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第28話 食料入手 ー長尾栞編ー

店頭には雑多にカートが置いてあった。



怖かった。


とにかくいつ何が出てくるのかが分からない・・体が震える。


そしてふたりで4台のカートを転がしていく。


「栞ちゃんと二人分だけどいっぱい欲しいですよね。」


「はい。とりあえずレジは動いていないし店員さんもいないのですが・・大丈夫でしょうか?」


「この際仕方がないんじゃないでしょうか?生きる方が先決ですから。」


「わかりました。」


「とりあえず缶詰がいっぱいあった方が助かるはず。」


「はい」


遠藤さんの言うとおりまずは缶詰めコーナーに行ってみる。棚には普通に缶詰があった。床にもそこら中に散乱していたが缶詰なので問題なく食べられそうだ。


「ほとんど残っている感じですね。取りに来た人はいないんでしょうか?散乱していても持っていかれた形跡がない・・」


遠藤さんの言うとおりだった。ものが残っている・・


「たしかにそうですね。私たちみたいに取りに来た人がいないのでしょうか?残っているのは不思議じゃないですか?」


「なんで誰も持って行っていないんでしょう?」


「そうですよね。」


蟹缶、牛缶、サバやさんま缶、果物缶を大量に集めた。


「缶詰はこれだけあればいいですね。10個ずつあればしばらくは・・」


「はい。車に積み込める量もありますしね。」


「そうですよね。じゃあ栞ちゃん、乾物の方に行きましょう。」


「はい。」


つぎは乾物の方に行き大量の海苔をゲット。


「海苔は結構助かるんです。あとは煮干しとかするめがあればいいですね。」


遠藤さんに言われ、どんどんカートに積み込んでいく。


「次は調味料の方に行きましょう。」


「はい。」


遠藤さんはとてもてきぱきとしていた。業務用スーパーが趣味というだけあって売っている場所や、何をどのくらい買えばいいのかを心得ている。メモ無しでこれが出来るのは凄い。


調味料コーナーにも普通に調味料が置いてあった。床に散乱してはいるが全部使えそうな状態だった。


味噌5パックと醤油1.8リットル6本、徳用ケチャップ5、徳用マヨネーズ5をカートに入れる。


「遠藤さん。もっともっていかないんですか?」


遠藤さんに質問してみる。


「もしかしたら誰かが来るかもしれないからね。とりあえずほどほどにしておこうかと。」


「確かにそうですね。」


「でも不思議ですよね。普通に食べ物が置いてあるし・・もうなくなっていてもおかしくは無いですよね?」


「本当です。」


遠藤さんの言うとおり・・店内にある食品や調味料は、ほとんどが手付かずだった。


この状況で誰も取りに来ない・・そんなことがあるんだろうか?


不気味なのは床にたまにある血の跡だ…。


「栞ちゃん見てください血の跡があります。」


「本当・・・でも食料はそのまま・・どういうことなんでしょう?」


「わかりません。とりあえず主食も必要ですね。」


遠藤さんは冷静に動いている。遠藤さんに促されて米売り場に行って見る。


「精米日はもう1カ月以上まえだけど十分食べられます。」


「はい。」


米10キロ3つと小麦粉5袋を入手する。


「あと糖分やちょっとした食べ物を取りに行きましょう。」


「あ、はい。」


「こっちです。」


「遠藤さん詳しいですよね。」


「通い詰めてますから。」


お菓子コーナーも普通にあったのでポテチとチョコを大量に取り、ホットケーキミックスを棚の10箱全部カートに入れた。


「カートがそろそろいっぱいになってきました。」


「けっこう積みあがりましたね。」


「とにかく積めるだけ積んでいきます。」


「わかりました。」


「あとはレトルト食品とアイスクリームとジュースと水を入手します。」


遠藤さんは店内をどんどん進んでいく。


「レトルト食品や冷凍食品もほとんど手つかずだ・・」


「本当ですね・・」


「アイスコーナーもとけてませんね。」


「まだ電気が通っているのが凄いです。」


「奇跡ですよね。」


レトルト食品を大量に取り、冷凍食品やアイスクリーム3キロを積む。


「じゃあ栞ちゃん、飲み物コーナーに行きましょうか。」


「はい」


ジュース3箱、天然水2Lの6本いりダンボールを5箱積み込む。


これが結構かさばるが一番大事な物かもしれない。水道が止まる可能性もあるのだ・・水は絶対に必要だろう。


「カートにスペースがあるので肉を積みましょう。」


「はい。」


冷凍庫に行って冷凍牛肉を5キロ取り出して積み込む。


「こんなところでしょうね。」


遠藤さんは一旦ここで打ち切る事にしたようだ。


「だいぶ山積みになりましたね。」


そのままカートを押して二人で車に向かう。


カートにはかなり山積みなので重かった。


レジを通さないで行くのにかなり罪悪感があった。


《仕方がない生きるためだ・・》


自分に言い聞かせる。


「ごめんなさい。」


一応、いないお店の人に謝っていく。



車の後ろのドアを開けて後部座席を倒し、大量の食品を中に詰め込む。周りを警戒しながら詰め込んでいるが結局誰も来なかった。


「だれも・・来ないですね。」


「本当です。店の人もいなかったし暴徒もいない・・どうしたんでしょう?」


「街には誰もいなくなっちゃったんでしょうかね?」


「わかりません。」


「とにかく栞ちゃん!乗ってください!」


「はい。」



マンションを出てから一人も人に会う事はなかった。


スーパーにも誰もいないし、どこにも人がいないのだった。


・・町はどうなってしまったのか?


普通なら車で混雑する道が、乗り捨てた車でいっぱいだった。かろうじて道路を走る事は出来るが、かなり車を避けながら走らなければならなかった。


遠藤さんと二人で周りを警戒しながら街の中を走り抜ける。


「あの・・ガソリンが半分くらいしかないのでガススタに行きます。」


「はい・・もしかしたら、そっちの方に人がいるかもしれないですよね?」


「そうですね。」


二人を乗せた車はガソリンスタンドに向かって走っていくのだった。

次話:第29話 補給物資 

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