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第41話 初めてゾンビを見る ー長尾栞編ー

全員がマンションを出てマイクロバスに乗り込む。



バスの中から見る町は昨日と全く変わらず、特に何かが暴れていたような形跡もなかった。


「静かですよね。」


真下マネージャーさんがポツリという。


「本当ですね・・」


華江先生が緊張した面持ちで答えた。


「昨日と変らないですね。」


遠藤さんが言う。


みんなが緊張気味に周りを警戒して見ていた。



マイクロバスはマンションから遠ざかっていく。


・・しかしマンションを離れてしばらくすると街は、昨日より荒れた感じがする・・血が付いた車があったり商店のガラスなどが割れている。


「このあたりは昨日よりも荒れてますよね。」


私が言うと皆もそう思ったらしく黙ってうなずいた。


すると華江先生が言った。


「という事はこの辺でまたゾンビが出たか人が動いたという事よね?まだそのあたりに隠れてる人間がいるのかもしれないわ。」


「もしかしたら、家の中に潜んでいるという事ですか?」


遠藤さんが華江先生に聞く。。


「そうかもしれないわ。でもこれだけ外が荒れていると、恐ろしくて外に出る人もそういないわよね。」


「ですが家の中に籠りきって1カ月も暮らし続けるなんて難しいです。」


あずさ先生もそれに答えるように言う。


「たしかに・・遠藤さんのように買いだめが趣味の人が、たくさんいるわけありませんしね。」


私が言うと皆が頷いた。


「そうよね。」

「珍しいわよね・・」

「そういう男の人もいるんだぁって思いました。」

「私・・そういう彼氏理想ですよ。」

「確かに料理と買い物してくれるだけでも助かるわよね。」

「私は洗濯掃除が苦じゃないから、料理だけでも作ってもらえたら本当にうれしいわ。」


女子たちは遠藤さんの評価がだいぶ高いようだ。


《やはり生きる力が強い人はこういう状況では更にモテるのかもしれない。》


私は大学に入るまでも男の人と付き合った事が無いのでよくわからなかったが、買い物や料理が得意な男性はモテるらしい。


道には乗り捨てられた車があるものの特に人やゾンビはいなかった。


マイクロバスは順調にセントラル総合病院に到着する。


止まったのは病院正面玄関前のロータリーだった。


「みんな武器を持ちましょう。」


遠藤さんが言う。


包丁やナイフ、あとマンションで他の部屋にあったステンレス製の靴べらと金槌などを持ってバスを降りる。


「じゃあ行きます!皆さんついてきてください!」


遠藤さんよりも華江先生が先に車を降りた。


「ここは・・開いてないようですね。」


遠藤さんが言うと華江先生が答える。


「ええ。私たちが出てきたのは他のドアよ。」


正面玄関の自動ドアには電気が通っていなかったため脇に回る。


すると救急搬送用のドアが開くようだった。


「入ります。」


「気をつけて!」


「はい・・」


皆が頷いて恐る恐る中に入っていく。


《怖い・・・》


皆がかなり緊張していた。


「怖い・・」


私が里奈ちゃんの手を握ってあげているが震えているようだった。


病院の中は薄暗く静まりかえっていた。


「誰もいないようですね。」


「ええ、助けてもらうまではゾンビが大量に徘徊してたところなんだけど、キレイさっぱり消えちゃったのよ。」


遠藤さんの問いに華江先生が答える。


「静かだ・・」


華江先生の言うとおり病院の中には誰もいなかったようだ。


「ちょっと屋上に上がって見ていいですか?」


遠藤さんが言うと北先生が導いてくれる。


「わかりました行きましょう。階段はこちらです。」


皆で階段を慎重に上がっていく。


病院の階段には窓があって明るく昇りやすかった。


《ホテルの階段より怖さが少なめでよかった・・》


「ここから出れます。」


ガチャン


全員で屋上についた。


10階までゆっくり恐怖をこらえて上がってきたため、皆が変な汗をかいている。


病院は10階建てなので屋上はそこそこ高さがあった。


「ちょっと気になることがあって、望遠鏡で見てみていいですか?」


遠藤さんがそう言って手すりまで歩き天体望遠鏡を設置した。


望遠鏡を覗いてすぐに言う。


「やっぱり!ゾンビだ!」


「えっうそ!」


私が代わってもらい望遠鏡を覗き込む。


《本当だ・・ゆっくり当てもなく歩いている集団がいる・・》


「あれが・・そうなんですか?」


私は初めて見るためゾンビだと言われてもいまいち信じられない。


全員で代わりながらのぞいてみる。


「あれゾンビだね。」

「ええ・・ゾンビね。」

「ゾンビだ。」


あゆみちゃんも、華江先生も、里奈ちゃんも声をそろえてゾンビだという。


すると里奈ちゃんがなにかに気がついたようだった。


「あっ!ちょっとまって!ビルの窓に人がいるよ!」


「えっ!本当ですか?」


里奈ちゃんが言うので遠藤さんが驚いた様子で望遠鏡をのぞく。


「本当だ!人が隠れているようですが・・。」


「どうしましょう。」


「助けないと・・」


華江先生が言った。


「でもゾンビが・・」


里奈ちゃんが怖がっている。


「それでもなんとかしなければ。」


すると遠藤さんが言うのだった。


「とにかくあの女性達の所に行きましょう!」


「でも・・ゾンビがいるわ。」


「そうね、あれを突破してビルにたどり着けるかどうかも分からないわ。」


華江先生と真下さんが言った。


「ですが!せっかく生きている人を見つけたのに・・見捨てる事は出来ません!早くしないとやられてしまう可能性もある!

バスで入り口まで行ってどうにかあの人たちのもとに!何とかなるかもしれません!この病院で武器になるものを探していきましょう!」


遠藤さんは本当に勇気がある。向こう見ずなところもあるけど・・頼もしかった。


「私も!遠藤さんに助けられた身なので、遠藤さんがそうしたいと言うなら協力します。」


私が言うとあゆみちゃんも言う。


「あ、あの!私も行きます!2人より3人の方がいいと思います!」


「あゆみが行くなら私も行く!」


里奈ちゃんが震えながら涙をためて言う。


「里奈・・が行くなら私も行かなければならないわ。」


真下さんが言うと医療関係者の3人も行くという。


病院関係者の3人が武器になりそうなものがある部屋に案内してくれる。


武器を探している時も病院内にゾンビはいなかった。


消火器やメスと院長室にあったゴルフクラブ、硫酸などを入手してマイクロバスに乗り込む。


「じゃあみなさん!いきますよ!」


皆コクリと頷いた。


結局全員で女性たちがいるビルに救出に向かう事になったのだった。

次話:第42話 新たな4人 .

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― 新着の感想 ―
[一言] 着々と人類の救世主ルート(種馬&ゾンビ撲滅マシーン)に……未来の世界で宗教の信仰対象として崇められていそう笑
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