第168話 武器調達に名乗り出る
あれからしばらくはゾンビの検体を回収する事について何度も議論を重ねた。
そして決まった事がある。それは皆にウイルスの危険がある以上は、血清の開発が必要じゃないかと言う事。今までは無かったが、もしゾンビウイルスに感染したら私たちは地上から消えるのだ。そう考えれば治療薬の準備は不可欠であると考えられた。
「と言う事でよかったかしら?」
あずさ先生が会議の内容の確認をした。
「はい。」
「良いと思います。」
「わかりました。」
皆が同意する。
ホワイトボードに書いてある内容は次の通りだった。
・男児、妊婦は拠点に残る。
・遠藤さんは1キロ圏ギリギリに待機
・妊娠していないものは全員で行く
・ゾンビを捕獲する
・離れた場所から注射器で採取
・生存者は感染未確認のため放置
・銃の確保
・トランシーバーの携帯
・大型バスに外壁などの補強
・いざという時は直ぐに遠藤さんに連絡
みんながホワイトボードを見ていた。
「えっと、それじゃあやる順番ですよね?」
遠藤さんが言う。
「ええ。」
「銃の確保と大型バスの補強作業は俺が参加して良いんですよね?」
「そうね。だからゾンビ確保作戦決行はまだ先になるわ。」
あずさ先生が言う。
「補強バスならあらかじめ補強されている物がありますよ。」
吉永さんが言う。
「補強されている物?」
「囚人移送用のバスです。」
「なるほど、あの金網の張ってあるやつですか!」
遠藤さんが言う。
「そうです。」
「なるほど、金網がはっていればガラスの部分は何とかなる。あとは車体に近づかれないようにする工夫と言った所ね。」
あずさ先生が言うと皆が頷く。誰もが一度は道を走っている護送車を見たことがあるからだ。
「それと銃なんですが。」
遠藤さんが言う
「はい。」
「警視庁に行きましょう。以前は断念して帰ってきましたが、十分に準備をしていけば灯りは確保できます。」
「そうですね。あの時は逃げ帰ってきましたが、今回は銃に詳しい人が居るしね。」
「そう。吉永さん銃の確保に同行願います。」
「もちろんです。」
「まずはそう言ったところね。」
あずさ先生が会議をしめる。
私達はまず警察署周りをすることになった。銃の確保と護送用のバスを確保するためだ。
「じゃあ警察署をまわるメンバーを決めましょう。」
「そうね。」
話し合いの結果、遠藤さんと吉永さん、愛奈さん、沙織さん、あずさ先生、みなみ先輩、未華さん、そして立候補した私となった。
「里奈ちゃんはいかなくても…。」
と言う意見も出たのだが、私はそれを押して参加希望を出した。私は今までの作戦に何度も参加しているから、自分で役に立つと思ったのだった。
次の日になり銃と装甲車の確保チームがホテルの前に集まっていた。
「じゃあみんな気を付けてね。」
瞳マネがバスの外から私たちに声をかける。
「ええ。留守の間おねがいします。」
あずさ先生が窓越しに答えた。
「里奈も頑張って。」
「はい。」
すでに他のメンバーとはホテルの中で挨拶を交わしていた。子供達もいるのでみんなが送り出しには来ていない。
「じゃあ愛奈さん。行きましょうか?」
バスの運転席に座っている愛奈さんにあずさ先生が言う。
「はい。」
ブロロロロロ
バスは警察署に向かって走り出した。以前は大量の遺体を見つけて戻って来た場所だ。今回はバッテリーやライトと運搬用の台車も全て持ってきている。さらに遠藤さんがいる為ゾンビの危険性は低い。
「とにかく明るいうちに戻って来れるようにしましょう。」
あずさ先生が言う。
「そうですね。」
遠藤さんが答える。
私達のバスは順調に警視庁へとたどり着いた。拠点からはそれほど離れていないため時間はかからなかった。拠点付近や都内には私たちが動く為、車両を避けた場所も多々あるため速やかに来れたのだった。
「では行きましょうか。」
「ですね。」
皆が緊張の面持ちでバスを降りる。
「以前入った場所あいてますかね?」
「まあ人間がいるとは思えないからたぶん。」
「そうですね。」
物資を下ろして台車に積みこみ、私たちは以前入った入口へと向かう。
「開いてましたね。」
「恐らく人間が入り込んだと言う事はなさそうですね。」
吉永さんが言う。
「そのようです。では行きましょう。」
遠藤さんが言う。
そして私たちは警視庁へと入り込んだのだった。
中はやはり暗くて光の届く場所とそうでない場所の明暗がはっきりしていた。
「では点けます。」
パチ
台車に乗せられたバッテリーに繋いだライトに照らされて館内が明るくなり見通しが良くなる。
「いきましょう。」
「はい。」
そして私達は館内をくまなく調べ、用意していた電動ノコギリやバールでこじ開けながら銃などの武器を調達していった。今回は吉永さんがいる為、必要なものをいろいろと指示してくれる。ダンボールに銃や弾丸やホルスターをドンドン入れて行く。
「以前来た時はあんなに苦労してダメだったんだけどね。」
遠藤さんが私に笑いながら言う。
「とにかく良かったです。いずれきっと必要になってましたよね?」
「そうだね。」
私達はその日、大量の銃と囚人護送バスを2台入手した。どうやら装甲車もあったらしいのだが、その鍵が見当たらずに今回は断念したのだった。
いよいよ、ゾンビ確保のための準備が整ったのだった。