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第16話 実家 ー長尾栞編ー

ムード満点のクリスマスが終わって1週間。


リア充のクリスマスを過ごしたあと、あっというまに年末年始の休みになった。


「はあ・・」


私は恋の熱にやられていた・・


クリスマスイブに彼とキスをした。


それ以上は進展しなかったけど、でも確実に・・彼との距離は縮まった。


あんなに優しい人だったなんて・・私の事をあんなに考えてくれていたなんて・・


《にやけちゃうぜ!》


ついにやけてしまう。



私はお正月に親からの言いつけどおり、新潟の実家に帰省していた。



何もしないで食っちゃ寝食っちゃ寝していた。久しぶりのお母さんの料理がおいしくて・・太りそうだった。


「少しは節制しないと・・デブっちゃうわ・・」


家族と一緒にコタツでゴロゴロしながらなっちゃんとSNSをしていた。


「栞、学校はどうなの?」


お母さんが聞いてきた。


「うん。普通だよ。平和に勉強してます。」


「彼氏とかできたら教えなさいよ。」


するとお父さんが聞き耳を立てるようにピクっとした。


「彼氏なんていないよ。」


私は嘘をついた。初キスをした唯人君の事はまだ家族に言っていない。家族になんて言えるわけがない・・実は心配されると思ってキャンプのレイプ未遂事件も親には伝えていなかった。


《ほんのちょっと後ろめたいけど、何かあったわけじゃないから・・心配させないようにしておこう。》


「勉強するために都会の学校に行かせているんだからな!恋愛なんてやってる暇はないぞ!」


お父さんがクギを刺すように言う。


「はーい。」


「姉ちゃんが恋愛なんてするわけないよ。」


瑠偉るいにはわからないでしょうけどね、私に興味がある人の一人や二人いるんですからね。」


「見栄はってるし。」


「瑠偉には彼女いるの?」


するとお母さんが答えてきた。


「それがね・・栞。この子ね!このあいだ女の子連れてきたのよ。」


「えっ!!うそ!どんな子?学校の子?」


「うるせえよ。」


瑠偉は凄くめんどくさそうに私をあしらう。


「それがね・・可愛いのよ。お母さんもびっくりしたわ・・瑠偉も趣味がいいんだって関心しちゃった。」


「えー!どんな子?なに関係?」


「それが部活のマネージャーらしいのよ。」


「マネージャー!キャー!サッカー部の?いっちょまえに恋愛なんかしてんの?」


「うるせえって、恋愛じゃねえよ。」


「まったく、彼女を泣かせるような真似しないでよ。」


「彼女じゃねえしさ。ただ俺の部屋を見てみたいつーから連れてきただけだよ。」


「それは間違いなく、あんたに気があるんじゃないの。」


「ねーよ。たぶん。」


《ああ・・きっとこいつも・・我が弟ながらどんくさいんだ。いや・・私の弟だからどんくさいのか・・私も唯人君の気持ちに気が付かずにヤキモキしてたしね。》


「まあ、その子と仲良くしてあげなさいよ。」


「べつに言われなくてもするよ。」



夜12時近くになった。お父さんは酔っぱらって寝てしまっている。


お風呂からあがった、お母さんと私と瑠偉の3人でテレビを見ていると


ゴーン!


除夜の鐘が鳴り始めた。


《ああもう今年も終わりか・・なんか大学に行ってからいろいろあったな・・》


そんなことをしみじみと思いながらいると。


「ハッピーニューイヤー!」


お母さんが私たちに声をかける。


「「ハッピーニューイヤー」」


「母さん・・なんで英語だよ。」


瑠偉がお母さんにツッコミを入れていた。


「さて明日は朝から初詣行かなきゃね!もう寝なさいよ。」


「はーい。」


「俺はもうちょっとしたら寝るよ。」



私は自分の部屋にいって布団にもぐった。電気毛布を入れていたから布団は温まっている。


「今年もいい事ありますように!」


《明日の朝、1年の抱負でも立てるとしますかぁ》


そしてそのまま眠りに落ちた。



朝になり家族全員で初詣に出かける。神社の境内にはすでに人がたくさん並んでいた。


寒くなるので家族みんなダウンジャケットとコートで厚着をしてきた。並んでいる間は寒いのでいつも手もみカイロを忍ばせて出てくる。


出店が並びおいしそうな匂いを漂わせていた。



「お参り済ませたら、お守り買ってりんご飴舐めようかな。」


「えー姉ちゃんりんご飴なんて舐めんの?あれうまいかな?」


「なにいってんのよ、私は初詣といったらりんご飴なのよ。」


「俺は焼きそばとクレープ。」


「えっ!またそんなに食べるの?」


私が瑠偉に向かって言うと、お母さんが割って入る。


「まあまあいいじゃないの、お正月くらいねえ・・お父さん」


「そうだな。父さんも酒飲ませてもらってるし少しくらいいいんじゃないか?」


「まったくお父さんもお母さんも瑠偉には甘いんだから。」


《昔から両親は瑠偉には甘かった。私にはお姉ちゃんなんだから!といって厳しく育てたくせに瑠偉にはいつもこうだった。》


「それにしても人多いわね。」


「毎年の事だけど多いな。」


「あ・・雪がちらついてきた。」


「寒いね。」


ようやく私たちの番になり鐘を鳴らしてお賽銭を入れる。お賽銭はいつも500円玉だった、お父さんが財布に用意しておいてくれるのを受け取って入れるのだ。


2礼2拍手1礼してお願いごとをする。


《試験がうまくいきますように!唯人君との恋が発展しますように!》


私利私欲的な事をお願いしてしまった。


そしてその後、売店でお守りを買っておみくじを引く。


「えっ?だ・・大凶?大凶とかおみくじに入れてるもんなの?」


なんとおみくじは大凶だった・・


「やった俺大吉だ!」


瑠偉は大吉。


「私は中吉」


お母さんは中吉。


「父さんは吉だな。」


えっ?私だけ大凶!そんなばかな・・とりあえず厄をはらうように木の枝に結び付けた。


《いや・・こんなの当たらないわ。きっと逆よ!逆に良い事があるのよ!》


そう思いながらりんご飴をかじるのだった。

次話:第17話 ウイルス

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