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第35話 3人でホテルへ ー長尾栞編ー

あゆみちゃんが私たちに聞かせるためにスマホをスピーカーモードにして置く。


「どこにいるの?」


「駅前の高級高層ホテル上階のレストランに立て籠ってた!」


相手も女の子だった。


「ひとりで?」


「マネージャーの瞳さんと2人で!」


「マネージャーさん?」


「インタビューが終わって、マネージャーとレストランで料理食べてたら警報がなって。だから部屋から逃げようと思ったら…スタッフが待ってろって…。いつまで待っても来ないからテレビつけたら大変なことになってて・・。」


「それから?」


「いつのまにかスタッフがみんな逃げてたの!」


「えっ!」


「そしたらエレベーターも止まってて…。階段で降りようとしたら下からうめき声や叫び声が聞こえてきて、慌ててレストランに入って鍵をしめたの。」


「それからずっとそこに?」


「うん・・」


なんとあゆみちゃんのお友達の女の子は、マネージャーと2人でレストランに立て籠り3週間以上しのいでいたらしい。


たぶんレストランに立て篭って正解だ。動いていたらたぶん死んでいたかもしれない。


「でも食材がきれちゃったの…、とにかく警察も消防署も業界関係者にも、電話かけまくってたんだけど繋がらなくてさ、持ってたのが仕事の携帯だったから友達の番号も分からなくて・・」


「そうなんだ。よく私の番号わかったね。」


「何とか思い出したのよ!そしたらあゆみが出たのよ!」


興奮していて収拾がつかない感じになっているようだ。


「それで、あゆみはどこにいるの?」


すこし冷静になったようだ・・


「近頼さんって人のうち。たぶんすでに警察も消防も壊滅したんだとと思う。」


「そんな状況酷いんだ…てか…近頼さんってだれ?」


「道で助けてくれた人。」


「そうか…わたしはもうダメかも…最後にあゆみの声が聞けてよかった…」


「まって!私がそっちにいく!」


「あゆみ!ダメだよここは危険だよ。警察も壊滅じゃ無理じゃない。」


「なんとかする!」


「もう….スマホの電源きれる。バイバイ!」


「ちょっ…」


プープープープー


電話が切れてしまったらしい。


「そんな・・」


気まずい雰囲気が流れた。しかし生きている人がいる事がわかっただけでもいいと思う。


「栞ちゃん!あゆみちゃん!俺、あゆみちゃんの友達を助けに行こうと思う。」


遠藤さんが言う。


やっぱりそういうと思った・・この人。


「えっ…行ってくれるんですか?」


あゆみちゃんの顔に光がさした。


「危険だけどさ!なんとかしなくちゃ!」


「あゆみちゃん!私もそう思う!」


生きている人がいるなら何とかしなければならない。冷静な遠藤さんとなら何とかなりそうな気がする。


「栞さん…」


あゆみちゃんの目に涙がたまり溢れそうになった。


「そうと決まったら急ごう。」


涙が零れ落ちる前に遠藤さんが言う。



私たちは急いで準備をして、包丁やフォークを片手に部屋を飛び出したのだった。


マンション1階はさっきと特に変わった様子はなく、足早に3人で軽自動車に乗り込んで出発させる。


「道路は相変わらずだね。」


「本当に・・。」


道路は車が散乱していて遠藤さんも走りづらそうだった。


「街には誰もいないみたいですね・」


道路に放置してある車を避けながら駅近くの高級高層ホテルに向かう。


「静かだ・・」


やはり人が全くいない…ゾンビも全くいなかった。それがかえって恐怖心をつのらせた。


「あのホテルだよね!」


遠藤さんがあゆみちゃんに聞く。ひときわ高いビルが見えてきた駅近くの高層ホテルと言えばあそこだろう。


「たぶん間違いないと思います!」


車がホテルに近づくにつれて街並みも荒れている気がする。


キキ―


車を停める。


ホテルの前にバリケードを作るように車やトラックが置いてあったからだ。


「これ以上車では進めないみたいだ。」


「そのようね。」


「ここからは徒歩で行こう。」


「はい。」


軽自動車ではそれ以上進めなかったため3人は車を降りた。


「バリケードを作ったようだね。」


「うん・・」


「ここにもゾンビが来たんですかね?」


「わからないけど・・」


ホテルに着くと自動ドアが半開きになっている。外からこじ開けるように侵入されたのかもともと開いていたのか?


・・ドアに電源は入っていないようだった。


「自動ドアの電源・・切ってあるみたい。」


「だな。」


ホテルの中に入ってみるが1階ロビーにはゾンビも誰もいなかった。


エントランスを置くまで歩いて行きエレベーターにたどり着く。


スッ


エレベーターのスイッチに触れてみたがうんともすんとも言わない。


「これもわざと切っているのかな?」


「侵入を防ぐため?電源が来ていないだけかも。」


「階段を昇るしかないみたいね。」


52階もあるけど、その間にゾンビに遭遇したらひとたまりもない。


「とにかく階段を探そう。」


恐る恐る館内の階段を探した。


「ここじゃないな・・」


「たぶんこっちじゃない?」


ウロウロと階段を探す。


「あった・・」


やっとみつけたが階段は暗かった…


「電気が入っていないみたい」


「暗い」


「怖い・・大丈夫でしょうか?」


あゆみちゃんが不安になっている。もちろん・・わたしもだ。


「ゾンビより転倒する危険がある。とりあえず懐中電灯とかあるんじゃないかな?警備室とかに」


「だったらホテルのカウンターにも置いてあるんじゃない?」


「それもそうだね。」


カウンターに向かう。


「カウンターの周りも暗いわね。」


「部屋に入ってみよう。」


恐る恐るカウンター奥に入っていく。


「はぁはぁ」


遠藤さんの息遣いも荒くなって額に汗をかいているようだった。


流石に冷静ではいられないよね。


私もあゆみちゃんも手を握りしめて後をついて行くのだった・・反対の手には包丁を握りしめている。


「あ・・なんかありそう。」


私たちが遠藤さんの後をついていくと、懐中電灯が壁にぶら下がっているのを発見した。


「あった!」


「何本かあるみたい。」


3人で懐中電灯をつけてみるとどれもちゃんと点灯した。



「じゃあ・・階段に行こう・・」


「うん・・」


3人は懐中電灯を握りしめてホテルの階段に向かうのだった。



それからは慎重に一階づつ昇る事になったが・・それが凄くきつかった。

次話:第36話 有名女優 

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