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第22話 籠城 ー長尾栞編ー

少し前に実家からの仕送りがあったので食べ物には困らなかった。


とりあえずご飯を炊きそしてレトルトや冷蔵庫にあるものでご飯を食べることにする。


次の日から節約する事を考えて1日2食になった。


水やガスはまだ出るし電気も止まっていなかった。


いつ電気やガスが止まるのか分からなかったので、生ものは全て調理して冷凍庫に放り込んだ。



梨美ちゃんからもあのあと連絡があった、どうやら疲労で眠ってしまっていたらしい。


テレビはほとんど静止画になっていた。情報はスマホのSNSだよりだったが数日過ぎていくSNSでつぶやく人も少なくなってきている。



電気が通っていたので、極力電話出来る時はなっちゃんや梨美ちゃんと話をしていた。


今はなっちゃんと電話中だった。


「ご飯は何とかなってる?」


「しおりんみたいに料理上手くないからあまり食材なかったのよね。ただラーメンとレトルトカレーがあったから半分づつ食べてる感じ。」


「ここから行けたらいいんだけど・・」


「だめだよ!しおりん!家から出ちゃダメ!」


「わかってるけど、うちには若干食料があるから何とか届けたいんだけど。」


「大丈夫だよ!しおりん何とかなるって!この辺も騒ぎが収まったようだしそのうち動けるようになるって。」


「ほんとうだね。なんかこの辺には少し人がいるみたい。」


「そうなんだ」


「うん。たぶん隣に引っ越してきた人は間違いなく籠城してると思うんだけど。」


「心強いね。いつまでそうしていられるかだけどね・・」


「うんいずれはダメになるよね。」


「梨美ちゃんはどうなんだろう?しおりん話してみた?」


「ちょっとかけてみようかな。」


「うん!梨美ちゃんもきっと寂しいと思う。後で私からもかけてみるよ。」


なっちゃんと電話を切ってため息をつく。なっちゃんも本当は孤独で辛いのに、いつも私や梨美ちゃんに気を使ってくれる。


「なんとか助けたいのに・・」



スマホの電源が10%になっていたので、コンセントにつないだまま梨美ちゃんに電話をしてみる。


「栞ちゃん!そっちは大丈夫?」


すると梨美ちゃんの方から声をかけてくれる。


「うん、何とかしのいでるよ。梨美ちゃんの方は?ご飯はどうしてる?」


「うちはかろうじてパスタが買いだめしてあったから、それを細々と食べてるよ。」


「お米はある?」


「うーんないかな。でも大丈夫だよ!きっとこの騒ぎもそろそろ終わるんじゃないかな・・」


「うん!終わると思う。警察だって自衛隊だっているんだから何とかしてくれるよ」


「そうだよね。それまでは頑張ろうね!」


「情報がないから心細いけどSNSで情報拾ってるところだよ。結構うちらのように部屋に籠って助けを待つ人がたくさんいるみたいだね。」


「うん。このあたりも静かになったみたいだし・・きっと皆部屋で待ってるのかも。お隣とか行って見ようかとも考えたんだけどさ」


「でも・・気を付けたほうが良いと思う。暴徒が押し寄せてくるかもしれないから。」


「うん、栞ちゃんも気を付けてね。」


「梨美ちゃんも!」



いまだに唯人君も雷太先輩にも電話がつながらない状況だった。



1週間くらいは何とか食料も持たせていた。


外からはサイレンが聞こえるわけでもなく何も起こっていないみたいに感じるのだが・・


私はなっちゃんと電話していた。


「しおりん・・私ね食べ物無くなっちゃった」


「えっ!そんな・・じゃあうちに少しあるから持っていく!」


「ダメ!まだ緊急事態の解除になってないからだめだよ。なんか・・うちの部屋の上の人の足音が聞こえるみたいだから、ベランダから声がけしてみようかと思ってる。」


「上の人もまだ家に籠ってるんだね。きっと節約しながらいるんだろうけど・・」


「もうアパートの他の部屋の人と協力してでも、食料の調達しないと厳しい。」


「上の人は男の人かな?女の人かな?」


「たぶん二人で暮らしてたと思う。」


「そうなんだ・・なっちゃん慎重にね!巻き込まれないように!」


「うんしおりんも何とか切り抜けてね!」


「わかった。なっちゃんもだよ!」


「うん!」


なっちゃんが意を決して動くようだ。私もそろそろ考えなきゃいけないと思う。もう間もなく食料が尽きてしまうからだった。



梨美ちゃんに電話をかけてみる。


「梨美ちゃん!そっちは大丈夫?」


「栞ちゃん。パスタがなくなっちゃった・・あとは調味料しかないや・・」


「まだこっちには少しあるから持っていくよ!」


「だめだよ栞ちゃん!そこからじゃあ遠すぎる!外に出れるならコンビニかスーパーに行ってみるよ。」


「わかった・・」


「栞ちゃん心配しないで!というか栞ちゃんだっていつまでも持たないよね!とにかく切り抜ける方法を考えなくちゃ。私、護身のため包丁を持って近くのコンビニまで行って見ようかと思ってるの!」


「えっ!ひとりで!それは危ないよ!」


「危なかったら急いで戻ってくるから大丈夫!とにかく何とかしなくちゃ!」


「合流出来たらいいんだけど・・」


「栞ちゃんの家までは電車で4駅離れているし難しいよ。」


「そうだよね。とにかく気を付けて!無理しないでね。」


「わかった!栞ちゃんも気を付けて!」


「うん!」



そして私は・・なっちゃんと梨美ちゃんの話を聞いて、少しでも延命のために今ある食べ物を分けて、1日1食で切り抜けるようにしようと思うのだった。




そして・・



それっきり二人との電話の連絡が途絶えてしまったのだった。

次話:第23話 隣人.

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