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第158話 脱出

みんなが必死にゾンビを撃退するため、ホウキや折れたモップで叩いている。私は先に入って来たゾンビの頭を消火器で集中的に叩いていた。


「だめ!押される。」


あずさ先生が言う。


「く、クローゼットに!みんなでクローゼットに隠れましょう!」


華江先生が叫ぶ。


私達は急いでウォークインクローゼットに入り込んで、ドアを閉める。そしてウォークインクローゼットのドアが開かないように全員で押さえこんだ。鍵はついていないので心元なかったが、とにかく内側から押し込めば簡単に開く事は無さそうだった。


シーン


「‥‥」


静かになった?


ズルッ

ズルッ


「いやぁ!近寄ってくる。」


菜子様が言う。


みんなでクローゼットのドアを押さえて向こう側の音を聞いていた。


「どうしましょう。」


「とにかくもう逃げ場はないわ。」


「このままでは。」


ドン!


クローゼットのドアが叩かれる。


「きゃぁぁぁぁ」


「こないで!」


菜子様と私が声を出してしまう。


「突破、突破できないでしょうか?」


吉永さんが言う。


「どうやって…。」


「このドアを開けて出来るだけ私がくい止めます。その間にあのバリケードをどけてゾンビを中に入れましょう。そのゾンビたちも私が相手をしますから、その間に皆さんが逃げれば可能性はあります!」


「いいえ。あなた一人が犠牲になったところで恐らく突破は出来ないわ。それに吉永さんにその責任はないわよ。」


華江先生が言った。


「しかし…。」


「吉永、華江先生の言う通りだわ。一人でも多い方がくい止められるはず。」


菜子様が言う。


「わかりました。」


ドン!


ドン!


「ゾンビ増えたみたい。」


「そのようね。」


愛菜さんとあずさ先生が言う。


「とにかくみんなで押さえましょう!そしてここからは声を出すのを、極力止めた方が良いかもしれないわ。やつらを引き寄せている可能性がある。」


華江先生が言った。


それからはただ全員がひたすら無言でドアを押さえていた。


ドン!


ドン!


ドン!


どうやらもう一体増えたようだった。しかしゾンビは意志をもたずクローゼットのドアも適当に叩いているようで、簡単には侵入してはこなさそうだった。


しかし…


ドン!


ドン!


ドン!


ドン!


更に増えたようだ。どうやらクローゼットのドアの向こうには4体以上のゾンビがいるようだ。


ひそひそと話す。


「ふ、増えたみたいです。」


「力が…力が強くなってきた。」


「時間の問題だわ。」


私と菜子様、あずさ先生が言う。


グッ


ググッ


「押される!」


「だめ!」


「力を入れて!」


ひそひそ話すのは限界でみんなが叫び始めた。


ドン!ドン!


ドン!ドン!


ドン!ドン!


ドン!ドン!


どうやら声に反応したゾンビが勢いを増してクローゼットのドアを押し始めた。もしかしたら静かにしていれば気が付かなかったのかもしれない。


「ひ、開いちゃう。」


「無理。」


「いや!」


クローゼットのドアが破られそうだ。じわりじわりと押されてクローゼットのドアに隙間が空き始めた。


ギロリ


隙間からのぞくゾンビと目があってしまった。


「ヒッ」


恐怖にかられ私は後ずさりしてしまった。どうやら菜子様も驚いて後ろに下がってしまう。すると力が抜けてしまいクローゼットのドアがガバっと開いてしまった。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ」

「み、みんなにげてぇ」

「こないでぇぇぇぇぇ」

「やめてぇぇぇぇぇぇ」

「わああああああああ」

「たすけてぇぇぇぇぇ」


どっと押し寄せるゾンビが狭いクローゼットになだれ込んで来た瞬間だった。


ボッ

ボッ

ブワ

バッ


ゾンビが燃え尽きるように消滅した。一瞬でいなくなってしまったのだ。


「はあはあはあはあ。」

「来たんだ。遠藤さん…。」

「助かった。」

「遅いよ…。」


華江先生と愛奈さん、あずさ先生と私がつぶやく。


菜子様と吉永さんの二人は腰を抜かしたようで床に座り込んでいた。ただただ茫然とゾンビが消えた方向を見つめている。


「これは‥‥?」


吉永さんが言う。


「来たんです。彼が。」


私が答えた。


「来た?」


「はい、これが遠藤さんの力なんです。もしくはその遺伝子を持った子供が距離を縮めたんでしょう。」


「こんなことが…。」


吉永さんと菜子様はただただ呆然とするのだった。


「ここを出ましょう。」


華江先生が言う。


「はい。」


私と愛奈さんが菜子様の腕を引っ張って抱き上げた。


「す、すみません。」


菜子様が謝る。その理由がすぐにわかった。


ツンと鼻に突く臭いがした。


「大丈夫です。誰でもそうなります。」


私が慰める。どうやら菜子様は漏らしてしまったようだった。


「ここに男物のスーツがあるわ。」


奥を見ていたあずさ先生が言う。


「どうぞ中で着替えてください。」


そして私たちがクローゼットに菜子様を置いて出ようとする。


「いや!い、一緒に」


菜子様が言う。その気持ちがよくわかる、一人になるのが無性に怖くなるのだ。


「あ、それでは私が一緒にいます。」


吉永さんがクローゼットの中に入る。


その間に私達がドアの前にあるバリケードをどかしていた。


しばらくして菜子様と吉永さんがクローゼットから出てくると、だぼだぼの男物のシャツとスーツを着てベルトで縛った菜子様が出て来た。まるで子供が大人の衣装を着せられているようだった。足元もクルクルと上までまくり上げて履いている。


「ありがとうございます。おかげでスッキリとしました。」


「着て来た服はどうします?」


「捨てていきます。」


「わかりました。」


そして着替えた菜子様を連れてバリケードをどけたドアを通り、そのまま一階に向かって歩き出す。みな足取りは重く階段を降りるのもかなり億劫そうだった。


ようやく一階についた時、入り口から遠藤さんと栞さんが入ってくるのが見えて、全員が安堵のため息をつくのだった。

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