらたまったもんじゃない。


「あった!」


あゆみちゃんが見つけたようだ。


「つけて!」


しゅぽ


すると階段に灯りが生まれどっちに進むのかが分かった。


「熱くなったらとまりましょう。」


あずさ先生が声をかける。


「はい。」


なんとか女性たちがいた4階に着いた。


雑居ビルの4階は飲食店街でお洒落な店が並ぶ。


「西側の部屋でしたよね?」


遠藤さんが聞くと皆が恐怖で声も出せなくなってしまったらしく、ただ頷くだけだった。


「間違いないはずです。」


私が遠藤さんに答える。


「じゃあ行きます。」


お店はどこもガラスが破られていた。その荒廃した感じがより一層恐怖を掻き立てた。


しかし女性達が隠れている部屋につくまでは、まったくゾンビに遭遇することはなかった。


「つきました。」


遠藤さんが言う。


「そのようですね。」


華江先生が答える。


そのお店はお洒落なイタリアンレストランだった。入り口にはチョークで書かれたメニューや、今日のランチというチラシが散乱していた。


中を見ても隠れていた人達は見えない。


「助けに来ました!」


遠藤さんが入り口から大きな声で叫ぶと、奥のほうから4人の女性が駆け出してきた。


4人のうちの1人が自動ドアの手元と1番下にある鍵をあける。


慌てているようで手が震えている。


4人がお店から廊下に飛び出てきて開口一番言った事は・・


「え?橋本里奈!」

「本当だ!橋本里奈だ!」

「え!」

「マジ?」


皆が里奈ちゃんに食いついていた。


まさかこんなところに救出に来るのが、飛ぶ鳥を落とす勢いの新人有名女優だとは思ってなかったみたいだ。


「とにかく!逃げましょう!」


遠藤さんが声をかけると皆が我にかえったようだった。


「あなた方は!?」


女性達の1人が言うと遠藤さんが言う。


「説明は後です!とにかく奴らが来る前に!」


遠藤さんの言葉に皆がひきつった顔で頷いた。


「遠藤さん!なら私の家がいいわ!広いから全員入れるしセキュリティーもしっかりしてるから無事なはず。」


華江先生が言った。


・・それもそうだった。


私たちのマンションの一室には全員は入りきらない。


「それならば一旦、業務用食品スーパーと薬局と服屋とガソリンスタンドによりませんか?」


遠藤さんが冷静に淡々と言う。


《なんでこの人はこういう時に冷静になっちゃうんだろう?そういう性分なのかな?》


それに華江先生と山下さんが答える。


「そうね!わかったわ協力する。」

「これだけの人数の食料を集めるのは大変だわ、業務用スーパーでは手分けしましょう。」


そして通路をもと来た階段へと戻る。


「また・・ここか・・」


「懐中電灯とかあればいいのに・・」


1階まではまたあの暗い階段を降りねはならなかった。


帰りの階段は助けに来た皆それほど怖がっていなかったが、助けた4人はあまりもの恐怖に震えていた。


ビルを出てマイクロバスにたどり着くまでも、結局ゾンビに会う事はなかった。


全員がマイクロバスに乗り込む。


新しい4人もいままで助けてきた人と同じように、髪の毛もごわごわで汗臭さや汚れた臭いがした。


とにかく最初は業務用スーパーに向かう事になった。


「食べ物の確保を優先します!」


遠藤さんが言う。


皆は黙って遠藤さんに従うだけだった。


帰りの道も荒れてはいるがゾンビはいなかった。


バスは順調に走り揺れている。


助け出した4人はあまりもの疲れのためかウトウトし始めた。


助かった安堵感で気が緩んだのかもしれなかった。


バスは車の散乱する道をひたすら業務用スーパーに向かって走っていくのだった。

次話:第43話 12人分の物資.

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