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第185話 一触触発

私たちは以前銃撃された、京葉臨海コンビナートのエネルギー関連会社の近くに到着した。


以前来た時よりだいぶ荒廃している。既に人間が住んでいるとも思えないのだが、草むらを車で踏みつけたような跡もあった。


「これ、いつのものですかね?」


沙織さんが言う。


「うーん、そんなに前じゃないとは思うけどね。」


あずさ先生が答えた。


「そんなに頻繁に動いているわけじゃなさそうだけど、ここひと月内の事だと思うわ。」


吉永さんもそう言った。


「おそらく食料を回収しに行ったんじゃないのかしら?」


「倉庫もあるようだし、たぶんそうだと思うわ。」


「じゃあいるって事ですよね?」


私が緊張しながら聞いた。


「里奈…がんばろうね。」


「うん。」


あゆみが声をかけてくれる。


「そうね。」


「じゃあ行くわ。」


「「「「はい。」」」」


皆が車に乗り込んで武器を構える。いつどこでどうなるか分からないので、皆が緊張しているようだった。


「あそこです。」


「門は閉まっているわね。」


とうとう到着してしまった。


「そのようですね。」


前の時と同じように、中には簡単に乗り入れられそうになかった。


「じゃあ拡声器を準備しますね。」


沙織さんが手際よく準備する。足元のボックスに置いていた拡声器を取り出して、助手席に座っている吉永さんに手渡した。


「車を横付けして。すぐに走り出せるようにエンジンはそのままにね。」


「はい。」


そして門の前に車を回すと、吉永さんは助手席の電動ウインドを開けた。


「さて…。」


吉永さんが息を整える。


『この工場に立てこもっている方はいますか?私たちは食料を持っています、更に銃や武器類も持っております。抵抗なくこちらに投降してくだされば、共に生きる事が可能です!私たちは拠点をもち平和に生きています!ですがもし抵抗する場合は、私たちはここを立ち去り二度と現れません! 』


拡声器に向かって話し始め、一度話すのを止める。


しばらく待つが何も返事は無かった。


『私達に敵対の意志はありません。もし投降してくれるならば安全な暮らしを約束します。繰り返します!私達に敵対の意志はありません。』


すると…


アクションが起きた。


建物の中に動きがあったようだ。どうやら車のエンジンをかけているらしい。しばらくすると門のそばまで車に乗って人がやって来た。


すると窓が開いて一人の女性が叫んだ。後部座席からは銃がこちらを向いていた。


「お前たちはどこから来た!」


「東京よ。」


吉永さんが普通に答える。


「ゾンビの中をか?」


「ゾンビの影響はそれほど受けていないわ。」


「銃ならこちらにもある!物資やエネルギーを奪いに来たのではないか?」


「違うわ。それに武器ならこちらにもある。」


こちらの4台の窓を開けて一斉に銃口を出した。


「なっ!」


「すみやかに投降したほうが身のためだと思うわ。それに私達には食料もエネルギーもある。むしろ安全に暮らしているわ。」


「そんなに大量に銃があるものか!モデルガンで騙そうとしているのではないか?」


どうやら私たちの武器がおもちゃだと疑っているようだ。だんだん危険なムードが漂ってきている事が分かり、私達全員に極度の緊張が走った。


「本物よ。」


「やはり私達をだまして物資をとるつもりだろ!」


「やる気なら既にやっているわ。少し証拠を見せた方が良さそうね。」


「しょ・・・証拠だと!」


相手が慌てている。


えっ?証拠?ど、どうするの?


私も慌てていた。


「里奈さん。ロケットランチャーを威嚇射撃で撃つといいわ。」


吉永さんがめっちゃ過激な事を言う。


「えっとあの…、ロケットランチャーをですか!?」


「もたもたしてたら戦闘になるわよ。」


「わ、わかりました。」


すると私たちの乗っている車を門から遠ざけていく。私たちの車が離れたところで、門の壁に向かって私がロケットランチャーを撃つことになった。


「えっと…あの…。」


「当てないでよ。」


「は、はい!撃ちます!えっと当てません!」


正直…自信が無いが、やらねば本当に人を殺す事になるかもしれない。


私は相手から見て車の反対側に降り、ボンネットをの上からロケットランチャーを構え、何度も訓練したように門に向けた。


えっと…かまえはこう。安全装置を外して、ここを持って反動に気を付けて。


カチ


バシュゥゥゥゥ


ドガーン!


物凄い爆炎と共に壁に大穴が空いてしまった。


パラパラパラ


遅れて破片が落ちて来る。


「車をもどすわ。里奈さんロケットランチャーを捨てて車に。」


「はい。」


ロケットランチャーをそこに投げ捨てて、再び車に乗るとまた門の側に向かって戻る。あたりは爆炎の煙で白っぽくなっていた。


「あれ?」


「いませんね。」


「当てて‥‥ないわよね?」


「当ててません。」


「逃げたんじゃないですか?」


相手の車は跡形もなく消え去りどこかに行ってしまったようだった。


「助けを呼びに行ったのでしょうか?」


沙織さんが言う。


「どうかしら?とにかく皆銃を構えて!トランシーバーで他の車にも伝えて!」


吉永さんが少し慌て気味に言う。


「は、はい!」


沙織さんが慌ててトランシーバーで他の車にも伝えるのだった。


皆が車から降りてバリケードのように車を前にしながら、銃を構え始めるのだった。結局こうなった場合に話し合っていた形になった。とにかく私たちは相手の出方を見るのだった。


いよいよ…私は自分の手を汚してしまうのかもしれない。


そう思っているのは私だけではないようだった。皆に戦慄が走り青い顔をして工場に向けて銃を構えるのだった。


「なにも起きませんように‥‥何も起きませんように…。」


私はつい呟いていた。


「里奈さん。覚悟を決めなさい。」


吉永さんの声に私は気を引き締めるのだった。


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― 新着の感想 ―
こう言う場合自身の避難所に皇族が居ると教えるべきだよ? 皆んな知らんだろうが日本は立憲君主制の国だから相手に 自衛官・警察官が居たら投降せざるを得ないよ? 自衛官・警察官の第一義は民衆の安全より 皇族…
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