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第181話 生き残り武装

そして数日後、私たちは10トントラック3台ほどで京浜コンビナートに乗り入れて、総出で食べられそうなものを運び出して来た。ホテルの食糧庫には入りきらず、更に他の部屋を確保して倉庫にし物資を運び込んだのだった。生活必需品なんかもかなり回収する事が出来たため、今はトイレットペーパーのある快適な暮らしだった。


「京浜も都心部のコンビナートと一緒だったわね。」


あずさ先生が言う。


「そうですね。」


遠藤さんが答えた。


「京浜コンビナートがあれだけ荒廃していたのは、都心も京浜も人口が多い分、おそらくはゾンビも増えちゃったのね。」


「そう思います。」


確かにその通りだろう。都心部も京浜も人口が多いのでゾンビになってしまう人も大量にいたに違いない。そのため人間の生存者に関しては絶望的だった。


「あの、千葉のコンビナートでは生き残ってる人いましたよね?」


私が言う。


「そうね。そう言われてみると、あのあたりなら何とかゾンビをしのぐ事が出来たのかもしれないわ。」


あずさ先生が言った。


今は高層の喫茶フロアで5人でコーヒーを飲んでいるのだった。


私、遠藤さん、あずさ先生、翼さん、みなみさん。の5人。


「でもあんなにいっぱいのコーンは嬉しかったです。」


「ああ、あのバケツポップコーン?」


そう、私はポップコーンの原料をバケツに詰めて、石蓋をして火をくべてポップコーンをしたのだった。


「はい。皆で食べれて良かった。」


「そうね。久々に出来立てのポップコーンなんて食べたわね。」


翼さんが言う。


「はい。」


皆が外でワイワイやったポップコーンが凄く楽しかったのだ。


「それで、千葉のコンビナートの事だっけ?」


私が話していた内容を再度あずさ先生が確認するように言う。


「はい。人口過密じゃないところのコンビナートや、食糧倉庫には人が居るんじゃないかと思うんです。」


「たしかにそうだね。」


遠藤さんが言う。


「田舎なら人間が生存している確率も高いんじゃないでしょうか?たとえば離島なんかは人が居るかもしれないです。」


「でも里奈ちゃん。ボートなどで行くのはいいけど危険だよ。」


「はい。だけどゾンビの心配はいりませんよね?」


「まあ確かに。」


「なので北陸とか東北とか、中京のどこかには人が居るんじゃないでしょうか?」


「その確率はだいぶ高いと思うわ。」


あずさ先生が肯定する。


「ですよね。」


「でも、人間自体が危険かもしれないわね。」


翼さんが言う。


「はい、そうなんです。あの千葉のコンビナートの時のような事も検討しなくちゃならないかなと思います。」


千葉で発砲された事件の事を言う。


「それはそうですけど…。」


コンコン


すると入り口のところで吉永さんが立ってノックしていた。


「あ、どうぞ。」


「ごめんね。話をしているのが聞こえたものだから。」


「いえ。」


そして翼さんが吉永さんのコーヒーをついであげた。


「里奈ちゃんの言う事も一理あるし、これからの生存にとって他の人間を探す事は重要だわ。」


「やっぱり吉永さんもそう思いますよね?」


「私はそう思う。でもね…。」


「でも?」


「おそらくこれから先、そうやって人探しをするときには…。」


吉永さんが口ごもる。その先を言うのをためらっているようだった。


「なんです?」


「…ええ。人が居た場合、そして武装していた場合。どうする?」


「逃げるしかないかと。」


「うーん。私は実際はそんな簡単じゃないと思うわ。」


「といいますと?」


「人をね、殺さなくちゃいけない時が来る、と言う事は想像出来てる?」


「! 」

「!」


私と翼さんが息を呑むが、遠藤さんもあずさ先生もうんうん頷くだけだった。どうやら二人には想像ついていたらしい。


「追ってきた場合や、誰かに危害を加えられた場合黙っているわけにはいかないわ。その時は相手を殺す事も出てくると言う事なの。生きた人間を救うための行動で、救うべき人間を殺さなくてはいけない時がある。 」


そうだった。相手が簡単に引き下がってくれる場合だけじゃない。千葉の時は諦めてくれたのか、追いかけては来ていなかったようだけど、今度もそうだとは限らなかった。


「‥‥。」


私は黙り込んでしまう。


「私はね、それでも…殺す事があったとしても、やるべきだと思うわ。」


吉永さんが続けた。


「殺す事があっても?」


遠藤さんが言う。


「ええ。このままではじり貧だと思うの。幸い顔が売れている里奈ちゃんや菜子様がいるわ。もしかすると二人からの説得なら相手も応じるかもしれない。」


「ただ…そこまで持っていくのが危険では?」


翼さんが言う。


「ええ。そうね。だからこちらは重武装をしていくべきだと思うわ。」


「重武装ですか?」


遠藤さんが聞き返す。


「ええ。警察の装備じゃなくて…。」


「自衛隊?」


「そう、もしくは米軍基地に行って銃を調達する事が出来れば。」


吉永さんは強い意志でそう言った。


「まってください。」


あずさ先生が言う。


「なんでしょう?」


「米軍基地や自衛隊は助けに来たりしないところを見ると、おそらくは壊滅している事でしょう。ですが私たちのような考えで武装を回収しに行く人いませんかね?もしくは自衛官や米兵が生きていたとすれば…こういう事態になって、一般の民間人に牙をむいたりはしないでしょうか?」


「…あるわね。」


「武装集団が必ずしも平和的であるという保証はどこにもないのでは?」


「あずさ先生の言うとおりね。近づく事も危険かもしれないわね。」


そう…


私たちはゾンビではなく、人間の驚異の方が危険度が高い事に気が付いたのだった。

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皇族が居れば練馬の第一師団が良いよ! 第一師団は皇族警護が第一義の師団なので皇族が 専用の車で向かえば最優先で保護するよ?! 之はもう洗脳された行動指針だからねえ 生きてる皇族を見たら100%従うよも…
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