第20話 ダブルデート ー長尾栞編ー
ダブルデートは直ぐに実現し4人で遊園地にいったりした。
遊園地は入場制限があって人数が絞られていたが、きちんと予約券を買って入ったためゆったり遊ぶ事が出来た。
それからは、なっちゃんと雷太先輩と私と唯人君の4人で遊ぶ事が多くなった。
外にはなかなか出かけられなかったが、夕方から4人で開いているカフェに行って話をしたりした。
そのおかげもあって唯人君と私の距離もだいぶ近くなって、友達以上恋人未満のような関係になれたと思う。
「雷太先輩サークルの方はどうなんですか?」
私が雷太先輩に聞く。
「ああ、4年生は来なくなってしまったよ。」
「そうなんですねー。」
「俺が部長になっちゃったしな。」
雷太先輩は3年生になって部長になったらしかった。
「大変ですね。」
「まあこんな時期だし結局新入部員も入らないから、俺の代で終わりじゃないかなあ。サークル活動も禁止だから出来てないし・・」
「なんかやめちゃってすみません・・」
「いやいやいや、栞ちゃんや夏希のせいじゃないよ!もともとテニスサークルは廃れてきてたからね、そこに来てこのウイルスだろ。仕方のない事さ」
「そういえば・・陽治先輩がウイルス感染したって聞いたな。」
「ええ!そうなんですか?心配です。」
「ああ今は入院しているらしい。」
するとなっちゃんが言う。
「サークルに陽治先輩来てたの?」
「いや来てない。というか面会もしちゃいけないらしいから、今はどうなっているのか知らないよ。」
「男の人がなりやすいって聞くもんね・・」
「そうなんだよなあ。俺も大丈夫かなあ・・」
「いつもこの4人だし、そんなに出かけてもいないから大丈夫じゃない?」
「だよな!」
ウイルスはどちらかというと男性が感染しやすいらしかった。
唾液で感染するらしく一緒に食事したりすると危ないらしい、気を付けていれば大丈夫だというが、どこにでも危険がある事は間違いない。
逆に女性の方は濃厚接触が無いとかかりづらいらしい、いってみればキスや性交渉などがあるとなるということだ。気を付けていれば噛まれでもしない限りはならないだろうということらしい。
既にテレビのニュースはこのウイルスの事しか流れていない。
「カフェでもこうしてマスクをしながらのお茶だもんね。」
「そうだよねえ。」
「なんかみんなの本当の顔が思い出せなくなりそう。」
「なっちゃんの言うとおりだよね。」
「私は雷太君としおりんの顔はしょっちゅう見てるから分かるけど、唯人君の顔はしばらくまともに見てないからイメージ補正かかってるかもしれない。」
なっちゃんが言うと、唯人君も同じような事を言う。
「それを言うと俺も夏希ちゃんと雷太先輩の顔を、よく思い出せないかも。」
「そりゃ俺もだな。じゃあここでマスク取ってみんなで顔見せようぜ」
「そうですね。近い人たちだけでも顔みたいですよね。」
そして4人がみんなでマスクを外した。
「ふふふ。なんかみんなの顔をまじまじと見るなんて面白いよね。」
なっちゃんが言う。
「本当だ。なっちゃんってこんなに可愛いんだっけ?」
「はあ?しおりん家でご飯食べる時、いつも見てんじゃん!」
「「「ははははは」」」
またみんなでマスクをかける。早くマスクをとって安心して誰とでもご飯を食べれる日が来ると良いのだが・・
「大学でももう2,3人ほど入院した人が出たらしい。」
雷太先輩が話す。
「東京は多いんですもんね。逆に東京を出て行けなくなったし、実家にも帰れなくなってしまったし。今年のゴールデンウィークは東京ですごす事になりそうです。」
「あ、そうだね。ゴールデンウィークどこにも行けなそうだしね・・。」
「じゃあ4人で過ごしません?」
「栞ちゃんと唯人君がいいならいいよ!」
なっちゃんも答える。
ひととおりカフェで話をしてそれぞれに分かれて帰る。
「じゃあしおりん!明日学校でね!」
「はーい。」
雷太先輩となっちゃんは手を繋いで逆方向に歩いて行った。
私と唯人君は私の家の方角へ向かう。
唯人君の家は2つ先の駅なのだが、いつも家まで送ってくれるのだった。
「唯人君も男だし感染に気を付けてね。」
「そうだね。でも俺栞ちゃん達以外と遊ぶことないし大丈夫だと思うけど・・」
「えっ?そうなんだ!私達とだけなんてしらなかった。」
「栞ちゃんはいつも夏希ちゃんと一緒だったからね。でもこうして4人で遊べるようになっていつも会えるようになったから。」
《ええー!そうかぁいつもなっちゃんと一緒だったから気を使っていたのか!》
「あの・・唯人君。気にせずにどんどん誘ってくれていいんだけどな・・」
「そうなのかい?えっとじゃあ!気軽に誘う事にするよ?」
「むしろそうしてくれたらうれしい・・」
「わかった!なんか俺・・気を使いすぎていたのかもしれないね。」
《そうだよ!いま気づいたの?あなたは気を使いすぎなの!!》
まもなく家に着く。今日もあっというまに二人の時間は過ぎた。
「あの、今日もありがとう!うれしいな。私は唯人君の彼女・・でいいのかな?」
「俺なんかの彼女になってくれてありがとう。」
「えへ。」
唯人君が私に近づいてきてマスクを外した。私もマスクを外す。
私の心音はどんどん上がっていく。
ドクンドクン
唯人君の唇がわたしの唇に重ねられた。
その時私は決して疑わなかった。
この目の前にいる初恋の人が私の初めての人になるんだと思っていた。二人で初めてを迎える日が来るのだろうと・・
この時は確信めいたものがあったのだ・・
それが儚い夢だとも知らずに。
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