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第33話 マンション捜索 ー長尾栞編ー

部屋に戻り話しをした結果・・


このマンションにいるかもしれない住人を探す事となった。


「じゃあこのマンションの部屋を全て調べていこうと思う。」


遠藤さんが言う。


「どこから行ったらいいものかしら?」


私が聞く。


「このマンションは5階建てで1階は不動産屋と管理人室だよね。3階はベランダ伝いに窓から中を確認して人がいないの分かってるし、2階と4階5をで一部屋ずつ探して行こう…。1階のオートロックを開けないと人は入って来れないから、それほどゾンビの心配はないと思うし無事な人がいるかもしれない。



遠藤さんのこういう冷静なところが凄いと思う。


「わかったわ。」


私は遠藤さんの手を握りしめて相槌をうった。いままではゾンビの恐怖で動けないでいたけど3人なら心強かった。


それぞれの手に包丁やフォークを握っていた。


「じゃあ・・行くよ。」


遠藤さんの声に私とあゆみちゃんが頷く。


「よし!まずは1番上の階からいこう。」


遠藤さんが言う。


「はい。」


私とあゆみちゃんが頷く。


非常階段に入っても特に変わった様子はない。


「上に」


まずは5階へと向かった。ゆっくり階段を上がっていき5階の通路に出る。


「通路は大丈夫みたいだけど・・慎重に行こう。」


「じゃあ手前から?」


通路を恐る恐る歩いて一番最初の部屋のインターフォンを押してみる。


ピンポーン


3人に緊張が走る。


《しかし・・誰も出てこなかった。とにかく心臓が破裂しそうだった。》


「この部屋には誰もいないようだね・・鍵もかかってる」


「ですね・・」


「次の部屋はどうかな・・」


ピンポーン



《もうヤバイ・・・この緊張。手汗が凄い・・遠藤さんもあゆみちゃんも額に汗をかいている。》


しかしその部屋からも誰も出てくる事はなかった。


「ここも鍵かかってるね・・やっぱりいないのかな?」


「遠藤さん・・あの・・これずっと繰り返すんだよね?」


「ああ、もし怖かったらここで待ってて。奥までいって鳴らしてくるから。」


「いいえ!一緒に行きます。」

「私も!」


とにかく私とあゆみちゃんは遠藤さんから離れたくなかった。だけど怖くて足が進まない。


3人で5階の奥の部屋まで行ったが誰も出てこなかった。


「だれも・・いないな。」


「だれもいない。」


「は・・早く4階におりましょう!」


あゆみちゃんが焦ったように言う。


「そうね、そうしましょう。」


「よし、4階に下りよう。」


階段を慎重に下りて4階の通路にでた。


「じゃあ・・4階行くよ。」


私とあゆみちゃんは黙ってうなずいた。


《こ・・怖い!震えてきた。》


あゆみちゃんも震えているようなので、二人で手を握って遠藤さんについて行く。


ピンポーン


「やっぱり誰もいないのかな?」


4階の1部屋目は5階と同じく誰もいなかった。


「じゃあ・・次。」


ピンポーン


しばらくしても返事が無い。


「やっぱりいないみたいね。」


「そうだな・・」


2部屋目のインターフォンには誰も出なかった。


遠藤さんがドアノブに手をかけて回してみる。


ガチャリ


開いた・・・


鍵がかかっていなかった。


「えっ?」


「遠藤さん!空いたよどうするの??」


「どうするか・・」


「やめましょう。万が一があります!」


あゆみちゃんは部屋に入りたがらなかった。


「でも助けを求めている人がいるかもしれないから。」


「わ・・分かりました。」

「とにかく気を付けて。」



遠藤さんの額には緊張で汗がにじんでいた。


私とあゆみちゃんはもう倒れそうなくらいにドキドキしていた。


「じゃあ・・」


ガチャ


ゆっくりと開けてみる。


「入ってみるよ」


私は遠藤さんのTシャツの裾を掴んだ。


そーっと中に入るが誰もいない。


「誰もいないけど・・部屋は荒れてる。」


「本当だ・・あ・・血、床に血が!」


「血だ・・」


リビングには血の跡があった。血の匂いで部屋は異臭がした。


《う、うう。吐きそうになる。》


「で、出ましょう!」


「いや・・まって!」


「は・・はい・・」


「トイレやクローゼットも開けてみよう。」


もう遠藤さんがするままについて行くしかなかった。言葉も出ない。


スーッ


クローゼットをあけるが誰もいない。部屋には争った跡があるのに死体もない。


「男の部屋だよね。」


ゲームとタバコの吸い殻そして男物の服が脱ぎ散らかしてある。


「そうみたい。部屋の鍵を空けたままどこに行ってしまったのかな?」


「でも・・血が・・」


「確かに・・」


すると遠藤さんが何かを見つける。


「天体望遠鏡があるよ。」


「本当だ。」


あゆみちゃんが何かに気が付く。


「この天体望遠鏡は空を向いてないみたいですね。」


「だね。」


天体望遠鏡が窓の外に向けてあるが、空を向いていなかった。


「隣の家とかを見てたんでしょうか?」


「そうかもしれない。」


「とにかく本人はどこ行ったんかね…」


次に遠藤さんがシャワー室に向い、恐る恐る扉を開ける。


ガチャ


電気をつけて中を見るが誰もいなかった。


「怖いから早く出ましょうよ。」


あゆみちゃんが怖がっているし、私も実際は滅茶苦茶・・怖かった。もう倒れてしまいそうなくらいドキドキしている。でも遠藤さんはなぜか堂々としていた。


《この人、なんか安心感がある。どうして堂々としていられるんだろう?》


「わかった。とりあえず出よう。」


部屋を出てさらに隣の部屋のインターフォンも鳴らしたが誰もいないようだ。結局4階も全室不在のようだった。


「じゃあ2階に。」


「あ・・はい。」


もうすでにあゆみちゃんは震えがピークで歩けるか微妙だったけど、私が肩を抱きながら階段を下りて行った。


2階の通路も他の階と変わりがなかった。そして1軒1軒さっきと同じようにインターフォンを鳴らしてドアノブをひねる。しかし・・この階も誰もおらず、すべて鍵がかかっていた。


「やっぱりみんな食料を求めて出ちゃったんだろうか?」


「そうなんじゃないかな?だって食料がこんなに長く持つはずないし・・長期戦が出来る遠藤さんですら私と食料取りに行ったし。」


「だよなあ。」


「一応1階も行く?」


「そうしよう。」


結局、1階の管理人室と不動産会社にも誰もいない。


「あとはコインランドリー室だよな。」


「あそこ・・ちょっと怖いです。」


「3人で行けば大丈夫だよ。」


「は・・はい。」


そして3人がコインランドリー室に到着する。


ランドリー室の電気をつけ恐る恐る入っていくが誰もいない。


洗濯機が4台と乾燥機が4台の簡易なランドリー室だ。


「なんか・・洗濯物とか入ってるみたいだけど。」


「一応開けてしらべますか?」


「そうだな。手分けして調べてみよう。」


洗濯機をあけると洗いかけの衣類があったようだ。


「ここに洗濯物がある。」


遠藤さんに言われて見にいく。


1ヵ月も放置されていたからか生乾きの匂いがする。


「男の人のかな?」


「だと思う。」


「あ・・こっちの乾燥機にも入ってます。」


乾燥機に服が入っていた。女性もの服だった。


「あれ?女性ものの服ですね。」


「乾燥機を使ったって事は、少し前まで居たって事なのかな?」


「もしくはここにいた時に襲われた?」


「怖いです。」


もう一台の乾燥機にも女性ものの服が入っていた。しかし他にはこれといってなにもなかった。


「何もないみたいです。」


あゆみちゃんはもう限界のようだった。


「戻ろう。何もない。」


私達は一旦部屋に戻る事にする。


「結局マンション内に人はいなかった。部屋はどこも物音ひとつしなかったし。」


部屋に戻ると遠藤さんが話し始める。


「乾燥機を動かしてるときに襲われたって事かな?」


「乾燥機終了の時間までの間に部屋に戻ったとか?忘れてしまったのかもしれない。」


謎だった。とにかく人が消えた・・


私達には、ただ言い知れぬ恐怖だけが残ったのだった。

次話:第34話 生存者からの連絡

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